豊田章男社長の危機感は相当だ
 「トヨタは大丈夫というのが私にとって一番危険な言葉だ」。13日開催した株主総会で、トヨタ自動車豊田章男社長は改めて危機感をあらわにした。売上高は日本企業として初めて30兆円に到達し、グループ総販売台数は約1060万台(ダイハツ工業、日野自動車含む)を突破。盤石さが際立つ決算となったが慢心することはなく、豊田社長は先を見据える。

 業界の新潮流「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の中でも、特にトヨタが危機感を募らせるのが電動化だ。「トヨタに足りないのは電気自動車(EV)。電池も含め安く作れないといけない」と幹部は吐露する。最大市場中国では19年に新エネルギー車(NEV)の生産・販売を義務付ける「NEV規制」が始まった。ハイブリッド車(HV)で電動車市場を席巻したトヨタだが、HVはNEVの対象外。中国だけでなく各国の環境規制厳格化を背景に、トヨタはEVや燃料電池車(FCV)の拡大路線を鮮明にしている。

 「ある程度の競争はあるが、技術を共有して広げる方が大切ではないか」。7日、都内で開いたEV戦略説明会で寺師茂樹副社長はこう指摘した。EVビジネスを軌道に乗せるために、20年前半に10車種以上を投入する計画だが、EV普及を優先し積極的に外部連携を進める方針だ。「EVについては技術的に遅れてないが、すぐに売れる原価でできるかと言うとトヨタ1社では厳しい」(別の幹部)との認識だ。

 トヨタは提携先のスズキ、マツダ、SUBARU(スバル)も含めると年1500万台を優に超える巨大連合を形成している。豊田社長が掲げる「仲間づくり」でできた仲間と共にEVを普及する考えだ。スバルとはEV専用プラットフォーム(車台)を開発し、セダンやスポーツ多目的車(SUV)など複数に採用し、派生車種を開発しやすくする。スズキとはインド向けEVで協力。マツダとデンソーとはEVの基盤技術開発会社を設立し、スズキやスバルも合流した。

 1000万台を一里塚に規模を拡大してきたトヨタだが、1500万台超を見据えたCASE時代に対応するには「提携による単なる数合わせではいけない」(首脳)。地域や機能ごとに必要な分野で相互補完し、シナジーを最大化する―。トヨタは資本の強い結びつきを前提とした提携でなく、業務提携や少額出資という緩やかな連携で仲間づくりを進め新たな時代に臨んでいる。