川崎競馬場の貴賓室から見たレースは格別だった
馬主たちのオフ会「新宿区馬主会」に貧乏記者が潜入<1>

 1億円、2億円……競走馬のセリ市のニュースを見ていると、そんな額が平気で飛び出す。良血の仔馬ともなればセリは加熱し、このような額になるのは当たり前であり、そんな額をポンと出せる馬主という存在は明らかに「お金持ち」だ。

 しかし、馬主=大金持ちというばかりでもないらしい。しがない貧乏ギャンブラー記者が今回、馬主だけのオフ会が行われると聞いて潜入してみた。平均所得1000万円オーバーの馬主約30名、オフ会の名前は「第3回新宿区馬主会」である。

◆馬主30人のオフ会会場に貧乏記者は右往左往

 まず、馬主と言っても、何億円もする馬を多数所有する大馬主だけではない。1頭だけ所有する馬主や、組合馬主・共有馬主といって複数で1頭の馬を共同所有するパターンもある。その馬主資格は、中央競馬の馬主であれば条件は跳ね上がるが、地方競馬であれば、会社員(サラリーマン)の方の場合、給与所得控除後の金額が年500万円を超えていれば馬主申請への収入面での資格はクリアできる。もちろん、競走馬を購入し、育成・預託費用も負担できる財力が必要なため、今回参加者の平均所得は1000万円を超えるのは間違いないので、記者の年収から比べたらウン倍以上なんですけどね……。

 今回の「新宿区馬主会」に参加している方々は、何十頭も所有する馬主から、共有馬主、馬主資格をとってこれから馬を購入したいと考えている馬主まで、中小馬主を中心とした横の交流を目的としている馬主たちの集まりだ。

 会場は川崎競馬場の貴賓室。馬主席と同等クラスの高級ルームで1室10万円のVIPルーム。普段馬主席に入ることができる馬主も、30人も集まっては別室が必要となったわけだ。

 照明、テーブル、椅子、ソファ…なにもかもが高級だと思うとなんとも落ち着かない。パドック横売店のコロッケをかじって落ち着きたいと思っていたのだが、なんと別料金のビュッフェサービスまで用意されていた。そしてどれもまた旨い! 普段川崎競馬場に来て食べるのは気合いの入る名物の“辛い焼きそば”だから、正直、あとにも先にもこんな環境で取材することなんて二度とないんじゃないか……と思ったのであった。

「私の馬が次のレースを走るんで、みんなでパドックの馬主席に行きましょう」

 パドックの馬主エリア。これからレースに向かう馬を間近で見られるのは一般客でも一緒だが、馬主エリアは騎手の待機所なども間近。さっきの馬主が調教師と話している、大井の帝王・的場文男騎手がすぐ近くで関係者と会話している、といったことが当たり前に、目の前で繰り広げられているのである。明らかに一般人ならば立入禁止区域だ。

 レースも終わり、一段落したところで馬主たちに話を聞いた。いったいどんな人たちが馬主となるのだろうか。サラリーマンでもなれるの? 馬主ならではの苦労は? 興味は尽きることがない。

 約30名の馬主たちとの名刺交換する。肩書きは企業の代表取締役・大手企業の社員ばかり。「地方競馬の馬主ならサラリーマンでもなれますよ~」そう言う馬主さんもいたが、心の中で「いやいや、サラリーマンでもそんなの一部っスよ…」。記者の知ってるサラリーマンの知り合い、その大半は無理です(泣)。しかし、ちょっと頑張れば俺も馬主になれるんじゃないかな…淡い想像だが、なんか前向きになれる理由にはなった気がする。

◆中古車よりも安くなってた一口の馬

 新人馬主のAさんは、もともとは馬主資格を必要としない、一口馬主として複数の馬に出資する競馬ファンの1人だった。ところがある日、ネットで悲しいものを見てしまったという。