5月24日「東証改革論議」の漏洩問題に関し、野村ホールディングス(以下野村HD)の永井浩二CEOが謝罪会見を行った。論議のメンバーの1人だった、傘下である野村総研スタッフの口から野村証券のストラテジストへ、そこから日本株営業部門に内容が伝えられ、さらに顧客の一部(機関投資家)にも漏れたことを認めての「謝罪」だった。
 対して金融庁は28日、必要な措置を講じた。平たく言えば「コンプライアンスに不備が多すぎる。納得できる改善計画書を6月4日までに提出しろ」という命令だ。措置の発表に際し金融庁は「2012年問題の反省が全くなされていない。体質は、ようとして変わっていない」と言及している。
 12年問題とは以下の様な事由を指す。 (1)10年頃から、証券界では「増資情報の運用体への漏洩→インサイダー取引の発 現」が相次いだ。増資情報は運用体の「売り/値下がり/買い戻し=利益確保」を促す。
 (2)金融庁は12年7月3日に外資系を含む大手証券12社に対し、法人関連情報の管理態勢に関する点検を行い「8月3日までに報告するよう」命じた。
 (3)インサイダー取引の疑義でSMBC日興証券の元執行役員が逮捕されていたし、「報告命令」の対象には野村証券/大和証券という大手証券がこぞって顔を揃えていた。
 (4)とりわけインサイダー取引の疑義件数で抜きんでていたのが野村証券だった。金融庁の狙いは「インサイダー取引への厳正な態度を示す」のと同時に「野村証券への金融庁の意地を見せつける措置」と言われた。
 (4)に記した「金融庁の野村証券への意地」とはどういうことか。
 一つは発覚していたインサイダー取引の件数で、野村証券の関与が突出していたことが上げられる。みずほフィナンシャルグループ/国際石油開発帝石/日本板硝子/東京電力。
 一つは野村証券が金融庁の意向に反し、社外弁護士等による「自社調査委員会」等で対応する方向を示し、金融庁をいわば無視した点である。
 一つは三井住友トラスト・ホールディングスの傘下にあった旧中央三井アセット信託銀行が早い時期にみずほフィナンシャルグループ/国際石油開発帝石に関する野村証券からのリークに基づくインサイダー取引を認め、金融庁に詫びを入れたにもかかわらず野村証券からは3カ月近く「ナシの、つぶて」。
 当時を知る証券界の元重鎮に確認した。彼は「ご存知のように当時“金融庁対野村の3カ月戦争”などと言われたりしたが、野村は何故か金融庁の要請に応じなかった。結局、当時の野村HD会長の古賀(信行)氏がVS金融庁の急先鋒だった野村HDの渡部(賢一)CEOと柴田(拓美)COOに引導を渡す形で矛を収めた。が、その代償は大きかった。古賀・渡部両氏は職を解かれた」と振り返った。
 12年問題当時と同様に、今回の一件でも大阪ガスなどが野村証券を社債発行業務から外す動きが相次いでいる。東京メトロや不二製油グループ本社は社債発行の主幹事から野村を外した。
 日本証券業協会も「野村に相応の措置」としている。
 俗に言う因果応報を覚える。12年問題で去った古賀・渡辺の後を受け野村HDのCEOに就いたのは傘下の野村証券社長の永井氏だった。件の元斯界の重鎮氏は「6月4日までに永井氏は謝罪会見までしている以上、業務改善計画書を提出せざるを得ないだろう」とした。