私は数多くの夫婦関係を見てきましたが、精神的に自立できていない自己肯定感の低い男女が結ばれると、貧困家庭になりやすいということがわかってきました

「自分にはムリ」「しょうがない」という発想が貧困を呼ぶ

私は数多くの夫婦関係を見てきましたが、精神的に自立できていない自己肯定感の低い男女が結ばれると、貧困家庭になりやすいということがわかってきました。自己肯定感が低いゆえに双方が相手に寄りかかり、その状況を変えようというインセンティブが働かない。

「自分にはムリ」という発想は「あなたにはムリ」という発想を生み、「しょうがない」という諦めにつながります。ゆえに自分の殻を破れず、こじんまりとした人生になってしまいやすいのです。これは良い悪いということではなく、本人たちが幸せならばそれでOKですが、貧困家庭の多くは、この共依存関係から抜け出せなくなっている状況を疑ったほうがよいかもしれません。

特に自己肯定感の低い男性に多いのは、説教・命令・オラオラ系のモラハラタイプによく見られます。彼らは自分に自信がないにもかかわらずプライドだけは高いため、自分より弱い存在を従えることで自己有能感を得ようとするからです。優秀な人の中にいると相対的に自分は落ちこぼれとなって自信を失いがちですが、自分よりダメな集団の中にいれば、相対的に自分は優秀となります。いわゆる対比効果による自信です。

自己肯定感の低いモラハラ男の心理状態とは

だから、自分より弱い人を従え支配すれば、自分は強い存在だ、価値のある人間だという自信を持てるわけです。逆にこういう人は、自己肯定感が高く自立した女性には近づかないし、そもそも近づけません。彼らは凛とした女性を目の前にしたとき、自分ではこの人を支配できないと本能的に悟り、及び腰になるからです。

自分よりも自立した相手と一緒にいると、自分がひどくちっぽけで無能な存在に思え、そう感じる恐怖感が、避けるという行動につながります。一方で、自立できていない自己肯定感の低い女性を目の前にすると、俄然自信が出てきて猛アプローチをかけます。

そして女性側も、自己肯定感の低い人に限って、こういうモラハラ男性を頼もしく感じます。彼女たちは、自分が必要とされている、自分に存在価値があると確認できるという心理的満足感が欲しくて、相手が虚勢を張っていることを見抜けません。こうして、いつも同じような男性が近寄ってきて、いつも同じような男性を好きになり苦労させられるわけですが、実は相性が良かったりします。だから共依存に陥りやすいのです。

こういう負のスパイラルから抜け出すには、自分がなぜそういう異性を求めるのか、あるいはなぜそういう異性からアプローチされるのか、自分自身の中にある原因を掘り下げて分析することです。原因がわかれば対策が打てるからです。

そして、今まで付き合った人の人格パターンと行動パターンを整理しておく。さらに、相手の優しさや強引さに舞い上がってしまうのではなく、「この人はいったいどういう人物なのか」と相手の観察を怠らないことです。

もしすでに結婚しているカップルであれば、「自分は相手に依存していないか」を振り返ってみることです。相手に期待すればするほど、自分で考え、自分で何とかしようという創意工夫から遠ざかってしまうからです。

「自分が家族を支えるんだ」という自己責任意識が強くなれば、仕事・家事・育児・生活設計など全方位にアンテナが立ち、家族をバージョンアップさせる方法を考えます。そうやって共依存の関係から抜け出し、新しいステージに進むことができます。ただし、相手が自分と同じように成長し、同じ精神ステージに上がってこれない場合、これはこれで別の問題にぶつかりやすいわけですが。

子どもが貧困に陥るひとつの原因は

また、子どもの貧困を招きやすいのも共依存の親子です。いわゆる「引きこもり」や「ニート」も、親子ともに諦めと心地よさが同居しているために起こります。親は子を叩き出すほどの勇気はなく、子も働かなくてもなんとかなる状況ゆえに、「仕事をして稼がなければならない」という動機が生まれにくい。

すると、ぬるま湯のままずるずると年月を重ね、気が付いたら年齢の割にはスキルも経験も低く、まともな就職口もないということになりかねません。これを避ける方法のひとつには、親が勇気を持って家から放り出すことです。
(文:午堂 登紀雄(マネーガイド))