1日の歩行距離は16キロ……アマゾンの倉庫で働く「ピッカー」の実態
原題は「HIRED」。直訳すれば、「雇われ」「被雇用者」くらいのそっけないものだが、過激に意訳されたタイトルが目を引く。
副題には「潜入・最低賃金労働の現場」とある。イギリス人ジャーナリストの著者自らが、“最底辺”で働いた体験をまとめたルポルタージュだ。同様のアプローチでベストセラーとなった『ユニクロ潜入一年』(文藝春秋)の著者・横田増生氏も推薦する一冊である。
本書の著者が覆面労働者として潜入した先は、世界最大の物流企業・アマゾンの倉庫。それから、訪問介護、コールセンター、そして、ウーバー(ウーバーは、世界中で展開している配車サービス。日本では「白タク」扱いされて、本来の業態では普及していないが、料理のデリバリーサービス「ウーバーイーツ」が都市圏を中心に急激な広がりを見せている)。
紹介されるのは、いわゆる「新3K」と言われる「キツい・帰れない・給料が安い」職場ばかりで、なるほど、いずれも劣らず“クソみたいな”労働環境である(本書にはこの“クソみたいな”という修辞が頻出するが、そのうちに慣れると思う)。
たとえば、アマゾンの倉庫で働く「ピッカー」は、指定された商品をピッキング(選定・集荷)する仕事。
従業員の多くは、東欧からの移民だ。シフトの前後やトイレ休憩の際も万引防止の厳重なセキュリティ・チェックを受け、常に監視される中で、スピードアップを要求されて、サッカー場10面もあるような巨大な倉庫の中を汗だくになって駆けまわる。就業時の一日の歩行距離は、16キロ以上にもなるという。
ランチ休憩は実質15分
また、夕方6時からの“ランチ休憩”は実質15分しかない。ノルマを下回れば、容赦なく懲罰ポイントが課されていく。遅刻や病欠もポイント加算され(病気の子どものための早退も1点加算)、そして、6点になればすぐに解雇される。
まさに現代の「蟹工船」のようなブラックな労働環境だ。
介護の現場も、イギリスに100万人いるというコールセンターの仕事も、ウーバーの運転手も、労働者は体よく搾取され、疲弊するばかり。
しかし、本書で語られている労働者たちの苦悩は、きっとイギリスに限ったものではない。ページを繰る手を止められないのは、そこに日本の近未来を見てしまうからかもしれない。
「ここの仕事は大っ嫌い」「この国が好きじゃないの」という移民たちの声は、日本のコンビニや工場で働いている外国人留学生や技能実習生たちの声ではないかと思ってしまうのだ。
絶望し、発狂しているのは、ひょっとしたら10年後の自分ではないかと思ってしまうのだ。
最後に皮肉を言えば、本書はどうせならアマゾンで買って読んでみると、行間のリアリティが増すかもしれない。
James Bloodworth/英国人ジャーナリスト。現地で影響力のある左翼系ウェブサイト「Left Foot Forward」の元編集者。ガーディアン、ウォール・ストリート・ジャーナル等にコラムを寄稿。
せりざわけんすけ/ライター。著書に『コンビニ外国人』(新潮新書)など。外国人労働問題の他、最新がん治療「光免疫療法」も追う。
(芹澤 健介/週刊文春 2019年6月13日号)
アマゾンの米国内空輸、フェデックスが契約更新せず
2019/6/8 5:12
【ニューヨーク=河内真帆、シリコンバレー=白石武志】米フェデックスは7日、米国内の航空貨物輸送に関してアマゾン・ドット・コムとの契約を更新しないと発表した。貨物機で迅速に配達するサービスの受託は6月30日で終了する。国際貨物や通常の宅配サービスは続ける。アマゾンは貨物機も含めた自前の輸送網の構築を急いでおり、物流大手の選別を強めている。
フェデックスは米国のネット通販による配送需要が26年には1日あたり5千万~1億個に達すると予測している=AP
2018年のフェデックスの売上高に占めるアマゾン向けの比率は1.3%にとどまる。フェデックスは米国のネット通販による配送需要が26年までに1日あたり5千万~1億個に達すると予測している。同社はすでに数千社の小売業やネット通販会社と提携して配送網を確立しているとし、今回の契約更新見送りは「より広範なネット通販会社にサービスを提供するための戦略的な決定」と説明した。
一方、アマゾンは米証券当局への提出資料の中で、自社のリスク要因の一つとして「限られた数の物流企業に頼っていること」を挙げている。米UPSや米郵政公社(USPS)、フェデックスを指しているとみられ、こうした物流企業と許容できる条件で取引できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があると説明している。
アマゾンでは物流大手への依存度を下げるために米国の都市間で自前の貨物機の運航を始めており、米ケンタッキー州の空港では2021年の稼働を目指し新たな物流ハブ(拠点)を建設中だ。アマゾンが輸送用車両や制服を支給して運送事業者の起業を支援するプログラムなども用意し、宅配分野でも自前の物流網の構築を急いでいる。
アマゾンはネット通販分野に力を入れる米ウォルマートなどを突き放そうと、米国では翌日配送サービス地域の拡大に取り組んでいる。今月5日には米ラスベガスで開いた自社イベントでドローン(小型無人機)を使った配送を近く始める計画を示すなど、物流分野のイノベーション(技術革新)も自ら主導する構えを見せている。
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