貯金3000万円ありますが、夫が50歳で会社を辞めました
夫の退職で家計は大幅赤字。教育費や老後資金が心配です
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、夫の退職で今後のマネープランが揺らいでしまった50歳の奥様。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。▼相談者りょうたこさん(仮名)
女性/専業主婦/50歳
近畿地方/持ち家戸建て
▼家族構成夫(51歳/臨時職員)子ども3人(次男17歳・公立高校2年、長女15歳・公立中学3年)※長男は独立
▼相談内容夫が勤務していた会社を辞めてしまいました。定年までの今後10年で子どもを進学させ、老後の貯金をするつもりでしたが、この先やっていけるでしょうか? 私は現在資格取得の勉強中ですし、フルタイムの仕事は体力的に自信がありません。また、長女は障害があり、自立は難しいと思います。長男は自立していますが、中卒で非正規雇用のため将来が心配です。次男は再来年進学のため家を離れ、大学院まで学費がかかる予定です。
▼家計収支データ
▼家計収支データ補足(1)夫の退職理由と現在の仕事について
相談者コメント「以前の職場は忙しく、きつい勤務だったと思います。私には〈今の仕事が合わない、ミスが続いて気が滅入る〉と言っていました。幸い、本人が希望していた職場での臨時職員の仕事に就くことができました。収入の少なさや生活の不自由さは(小遣いを減らされたり、外食をしなくなったり)思った以上だったようですが、人様のお役に立っているという実感を持てているようです。
今後、正職員になれるかどうかはわかりません。収入については、2人で15万円ずつ稼げば十分と思っているようです。〈70歳まで働くから〉と本人は言っています。娘が20歳になれば障害者年金が月8万円程度入ってきますが、それもあてにしているようです」
(2)妻の仕事と目指す資格について
来月からパート再開の予定。月5~6万円の見込み。目指している資格は社会福祉士。資格取得後は難関だが、合格できればそれを活かしての就職を希望。正社員を目指す(給与で16万~18万円)か、娘の世話をしながらパート的に働くかは、今後の様子を見てから。
(3)保険料の内訳(年払いのものは保険料を月割りで表示)
・夫/共済(病気死亡時800万円、入院9000、65歳まで同条件で継続可)=保険料4000円(※年払い)
・夫/共済(死亡1000万円、満期金200万円、今年4月保険期間終了)=保険料1万9600円
・妻/終身保険(主契約部分60歳払込終了、死亡2000万円、入院5000円、死亡保障を10年確定の個人年金タイプに移行可)=保険料1万4814円(※年払い)
・長男/共済(病気死亡400万円、入院4500円)=保険料2000円(※年払い)
・次男、長女/共済(入院5000円、保護者死亡50~350万円)=保険料1000円×2人分(※年払い)
・長女/学資保険(満期金500万円)=保険料2万3038円(※年払い)
※保険会社に一時払い終身保険を勧められている。
(4)持ち家について
貸しているマンションは、3000万円で購入。自己資金は500万円、残り2500万円は、相続時清算課税制度を利用して、相談者の父親を資金を贈与。場合によっては、相談者の弟2人に実際の相続際、差額分を支払うかどうかは不明。住まいとしている一戸建ては、相談者の義母名義の土地に建てた家で、ローンは相談者夫婦で完済済み。義母はその土地は相談者夫婦に相続すると言っているが、夫に姉と妹がいるので相続時は不明。土地の評価額は350万円ほど。
(5)次男の進路について
首都圏の国立大理系を希望。給付型の奨学金が利用できれば、ありがたいと思っている。仕送りも今の状態では難しく、夫はいざとなれば長女のために準備した学資保険を次男のために使ったらと言うが、妻は賛成しかねている。
(6)長女の進路について
なるべく親子一緒に暮らし、施設などに通わせながら、親が高齢になってきたら施設に入れることを考えている。手先は器用なので、何かちょっとした仕事ができればと願っている。
(7)公的年金の支給額
夫/年間214万8500円、妻/年間74万4761円
▼FP深野康彦からの3つのアドバイスアドバイス1 生活費のサイズダウンに取り組む
アドバイス2 「長女のため」の資金は長女のために
アドバイス3 夫婦揃って継続的な収入の確保がポイント
アドバイス1 生活費のサイズダウンに取り組む
ご主人の退職理由を拝見すると、精神的にかなりきびしかったことが伺えます。想定外の退職だったでしょうが、結果的には良かったと思うべきなのだと思います。さて、現在の家計収支ですが、単純に約20万円の赤字。支払っている保険料には貯蓄性のある保険が含まれていますが、それを差し引いても毎月17万円の赤字家計ということになります。家計そのものが、まだご主人が退職する以前の状態であることがその要因です。長女の方の児童手当が「5000円支給」ということは、所得制限の特例給付だったと思われます。それだけ、以前の給与所得は高かったわけですから、そのときの生活水準であれば、当然赤字家計になります。
3カ月後には、失業手当の4万円がカットされて、さらに収入が下がりますが、住民税と社会保険料は来年以降、現在の給与水準で算出された額になりますので、その負担は大きく軽減されます。教育費も大学進学は学資保険等からの捻出となりますので、数年で毎月の捻出については減っていきます。それでも今後を考えれば、やはり生活費をサイズダウンしていく必要があるでしょう。
