国民年金の保険料について、支払いを免除してもらう「保険料免除」と、納付を猶予してもらう「納付猶予」という2つの制度があります。「免除」と「猶予」って何がどう違うのでしょうか

保険料を払えない場合の対応は、まず免除申請を!

公的年金の保険料を納付しているのは、国民年金の第1号被保険者と厚生年金や共済年金の加入者となります。このうち厚生年金や共済年金については給料からの天引きというシステムをとっていて、純粋に保険料を払い込むのは国民年金の第1号被保険者だけとなります。

保険料を払い込む義務のある国民年金の第1号被保険者に対して、収入が少ない等払い込めないことについてちゃんとした理由がある場合は、保険料を「免除」してもらうことが可能となります。

免除は滞納(未納)とは違う取り扱いになりますので、年金を受け取る要件を見る場合、10年の資格期間にも入りますし、その期間について一定の年金額が受け取れることになります。

ですから、保険料を払えない場合、とりあえず「免除申請」をする必要があります。但し、免除申請をしても全て認められるわけではありません。

免除の要件は本人ではなく「家族」の所得で審査される

免除が認められるには、要件を満たす必要があります。最もメジャーなのが「所得が少ないこと」というものです。

所得の基準の目安は、以下で計算した金額の範囲内であることです。

 ■全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

■4分の3免除
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

■半額免除
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

■4分の1免除
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

実際に計算をしてみましょう。例えば、妻と子供2人の計3人を扶養している夫の基準は、扶養親族の数3+1=4×35万+22万=162万

この金額は、収入ではなく所得ということに注意が必要です。この金額を見て、「自分も対象になりそう!」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、この所得の基準とは、本人の所得は当然のこととして、世帯主や配偶者の所得も審査の対象となります。仮に本人の所得が基準以下であっても、世帯主や配偶者が基準を超えている場合は免除の対象とはなりません。

ですから、例えば両親と同居している本人が仮に無職で所得が全くなくても、その両親に基準を超える所得があるなら他の免除要件に該当しない限り、免除の対象とならないということになります。子どもの保険料も払え!といわれる親御さんも大変ですね。

こういった問題を想定してか、国は免除制度とは別の「納付猶予制度」を設けています。

納付猶予制度とは?

納付猶予制度には2つの種類があります。

・学生の方対象の「保険料の納付特例制度」
・20歳から50歳未満の方の「保険料納付猶予制度」

この2つの制度は名前こそ違いがあるものの、どちらも「納付猶予制度」です。そもそも免除と猶予にはどんな違いがあるのでしょうか?

納付猶予とはあくまで納付を猶予してもらっているだけなので、実際その期間について保険料を後で払い込まないと年金額には反映されません。それが、「免除」との一番大きな違いといえるでしょう。

「それじゃあ、滞納でも一緒じゃない?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。それは大きな間違いです。納付猶予された期間について、仮に保険料を払い込まなくても受給資格期間(現在原則10年)には含まれますし、納付猶予期間に死亡、障害の状態となった場合、保険料免除期間と同じ取り扱いとなり、滞納(未納)期間よりも有利な取り扱いとなります。

学生の納付猶予制度は是非活用を!

免除と納付特例、納付猶予制度の要件の違いについて表にまとめてみました。


同じ納付猶予でも、学生の納付特例制度の方が要件が緩やかであることがわかると思います。学生本人の所得が156万円という基準については、大多数の学生が該当するのではないかと思います。

面倒くさがらず、しっかり申請するのが、本人、いや子を思う親の責務だと言えるかも知れませんね。
(文:和田 雅彦(マネーガイド))