「仕事での『飲み会』や『接待』って好きですか?」

そう聞かれて「大好き!」と答えられる人はそんなにいないのではないでしょうか。

飲まされる、毎回同じ話題、気を遣う…そんなイメージがまとわりつく社内の飲み会のみならず、さらに職種によっては「会食」「接待」なんていうレベルの高いイベントも発生します。

ビジネスパーソンとしてどう対処するべきか?と思いながらふとTwitterを見れば、「飲み会」や「会食」が得意そうな大先輩がいるではありませんか。


【田端信太郎(たばた・しんたろう)】株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室長。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン『R25』を立ち上げ、創刊後は広告営業の責任者を務める。その後ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN JAPANを経て、2018年3月から現職
今日は、広告業界やIT業界などさまざまな分野を経験してきた田端信太郎さんに、「ビジネスシーンで発生する飲み会」についての極意をうかがいます。

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉

受け継いでいる「堀江イズム」。女性のいる店にいったときは…

天野:
なんだかんだ言って、仕事に「飲み」って付き物じゃないですか。

たとえば田端さんが「接待」とかで大事にしてることがあれば教えてほしいんですが…
田端さん:
いろいろとマイルールみたいなのはあるけど…

当たり前のようで当たり前じゃなさそうなのが、いわゆる「女性のいる店」に行ったときの領収書は経費で落とさないほうがいいってことですね。

いきなりそこっすか?
天野:
それは…どういう理由が?
田端さん:
経理の人、意外と店の名前でググったりしてるのよ(笑)。正しく仕事をしてると思うけど。

そういうところから、「○○さんはこんな人だ」「信頼に足る人間なのか?」って空気感が醸成されちゃうことがあるから気にしたほうがいい。

俺1回、経理の女性に「田端さんはそういう領収書切らないですね」って言われたことあるもん。


天野:
田端さんは昔からそうしてたんですか?
田端さん:
いや…これは完全に堀江(貴文)さんから受け継いでる「堀江イズム」なの。
天野:
え、ホリエモンが関係してるんですか。
田端さん:
ライブドアに入ってビックリしたんだけど、堀江さんって接待交際費を1円も認めない主義なんだよ。

キャバクラ代なんてとんでもない(笑)
天野:
そうなんですか!? 1円も? めっちゃ高い店で会食してる印象ですけど…
田端さん:
飲食してコミュニケーション取ること自体は否定してないと思うよ。ただ、「会社のお金なんで!」みたいなリスクゼロのサラリーマン根性を嫌うんだよね。

「それで本当に売上が上がるなら、あとで給料上げるから、まずはリスク取って自分の金で接待しろよ」っていうタイプ。
天野:
自分の金で接待…!
田端さん:
広告営業なんて、“飲み代に一晩で何十万円使った”なんてしばしばある話だと思うけど、「それで売上上がらなかったら誰の責任になるの?」って。

責任の所在を明確にしないフリーライダーを軽蔑してるんですよ。


田端さん:
昔ライブドアで、備品注文する「アスクル」で、カップラーメン頼んで家に持って帰ったヤツがいたんだって。

それ見て堀江さんが「なんだよこれ!!」って激怒してさ。それ以降、アスクルも1円単位で全部「社長決裁」になった(笑)。
天野:
細かい! イメージと真逆すぎる…
田端さん:
でも俺は「ああ、その通りだな」って納得したんだよ。本当に仕事を自分ごととしてとらえているビジネスパーソンは、「会社の金で飲み食いしよう」って発想に至らないと思うんだよね。

それ以前の会社でやってた接待では、こちらが出す接待交際費でクライアントが高い酒飲みまくってて。そのあと発注をもらっても、内心「あんた、プロとしてどうなんだよ?」って思うこともあったから(笑)。

撮影で「グラドルの○○呼べ」とか(笑)。いや、それで発注もらえるならやりますけどさあ…って思いつつだんだん飽き飽きしてたから、そういう「堀江イズム」に共感できたんだと思う。

以前の激しい接待の話も気になりますが…どうせ書けないからいったん置いておこう

「接待会食」のときは、どういう店に行くのが正解なの?