具体的には保険が有効です。奥様の終身保険は、退職以前の家計なら何ら問題はありませんが、現状では必要性は低いと言わざるを得ません。払済保険にされて、医療保障が心配なら共済や単体の医療保険で新たに確保してください。また額は小さいですが、長男、次男名義の共済も不要と考えます。今年満期を迎えるご主人の共済がありますので、それも加えれば、合計で2万円は保険料コストを下げることができます。
また、保険会社から「一時払い終身保険」を勧められているとのことですが、断わるべきです。キャッシュフローが大きく変わり、生活コストの切り詰めが不可欠な今の家計において、多少増えるとしても10年先、20年先にしか使えない資金を保険に充てることは無謀だからです。
あとは、細部の見直しです。世帯収入が高いときは支出もさほど細かく見なくても、十分家計は回ったはず。ですが、今後は雑費や通信費など、無駄がないか、工夫すればもっと下げられないだろうか、といったことを意識していくべきでしょう。
アドバイス2 「長女のため」の資金は長女のために
教育費については、次男の方の場合、志望どおり国公立理系に進学できれば、大学にかかる費用は4年間で300万円、大学院は2年間で100万~130万円程度ですから、用意されている学資保険の満期金で十分足ります。私立理系に進んだ場合、大学費用は540万円、大学院では150万円近くになる場合もあります。結果、学資保険では200万円近く不足することになります。一方、仕送り費用は平均して月額7万円。生活費を全額負担するには10万~11万円は必要というデータ(※)があります。アルバイトだけではなかなかカバーできる金額ではありませんので、いずれにせよ、学費とは別に一定の仕送りが必要となると言えます。
ただし、これら不足分を奨学金で補うことは、慎重に検討を重ねてください。給付型であればいいですが、返済を必要とする一般的な奨学金であれば、社会に出る前から、お子さんは数百万円の負債を背負うことになるのです。
次男の方の教育費の不足分を預貯金でカバーするとすればどうでしょう。国公立で大学院まで進学した場合、仕送りを平均額とすれば、必要となる教育費は学資保険を差し引くと、不足額は400万円程度。結果、貯蓄は2200万円に目減りします。そのうち、年金信託1500万円は老後資金ですから、今後10~15年で手をつけられる(生活費の補てん、不測の支出)のは700万円となります。
つまり、これをあまり減らさず、老後まで維持できれば、仕送り費用も含めた教育資金も用意できると考えていいと思います。ただし、私立進学となった場合、仕送り費用は多少下げざるを得ないかもしれません。
また、資金捻出として、長女の方の学資保険を利用することは賛成しかねます。結局は、コストの先送りに過ぎません。逆に言えば、これを確保することで、娘さんにかかる教育資金や障害を支える資金を慌てて準備する、といった事態を避けることができます。
さらに言えば、相談文にあります「娘の障害者年金(月額8万円)をあてにしている」ということも、できれば避けたい。娘さんの生活費に使用するのであればいいですが、自分たちの生活費にも組み込んでしまうと、ときにそれを「家計の余裕」と感じてしまい、生活コストが自然と高くなる恐れがあります。そこは意識して区別してください。
アドバイス3 夫婦揃って継続的な収入の確保がポイント
老後資金については、65歳からの公的年金が夫婦で年間290万円、月割りにして約24万円です。仮に、生活費が夫婦で月30万円とすれば6万円、年間で72万円の不足となります。90歳までの25年間で1800万円。先の年金信託と保険の満期金で計1700万円、それに貯蓄がある程度残っていれば、計算上は足りなることにはなりますが、それだけでは心許ないことも事実です。そこでポイントとなるのが、今後の収入です。ご主人に昇給がなく、現状のままであっても、70歳までそれが継続されれば、大きな老後資金の原資となります。加えて、奥様がパートで5万~7万円の収入を得る予定とのことですが、資格取得後、15万円程度の収入をやはり70歳くらいまで得られると、65~70歳では公的年金とのダブルの収入になりますので、かなりまとまった額の貯蓄(500万~1000万円)が可能となります。
したがって、公的年金支給まで大きく貯蓄を減らさないために、今から家計支出を見直し、同時に継続的な収入の確保していくことが不可欠となります。体力維持も重要になってきますので、ぜひ健康管理に気を付けてください。
(※)全国大学生活協同組合連合会「第50回/学生生活実態調査」より
相談者「りょうたこ」さんから寄せられた感想
アドバイスありがとうございました。手持ちの貯金と今後の収入でやっていけるのか心配でしたが、具体的に教えて頂き、心強かったです。頭では分かっているつもりでも、夫の突然の決断を責める気持ちが拭えませんでしたが、これからは支え合っていこうと思うことができました。家計の無駄をなくし、今の自分にできることをやっていこうと思います。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/清水京武
(文:あるじゃん 編集部)
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