会社員の人は住民税を給与から天引きして納めていると思います。いわゆる「特別徴収」ですが、サラリーマンが退職や転職したらどのように納税するのでしょうか?

住民税の納税は普通徴収、特別徴収の2パターン

会社を退職、転職する時に忘れてはいけないのが、住民税の扱い。というのも、住民税は前年の所得に対してかかる税金なので、退職して収入がなくても、転職して会社が変わってもどのような状況になっても支払い義務が生じるからです。退職後にどのように支払うことになるのかを確認しておきましょう。

住民税は、前年中(1月~12月)に一定の所得があった個人が、1月1日現在の住所地の市町村に納める税金です。この住民税の納税方法は、普通徴収と特別徴収の2パターンあります。

給与所得者は原則、特別徴収

普通徴収は、市町村から送付される住民税の納税通知書をもって、年4回にわけて納付します。

一方、特別徴収は会社員や公務員など多くの給与所得者の納税方法で、毎月給与から天引きされて、会社が納税する仕組みです。

この会社が給与天引きで納税してくれる特別徴収ですが、会社を退職、転職する場合はどうなるのでしょうか?

退職前に住民税の扱いを決める必要が

会社は従業員に代わって住民税を納める「特別徴収義務者」となっています。ですから、従業員が退職、転職などする時には、給与から住民税を納税することができなくなる旨を市町村に届けることになります。

この書類を「給与所得者異動届出書」といい、会社は退職日の翌月10日までに市町村に届けることになります。この届出書の内容によって、退職後の住民税の納税方法が決まります。

住民税は、前年の所得に対してかかります。その税額は市町村から5月までに会社に通知され、会社は6月から翌年5月までの給与から住民税を徴収し、市町村に納めます。

このサイクルで住民税が決まり徴収されるわけですが、退職時期によって退職後の住民税納税方法が変わります。

退職6月1日~12月31日:普通徴収、希望すれば一括徴収も

退職日が6月1日から12月31日の場合は、住民税の税額が決まり納めている最中。基本的には、退職後は普通徴収となります。自宅に納付書が送付され、納税することになります。ただ、普通徴収は6月、8月、10月、翌年1月の4回分割での納付になります。退職前は特別徴収として12回分割分の税額を、毎月の給与から天引きされ納付していました。退職後に4回分割の普通徴収となると、少し負担感は増してしまいます。

希望すれば、一括徴収を選択することもできます。一括徴収とは、退職前の会社で残りの住民税をすべて納付するということ。退職後、しばらく収入がない場合などはこの一括徴収で納めるほうが安心です。一括徴収を希望する場合は、退職前に会社に住民税の一括徴収を希望することを伝えておきましょう。

退職1月1日~4月30日:原則として一括徴収

退職日が1月1日から4月30日の場合は、支払うべき住民税の大半は納付済みです。この時期は、原則として退職前の会社で残りの住民税を一括納付することになります。ただし、残りの税額を超える給与又は退職手当などがない場合は、普通徴収(後日、納付書が郵送され納付)となります。

退職日5月1日~31日:通常通り納付

退職日が5月の場合は、住民税の納付は年度最後の5月納付のみ。5月分の給与、または退職金から5月分の住民税が徴収されます。

転職先と連携すれば、特別徴収継続も可能

退職前に転職先が決まっている場合は、給与から天引き徴収される特別徴収を継続することも可能です。引き続き、転職後の会社の給与から天引き徴収(特別徴収)で納付する形です。

ただ、この場合は転職前の会社と転職後の会社が連絡しあい、情報を共有した上で届けることが必要になります。一般的な転職では難しいかもしれません。

転職先で特別徴収に変更も可能

退職後にいったん普通徴収になり、市町村からの通知書から納付している場合、転職後の会社の給与からの天引き(特別徴収)に変更することも可能です。

市町村からの普通徴収納税通知書を転職後の会社に提出して、手続きをしてもらいましょう。

ただし、普通徴収は年4回の納付ですが、その納付期限を過ぎた期分を給与天引き(特別徴収)にすることはできませんのでご注意を。また、転職前の会社が異動届出書を提出していない場合も特別徴収に変更することができません。転職前の会社に手続きをお願いしましょう。

住民税は前年の所得に対して課税され、納付方法も複数あります。退職、転職のタイミングで納付方法も様々なパターンがあります。住民税の納付で慌てないためにも、事前にどのように納付するかを確認しておくと安心です。
(文:福一 由紀(マネーガイド))