それほど親しくない相手をほめるのは難しいもの。でも、ほめ方にもコツがあるのです(写真:freeangle/PIXTA)
外資系一流ホテルのシェフとして活躍し、80%を超えるリピート率を誇る仲亀彩さん。海外セレブの接客も多い彼女が、サラリーマンでもすぐに実践できる「ほめ方のコツ」をアイテム別に紹介します。
昨今は「コミュニケーション能力はビジネスマンの必須スキル」と言われるようになっていますが、その中でも「ほめる」能力は特に重要です。ほめ上手になれば、それだけでいろんなことがいい方向に進むようになります。
ただ、ほめることの大切さは理解していても、いざ誰かをほめようとすると言葉が出てこない、何をどうほめればいいのかわからない……という方もいらっしゃると思います。その気持ちは、とってもよくわかります。
なぜなら、実は私自身が、以前は人見知りで、口下手だったからです。特に高校3年生の時はひどく、学校で誰かから話しかけられても一言も話せないということもよくありました。そんな私が変わるきっかけとなったのが、15歳から始めた飲食店での接客の仕事でした。つたないながらも試行錯誤をして、どうすれば上手に接客できるか、お客様に満足していただけるかを考え続けてきました。
ほめる能力を伸ばすために私が取り組んだのが、接客ノートを取ることでした。担当したお客様の簡単な特徴とともに、どんなことがお好きなのか、どうほめたら喜んでいただけるかを、ひたすらメモすることにしたのです。以来19年間、さまざまな接客業を経て、延べ10万人以上のお客様と会い、お話をさせていただき、ほめ方のバリエーションを増やしてきました。ここではそうやって集めてきた膨大なほめ言葉のボキャブラリーの中から、特に使いやすいものをアイテム別に紹介します。

実は「リュック」はほめやすいアイテム

かばんはほとんどの人が持っていますので、ほめやすいアイテムです。また、男性でも女性でも、それぞれこだわりを持っていることが多く、その意味でもほめやすいといえるでしょう。
ケース1:デザインや素材に特徴があるかばんの場合
おしゃれですね
具体例「○○さんのバッグ、デザインがおしゃれですね」「○○さんのバッグは、元気が出そうな色でいいね!」
かばんを見て、すぐにわかることは、デザインやカラー、生地ではないでしょうか。まずは、そこに注目してほめてみましょう。「おしゃれ」という万能の言葉も使ってみてください。
持ち手、ポケットのデザイン、柄など、細かく見ていくと、いろんなところに目がいき無限にほめることができます。
ケース2:リュックや2ウェイバッグなどの場合
使いやすそうですね
具体例「○○さんのかばんは見ただけでも機能性が高そう」「○○さんのバッグはかさばらなくていいですね。僕もそういうのにしようかな」
これは特にリュックや2ウェイバッグのようなかばんをほめるときに有効なほめ方です。
以前、通勤時にリュックを使っている友人を見て、「○○さんのバッグ、動きやすそうでいいですね。私も今度使ってみようかな」といったところ、「これはすごくいいよ。両手が使えるし、軽く丈夫で機能的。僕にはピッタリ。たまにはリュックを使ってみるのもいいんじゃない?」と少し興奮気味にお勧めしてくれました。
かばんもやはり「道具」なので、人によってさまざまなこだわりがあります。そこに気づいてほめるのも、大切なポイントです。