田端さん:
一方で、今でも「会食」ってすごく大事だなと思ってて

企業同士で揉めごとが起きたときに、幹部同士が以前に会食したことあるって、すごいセーフティネットになるし…。おいしいご飯を食べたときのことは刺激的で記憶に残りやすいと言われてるから、営業としてはとても武器になる。
天野:
しょうもない質問なんですが、接待のとき行くべきお店があったら教えてほしいです!
田端さん:
うーん…たとえば、外資系の企業のおエライさんが来日するとなって、どんなお店に連れていこうかって考えるじゃん。

そのときに「フランス人だから、高級ホテルの3つ星フレンチ」なんて考えじゃダメだよね。
天野:
…それは何がダメなんでしょうか?
田端さん:
考え抜かれてない、安易な正解だから。相手の記憶に残らないんです。

デートで言うなら、『東カレ』に載ってるような店に安易に飛びつくなってことなんだよね。

「いや、東カレ面白いんだけどさ!」
田端さん:
港区女子を口説くのに「このお店、今月号の『東カレ』に載ってたから行こうよ」って連れていくの、どう思う?
天野:
それは…ダサい感じがしますね
田端さん:
でしょ? 用意された「正解」に飛びつくのがおもてなしの心だとは、俺は思わない。
天野:
でも反論させていただくと、紹介されてるイイ感じのお店を選ぶのって、「失敗がない」と思うからじゃないですか? 失敗しないような店選びをするより、賭けに出たほうがいいんですか?
田端さん:
だって、港区女子…は置いといて、企業のある程度以上の地位の人たちって、毎日接待されまくってるんだよ?

“失敗しないだろう”で選ばれた「無難な正解」が記憶に残るかね?
天野:
なるほど…

じゃあ、接待に慣れてるような人を連れていくには、どんなお店が正解なん…
田端さん:
(完全に食い気味で)いやだからさあ、絶対に安心できる「正解の店」があると思ってる時点で『東カレ』の発想なんだって!

※東京カレンダー編集部の皆様、本当に申し訳ございません…いつも楽しく拝読しています…
田端さん:
「相手が普段どういう生活してるか」のイマジネーションから出発するんだよ。自分が海外に行ったとき、安直な日本食レストラン連れて行かれたらイヤでしょ?

普段3つ星レストランにばっかり連れて行かれてる人なら、いきなり「ガード下で煙がモクモクだけどおいしい焼鳥屋」に行ったほうが、よっぽど記憶に残る可能性がある。

正解なんてないなかで、「店選びにどれだけ意味を込められるか」の勝負なんだよ。
天野:
正解はなく、相手次第で決まると…
田端さん:
俺だって接待会食の前には、お連れする相手の情報をリサーチしますよ。

役職と年代、職種…などをリサーチして、イマジネーションを働かせる。Twitterアカウントだって見る。嗜好や、普段行ってるエリアがわかるでしょ。
天野:
田端さんもそこまでするんですか!
田端さん:
そう。記憶に残るって接待では一番大事だからね。

そして、「どれだけ意味を込められるか」は、単純に接待の域を超えて、仕事の本質に近いところがあると思う。
天野:
え…?


社内の飲み会が「仕事の本質」ってどういうこと?

田端さん:
これは社内の飲み会でも同じだよ。

社内だろうが社外だろうが、ルーチンワークで飲み会やっててもムダ。

これは全国のサラリーマンがうなずきまくる名言きた
田端さん:
そこらへんのどうでもいいチェーンの居酒屋で、“道路工事の予算消化”みたいに飲んでもしょうがないじゃん。それじゃあ上司も部下も来たくないでしょ。

1回1回の飲み会に、どれぐらい意味を込められるか?が大事なんだよ。
天野:
ぶっちゃけほとんどの会社が、「親睦」みたいな名目でマンネリ飲み会を続けていると思うんですが…

どうやって「意味を込める」なんてできるんですか?
田端さん:
それをやるのが「幹事」の仕事なのよ!

俺、リクルートに行って最初に飲み会の幹事やらされたの。そのとき、Hさんっていう重鎮社員に、ものすごいマジメな顔で「飲み会の幹事ってのは、一番仕事ができるヤツがやる仕事なんだ」って言われたのね。

そのときは意味がわからなかったけど、今オッサンになって、「本当にそうだな! 含蓄のあることを教えてくれたなあ!」と強く思うのよ。
天野:
一番できる男が! そんなイメージはまったくないですが…
田端さん:
飲み会の幹事っていうのは「100点満点の正解がない、“マネジメントそのもの”」なの。あらゆる仕事のなかで一番難しい仕事のひとつだと思うよ。

