ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。夫の年収が600万円以上、妻が400万円以上、2人合わせて1000万円以上ある共働き夫婦を「パワーカップル」と呼びます。最近では、世帯年収が2000万円以上あるカップルも増えています。医師と会社経営者、弁護士や公認会計士などの士業と会社員といったパワーカップルから相談を受けることも増えてきました。しかし、意外なことに、貯金が少ない高年収世帯は驚くほど多く、中にはゼロという場合もあるのです。これはいったいどうしてでしょうか。
自炊せず、家事と育児はヘルパー任せでは・・・
実は、パワーカップルはシンガポールでも増えています。例えば、職業は夫婦ともにバンカー、公務員と大学教授(汚職防止のために公務員の給与は高い)の組み合わせという感じです。
共働きで子どもがいれば、保育園のような施設に預けるほか、ヘルパーを利用する場合がほとんどです。その多くは常駐で雇っています。単身者でも週1回は部屋の掃除をしてもらうためにヘルパーを頼むのは当たり前になっています。忙しいので食事は外食やテイクアウトで済ませ、週末は子どもの習い事をいくつもさせるという家庭も多いのです。
また、持ち家でクルマ保有というカップルがとても多い印象です。シンガポールでは自動車への税金が非常に高く、クルマの維持費には駐車場代なども含めると1ヵ月24万円前後かかるといわれています。また、年2回は高級リゾートや海外旅行などでバカンスを楽しむ傾向にあります。
つまり、固定費だけで月50万円以上かけている家庭が多く、共働きでも70歳くらいまで働かないと生活が厳しいという状況になっているのです。
欧米人の場合、駐在員が多いために妻のほとんどは専業主婦です。広い住居に子ども3~4人と暮らし、ペットを飼っている家庭も少なくありません。どんなに近くでも移動は車というライフスタイルが標準的です。
バカンスも長く、1ヵ月近くリゾートで過ごす人もいるくらいです。中には、一足3万円もするブランド靴をママだけでなく4人の子どもにも履かせていたり、子どもの洋服も高級ブランドのものを定価で買うような人もいます。ワインなど、お金がかかる趣味を持っている人もたくさんいます。
いかに税金が低い国とはいえ、こうした生活を送っていては年収2000万円でもすぐにカツカツになってしまうでしょう。一方、物価が安いとはいえ、税金が高い日本だとやはり家計は苦しくなるでしょう。
稼ぐために貯金より自己投資を最優先
このような高支出家庭は、自分への投資を最優先する傾向が見られます。つねにベストを目指す最上志向の人も多いので、貯金の優先順位は下がります。「貯金なんてしても意味がない」と思っている人もたくさんいるのです。余っているお金があれば自分に投資をして、収入を増やす努力をする人たちだからです。
健康維持や豊かな体験も含めて、プライベートも仕事につながると信じているので、そこにお金をかけます。こうした理由から、収入に対して驚くほど貯金が少ない家庭が非常に多いのです。もちろんフローがどんどん増えていけばフローで回していけるので、「宵越しの金は持たない」という戦略もアリなのかもしれません。
こうしたタイプが困るのは、万一のことがあった場合です。潤沢なフローがある日パタリと切れてしまうと、家族は非常に困ることになります。そうなったときのことを考えると、やはり今の「貯めない生活」は楽観的すぎるでしょう。そんなときのために、ある程度蓄えがあるほうが安心できるはずです。
「金は入っただけ出る」というパーキンソンの法則があります。家計支出は収入に応じて増えるばかりでなく、収入を超える傾向があり、ほとんどがそうなるという考え方です。自由なお金が増えれば、それに応じて自由気ままに使ってしまい、収入以上に使い過ぎてしまう傾向があるのです。
この法則に逆らってお金を貯めるのは、容易なことではありません。前回の
記事でも書きましたが、代々続く資産家のように努力をしてお金を守る必要があるのです。つまり、お金は簡単に底を尽きるという強い恐怖感を持っていないと、本当のお金持ちにはなれないのです。
フローに頼っているタイプからすると、「お金は使えば入る」という理屈ですから、貯めようというインセンティブがなかなか働きません。また、さまざまな富裕層向けマーケティングの上客対象となるため、お金を落としやすいのです。時間がないのでタクシーや時短サービスに余分にお金を払ったり、資産運用などを専門家に任せっきりにして損を出したりしがちです。もちろん「時は金なり」ですが、本当に投資コストがよいのかどうかを振り返ってみる必要がありそうです。
「強制的に貯金する仕組み」を作り手元資金を減らす
さて、こうした高収入で貯金ゼロの人は、どうやって貯めればいいのでしょうか。
1つは強制貯蓄です。私はあまり住宅ローンを組んだり、保険の平準払いするのはオススメしませんが、最終的に資産になるのであれば浪費で消えるよりはいいと思います。
また、つみたてNISA(積立型少額投資非課税制度)やiDeco(個人型確定拠出年金)など、強制天引きする仕組みを利用するのもありかもしれません。浪費家の口座から強制貯蓄をして、手元の余剰資金を減らしてしまうのです。そうすればストレスなく、残ったお金を支出できます。
また、カップルの場合、お金に強い方が管理するのがオススメです。夫婦のうち、片方が浪費家でもう一方がそれに悩んでいるカップルも少なくないようです。その場合、浪費家の口座から必要な支出を支払って、倹約家のほうの口座で貯める方法も考えられます。
また、資産家は法人などを活用して自分で使えるお金を限定させるなどの仕組みを考えることも多いのです。雇用形態にもよりますが、こうした仕組みを考えてみるのも1つかもしれません。
生活レベルを下げるのは大変なことですが、40代、50代など老後が見えてくると、こうした人たちも不安と焦りが少し見え始めるようです。「不安」という感情は、行動を起こすチャンスにもつながります。ダイエットと同じで家計を可視化して、メタボ家計を改善していく必要がありそうです。
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