2018年12月25日火曜日

生前贈与で相続税対策!そのメリット・デメリット

生前贈与で相続税対策!そのメリット・デメリット








 相続税対策としてよく活用される生前贈与。暦年贈与、相続時精算課税、教育資金贈与など、生前贈与にはいくつか方法があります。それぞれのメリットとデメリットを事前に確認しておきましょう

生前贈与で相続税対策を考えている人は必見!方法とメリット・デメリット

平成27年からの相続税増税の影響から、相続税対策をする人が急増しています。中でも現金贈与は比較的手続きが簡単で、私自身もおすすめしています。ですが、この生前贈与にはいくつかの方法があり、財産所有者の年齢や家族構成、全体的な財産額や財産構成によって、それぞれのメリットとデメリットがあります。これから生前贈与を考えている人は、自分に合った方法は何かを事前に確認しておきましょう。

生前贈与なのか名義貸しなのか?

メリット・デメリットの話の前に、まずはどの生前贈与にも共通して注意すべき点があります。

生前贈与が問題になるのは、贈与した人に相続が発生した後、税務署が行う相続税の税務調査の時です。過去にさかのぼり、贈与されたものが本当に贈与なのか、ただの名義貸しだったかを問われます。税務署としては、名義貸しであればより多くの相続税を払ってもらえるので、贈与を認めたくありません。

税務署に生前贈与を認めさせるには?

生前贈与を税務署に認めさせるには、いくつかの条件があります。この条件がより多く整うほど、生前贈与を否認されるリスクが少なくなります。

・もらった人が「もらったと認識している」こと(贈与者が贈与したつもりになっているだけでは否認されやすい)
・書類(贈与契約書など)で「贈与したことを証明できる」こと(なお複数年契約は初年にまとめて課税されるため逆効果)
・もらった人が贈与税の申告をして自分で贈与税を払っていること(110万円の現金贈与は名義貸しだと最も疑われやすい)
・もらった人が自分で通帳やハンコを所持していること
・もらった人がもらったもの(お金など)を使っていること

最もおすすめしたいのが暦年贈与

一番簡単な手続きで行えるのが現金の暦年贈与です。配偶者・子・子の配偶者・孫と、もらう人数が多いほど効果があります。

ただし、相続人や遺贈を受けた人への相続発生前3年以内の贈与は、相続税の計算に持ち戻され、これが唯一のデメリットと考えられます。言い換えれば、例えば10年間贈与したところで相続が発生した(遺贈はない)場合、配偶者と子の3年分の贈与は相続税に持ち戻されますが、7年分は相続税がかかりません。また子の配偶者や孫への贈与は10年分すべて相続税はかかりません。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、もらった時は贈与税を少なく(2500万円までは贈与税は0円に)できる反面、相続発生時は相続税がかかる制度です。将来、相続税がかからない財産額の人や、収益物件・値上がりが見込まれるものは、この制度を利用して贈与すると効果があります。

ただし、一度この制度を利用すると、以後その贈与者からの暦年贈与は一切受けられません。また、利用を止めることはできません。将来相続税がかかる人だと相続税対策にはほとんどならないのもデメリットです。

教育資金の一括贈与

教育資金に充てるための1500万円までを事前に贈与でき、贈与税がかからない制度です。メリットは将来の相続税の持ち戻しが無いこと。一括で高額の現金贈与ができ、相続税の対策になります。

デメリットは、もらった人が30歳になるまでの長期間、領収書の管理などの手間が発生することです。また、実際に使い切れなければ贈与税がかかる、贈与者は1回しか「ありがとう」を言ってもらえない、といった面もあります。

そもそも、必要な都度の教育資金や生活費の贈与には贈与税はかかりません。その都度贈与のほうが、感謝の気持ちや「ありがとう」もその都度になります。

結婚・子育て資金の一括贈与

結婚・子育てに充てるための1000万円までを事前に贈与でき、贈与税がかからない制度です。注意点は、贈与者が死亡した時点で残額があれば、相続税への持ち戻しになることです。

住宅取得等資金の贈与

住宅取得等資金に充てるための一定金額の贈与には、贈与税がかからない制度です。メリットは将来の相続税の持ち戻しが無いこと。一括で高額の現金贈与ができ、相続税の対策になります。

実際、贈与者は60歳代で、もらう人は30歳代というケースが多く、長い目で見れば相続税対策となりますが、駆け込みで相続税対策をする年齢層には合わないことが多いです。なお、もらった人は翌年の3月15日までにその居住用不動産の引き渡しに間に合わないといけないため、年後半の贈与は避けたほうが良いです。

贈与税の配偶者控除

婚姻20年以上の配偶者に居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与する場合、2000万円までの贈与が控除できるという特例です。メリットは将来の相続税の持ち戻しが無いことです。不動産そのものを贈与することも可能なため、財産構成のうち現金が少ない人でも相続税対策ができます。

もちろんデメリットもあります。一般的な相続税対策としては子や孫など、より下の世代にしたいところでしょう。しかし、この特例は同じ世代の配偶者への贈与となるため、二次相続が近くなる可能性も。二次相続財産が確定してしまうという面もあります。

そもそも土地だと、「小規模宅地等の特例」で2割にできるため効果が少ない、不動産の贈与には高額の費用(登録免許税・不動産取得税・司法書士費用など)がかかる、といった点も見逃せません。

生前贈与の実行前にはメリットとデメリットを十分検討して

将来に相続税がかかりそうか、生前贈与による相続税対策が必要か、贈与し過ぎて自分の生活費は大丈夫か、誰かに偏った贈与は将来の遺産分割でもめる原因にならないか――。これらのことをじっくり考えてから、生前贈与を実行するか否かを決める必要があります。せっかくの対策が無駄になってしまわないようにしたいものです。
(文:小野 修(マネーガイド))


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