公立教師は、「教職公務員」として退職金が都道府県や市区町村から支給されます。教職公務員退職者への、退職金平均支給額と、都道府県別、都市別などに退職金支給額トップ10をご紹介します。

公立学校の先生たちがもらう退職金相場をチェック!

幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、各種学校、スタートしたばかりの義務教育学校など公立の学校は全国に約3万9000校あります。そんな公立学校の教師の平均的な退職金額を、都道府県、政令指定都市、市区町村ごとに調べました。

小学校・中学校の9割超が公立

日本には国立・公立・私立の幼稚園、幼保連携型認定こども園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校、各種学校が約5万5700校あります(短期大学、大学、高等専門学校は除外)。内訳は、国立265校、公立3万8346校、私立1万7043校です。

公立は小学校、中学校、高等学校、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校に多く、小学校の99%、中学校の92%、高等学校の73%、義務教育学校の100%、中等教育学校の66%、特別支援学校の99%を占めています。

▼学校種別の国立・公立・私立の数●幼稚園……1万474園(国立49園、公立3737園、私立6688園)
●幼保連携型認定こども園……4521園(公立650園、私立3871園)
●小学校……1万9892校(国立70校、公立1万9591校、私立231校)
●中学校……1万270校(国立71校、公立9421校、私立778校)
●義務教育学校……82校(国立2校、公立80校)
●高等学校(全日制/定時制)……4897校( 国立15校、公立3559校、私立1323校)
●中等教育学校……53校(国立4校、公立31校、私立18校)
●特別支援学校……1141校(国立45校、公立1082校、私立14校)
●専修学校……3160校(国立9校、公立189校、私立2962校)
●各種学校……1164校 (国立0校、公立6校、私立1158校)

*上記以外に高等学校(通信制)252校(独立校110校(うち公立7校)、併置校142校(うち公立71校))ある。

義務教育学校は「小学校と中学校の9年間の義務教育を一貫して行う学校」で平成28年度に新設されました。千葉県や神奈川県、岐阜県、広島県、鹿児島県など全国に設置されています。

中等教育学校は「中高一貫教育の課程で、前期中等教育(中学校などにおける教育)と後期中等教育(高等学校などにおける教育)を一貫して施すシステムをとる学校」(文部科学省)で、例えばお茶の水女子大学附属中学校、筑波大学附属中学校などがあります。

特別支援学校は「視覚・聴覚・知的障害者や肢体不自由者、虚弱者(身体虚弱者を含む)が通う学校」(文部科学省)です。

専修学校は、各種学校のうち一定の規模、水準を有し、組織的な教育を行う学校で、「「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」ことを目的とし、実践的な職業教育、専門的な技術教育を行う教育機関」(文部科学省)です。看護専門学校や農業大学校、商科専門学校他が該当します。

各種学校は「和洋裁、簿記、珠算、自動車整備、調理・栄養、看護師、保健婦、理容、美容、タイプ、英会話、工業などをはじめとする各種の教育施設」(文部科学省)です。

※以上、データは文部科学省「平成30年度学校基本調査(確定値)――結果の概要」(文部科学省平成30年12月25日公表)より

中学校・高校の教師で定年退職するのは6割弱

平成29年4月1日~平成30年3月31日の教育職に就いている地方公務員の離職者数は4万3036人。定年退職は2万7412(63.7%)、早期退職募集制度による退職1743人(4.1%)、勧奨退職は3802人(8.8%)、普通退職(自己都合や諭旨免職による退職など)が9490人(22.1%)です。

公立教師の60歳定年退職金は平均いくら?

国立の教員は国家公務員、公立は地方公務員、私立は民間人です。国立の教員の退職金は国から、公立の教員は都道府県や市区町村から、私立の教員は勤務先の学校から支給されます。

では、圧倒的に学校数の多い公立の教師(教育公務員)の退職金平均支給額を、平成30年の「給与・定員等の調査結果等」(総務省)を基にご紹介します。

都道府県:60歳定年退職者への退職金支給額トップ10

1位:兵庫県……2376.8万円
2位:岡山県……2373.7万円
3位:福島県……2367.2万円
4位:山形県……2365.0万円
5位:鹿児島県……2363.0万円
6位:香川県……2345.0万円
7位:岩手県……2322.4万円
8位:佐賀県……2321.2万円
9位:北海道、長野県……2317.2万円

47都道府県の教育公務員退職者への平均支給額は約1109万円、60歳定年退職者は約2235万円です。60歳定年退職者への平均支給額トップは兵庫県の約2377万円で、最下位との差は約2146万円です。また、支給額が平均より多いのは43都道府県です。

最下位の三重県の定年退職者への支給額は230万円。トップは2376.8万円です。支給額の差が大きすぎるので、三重県を除く46都道府県で再計算しました。結果は下記の通りです。

・教育公務員退職者への平均支給額……1129万円
・60歳定年退職者への平均支給額……2279万円
・1位兵庫県と46番目との差は約276万円
・平均支給額が平均より多いのは21都道府県

政令指定都市:60歳定年退職者の退職金支給額トップ10

1位:相模原市……2428万円
2位:名古屋市……2410万円 
3位:神戸市……2400万円
4位:岡山市……2373万円
5位:静岡市……2358万円
6位:千葉市……2353万円
7位:京都市……2350万円
8位:浜松市……2348万円
9位:堺市……2343万円
10位:北九州市……2336万円

政令指定都市の教育公務員退職者への平均支給額は約1629万円です。60歳定年退職者は約2319万円で、最高額と最低額の差は約252万円、平均支給額より多く支給しているのは10団体です。また、都道府県の平均支給額約2279万円(三重県を除く平均額)より低いのは5団体です。

市区町村:60歳定年退職者への平均支給額トップ10

1位:大阪府吹田市……2484.9万円
2位:兵庫県西宮市……2443.9万円
3位:東京都新宿区……2426.7万円
4位:兵庫県尼崎市……2411.6万円
5位:兵庫県明石市……2370.7万円
6位:神奈川県横須賀市……2367.8万円
7位:和歌山県和歌山市……2364.0万円
8位:大分県大分市……2363.3万円
9位:岐阜県大垣市……2356.9万円
10位:千葉県市川市……2331.9万円

市区町村1722団体のうち、教育公務員の60歳定年退職者の退職金平均支給額のデータがあるのはわずか38団体です。そのデータによると、60歳定年退職者は約2180万円で、61%にあたる23団体が平均額より多く支給しています。退職金の最高額と最低額の差は約929万円です。因みに全職種の60歳定年退職者の平均支給額は約2083万円。教育公務員は100万円程度多く支給されています。

公立教師の定年退職金は平均約2300万円。中小企業の2倍 

民間企業の退職金平均給付額はどのくらいなのでしょうか。「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」(厚生労働省)によると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者の退職金は約1788万円、高校卒は約1396万円です。一方、給与所得者の70%を占める中小企業従業員の定年退職金は、大学卒が約1203万円、高校卒は1127万円です(「平成30年 中小企業の賃金・退職金事情」東京都)。

公立教師の60歳定年退職者の平均支給額は、多い順に「政令指定都市>都道府県>市区町村」で、平均は約2300万円です。これは、民間企業の大学卒定年退職者の退職金より510万円程度高く、中小企業の定年退職金のほぼ2倍の金額にあたります。
(文:大沼 恵美子(マネーガイド))