飲み会に参加した全員が100点満点で完璧に満足するというのは、おそらくありえない。もしそう思ったら、幹事がおめでたくて傲慢なだけ。
天野:
マネジメントそのものというのは?
田端さん:
以前、「いいマネージャーはDJに似てる」って話したじゃん。ネチネチとマイクロマネジメントで指導するんじゃなく、組織にいい空気をつくって、メンバーが勝手に動きだすように仕向けるのが最高のリーダー

社内の飲み会って、本当はそのためにあるんですよ。


田端さん:
だから、本当に優秀なマネージャーの仕事は「飲み会の幹事」だけになるんですよ。目標達成イベントや歓迎会とか。

現場のメンバーたちが自走してて、自分は昼から「次の飲み会の店どこにしよっかな~?」ってイケてる店のことをのんびり考えてる状態が、理想のマネージャーや役員だね。

メンバーのコンディションや普段の生活にイマジネーションを働かせて、「毎回の飲み会に意味とメッセージを込める」わけ。
天野:
なるほど…
田端さん:
「一番できるヤツの仕事」っていう意味がわかるよね。そこにいる人たちの、心のツボを押せるのか?ってことだから。入社したばかりの新人だろうが、それがうまくできるヤツは、抜擢人事の対象になりますよ

「やらされ仕事」だと思って、出欠とって適当に店とっときゃいいんでしょ?って思ってるヤツは、俺に言わせれば分かってない!(笑)

高偏差値の大学を出た秀才がハマりがちな落とし穴!
天野:
うわ~…そろそろ新入社員が飲み会の幹事を任せられることもある時期ですけど、これ知ってたほうがいいですね…
田端さん:
そう。仕事のコツは「これなんのためにするんだ?」と本質に立ち返ること

「そもそも、なんのために宴会するんだろう?」って考えたら、そんなに浅い話じゃないって気付くはずなんだよ。

新入社員の皆さん、まだ間に合います

連日飲み会で交遊しつつ、朝から仕事でパフォーマンスを出す方法とは…?

天野:
ちなみに田端さん、Twitter見てると毎晩のようにいろんな方と飲んでるなと思うんですが、なのにいつもエネルギッシュに活動されてるじゃないですか。二日酔いにならずバリバリ活躍する方法があれば知りたいんですが…
田端さん:
それはありません(笑)

え~
田端さん:
酒に飲まれず仕事のパフォーマンスを出す方法があるとするなら、まあ、1次会で帰ることかな(笑)

俺、だいたい23時ぐらいには帰るんだよね。酒まわるのが早いのか疲れてるのか、会食の途中でよく寝ちゃうし(笑)。
天野:
早く帰ることを自分のなかでルール化してるんですか?
田端さん:
うん、2軒目に行くことってまずないね。
天野:
そうなんですね…夜もハデに交遊しながら、仕事でも成果を出す人っているじゃないですか。

箕輪厚介さん(幻冬舎の売れっ子編集者)とかも、いつもめちゃくちゃハイボール飲んでるイメージなのに早朝から仕事してるらしくて、なんでそんなにエネルギッシュなんだろうと思ってました。
田端さん:
そこにあんまり憧れなくていいと思うんだよね。帰って寝たほうがいいよ

業界によっては、深夜まで飲み会やってほとんど寝ないで働いてるって人もいるけど、10年、20年やってると寿命に関わってくる。

大きな声で言うことじゃないけど、広告代理店の人って平均寿命が短いっていうじゃん。
天野:
そっか…。よく寝て仕事します。
田端さん:
だいたい2軒目行ったって、みんな話した内容覚えてないでしょ(笑)。

本質に立ち返って意味を考える。そうしたら飲み会をどうハックすべきか、おのずとわかってくるはずです。以上!


最近では「意味ない」ものの代名詞のように語られることもある「飲み会」。

それを全否定するわけではなく、あくまでリアルなビジネスの場を想定して「本質に立ち返ってうまく利用すべき」と語る田端さんは、マジでさすがだなとうならされました。

飲み会の幹事は、一番仕事ができるヤツがやる仕事…。

明日から、全国の職場で、幹事に立候補する若者が続出する光景が目に浮かぶようです。

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=中山駿(@shunnakayama_)〉

公式SNSで最新記事やあしたの予告をチェックしよう!

新R25は公式SNSを積極運用中。ツイッターでは最新記事の情報、インスタでは「#あしたの予告」を更新しています。

読者の皆さまはぜひフォローをお願いします!
新R25編集部(@shin_R25)さん | Twitter
https://twitter.com/shin_r25
新R25編集部 #明日の予告 (@r25_official) • Instagram photos and video
https://www.instagram.com/r25_official/