毎日着るからこそ「スーツ」をほめよう

ビジネスの場で見る機会が多い服装といえば、今はまだスーツが多いでしょうか。ビジネスマンにとってのスーツはユニフォームであり戦闘服ですから、それをほめられて嫌な気持ちになる人はいません。毎日着る服こそ、ほめることで、話すきっかけの種まきをしましょう。
ケース1:出会って日が浅い相手の場合
いつもビシッとキマっていますね
具体例「○○さんのスーツ姿はいつ見ても格好良いですね」「○○さんのスーツ姿は、いつもビシッとキマっていますね」
スーツは特別な服装です。最近は公の場でもスーツ以外の服装もOKになりつつありますが、毎日着る人もそうでない人もどんな人でも、スーツを着るだけで「きちんとした」感じになり、男性も女性も格好良く、キマって見えます。まずは、その格好良さをほめましょう。
これなら、ブランド物などの特別なスーツでなくても、スーツを着ている相手なら誰にでも使えるほめ言葉です。
特に最近知り合った方に、数回お会いしたタイミングで使うのが効果的。あるいは、普段はカジュアルな格好をしている方が、たまにスーツを着てきた時にお伝えするのもお勧めです。
ケース2:初めて見るスーツの場合
新調したんですか?とってもお似合いです
具体例「 ○○さん、スーツ、新しくしましたか? とってもお似合いです」
私もそうですが、人は自分の変化に気づいてもらえると嬉しいものです。なぜなら、「いつも自分のことに注目してくれている」と感じるから。
コミュニティーの中で生きているわれわれにとって、人から関心を得られることは喜びとともに安心も感じることができます。
ですから、新しいスーツを見たとき、おろしたてのスーツは欠かさずほめたいところです。着ている相手の心も、いつもよりどこかウキウキしているはずですから、気づいたときにすぐ伝えてみてください。きっといい笑顔がかえってくることでしょう。
特に、季節の変わり目などは、服を新調するタイミングですから、このほめ言葉を使えるチャンスも多くなります。見たことがないスーツを見たら、すかさずほめてみてください。

「シャツ」は色やデザインをほめること

スーツとセットで着るワイシャツも、ほめやすいアイテムの1つと言えます。最近はシャツの素材開発が進み、アイロンがけ不要の形状記憶のもの、伸縮性があるもの、通気性のよいものなど、さまざまな生地があるようです。ただ、生地はパッと見てわからないこともあるので、ここでは生地以外のほめ方で伝えてみましょう。
ケース1:色や柄のあるシャツの場合
その色、今日のスーツに合っていますね
具体例「 ○○さんのシャツ、スーツと合っていてシュッとしてますね」「 ○○さんの今日のシャツの色、そのスカートと合っていますね」
シャツをほめる場合、便利なのが「スーツと合っている」というほめ方。なぜなら、組み合わせたその人のセンスをほめることにもなるので、どんなシャツを着ていたとしても使えるからです。スーツを着ている相手なら、男性女性にかかわらず、また年齢も気にせずほめることができます。
たとえば、白いシャツとネイビーのスーツの組み合わせは、シンプルですが、爽やかな印象になります。また黒のシャツにグレーのスーツなどは、普通とは違ってシックな装いになり、これもまたすてきです。
「○○さん、おはようございます。今日のシャツ、スーツと合っていてすてきですね!」「おはようございます。ありがとうございます。実は今日着るシャツ、もう1つと迷ったんですが、こっちにしてよかった!」
このようなやりとりから入ると、朝からお互いに気持ちよく仕事に取り組めると思います。
ケース2:デザイン、装飾が珍しいシャツの場合
そのデザイン、おしゃれですね
具体例「 ○○さんの襟のデザイン、おしゃれですね」「 ○○さんのシャツのボタンおしゃれですね」
パッと見る分にはみな同じようなシャツも、細かい部分を見ていくと、意外と特徴があったりします。襟の形、ボタンの色や形、袖口(カフ)の形などなど……。そこに注目してほめるのも効果的です。
私の仕事の場合、目の前でお客様が食事をしているので、よく相手の手元を見る機会があります。すると、そういったシャツの細かい特徴に気づくことも多いものです。
そんな時に「○○さんの今日のシャツのボタンの形は、珍しいですね」などと話しかけると、「よく気がついたね。これはね……」と話が盛り上がったりします。
このような細かい部分というのは、相手をよく見ていないと気づかないものですから、そこをほめることができれば、相手に強く印象づけることができます。もし何か珍しい特徴を見つけたら、チャンスを逃さず、すかさずほめておきましょう。