ドラムと縦型どっちが正解?専門家が教える、どちらの洗濯機を買えばいいのか
乾燥機能を備えたドラム式洗濯機は、デザインもスタイリッシュなことから大ヒット。各メーカーも主力商品として開発し、現在はスマホと連動するモデルなども登場しています。しかし実は、日本では縦型洗濯機のほうがシェアが多く、また最近はドラム式から縦型洗濯機へと回帰する人も増えているとか。果たして、どちらを選ぶのが正解なのか?
そこで@Living編集部では、「掃除機の正しい選び方」や「衣類スチーマー」などの記事でおなじみの“家電のプロ”戸井田園子さんに、ドラム式・縦型洗濯機のメリットとデメリット、それぞれの選び方から最新モデルの傾向まで、最新洗濯機選びのポイントを教えていただきました。
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ドラム式は乾燥に最適。縦型は洗浄力が高い
まず、それぞれの基本的な仕組みから解説していただきましょう。
「ドラム式洗濯機は、衣類を持ち上げて落下させることで洗浄します。落下のときに汚れを押し出す“叩き洗い”です。これには、泡立ちにくい高濃度の洗剤液が必要。泡がクッションになるので、叩き洗いではうまく汚れを落とせないんです。この方式はヨーロッパ発祥で、ヨーロッパの水は硬水だからそもそも泡立たない。泡が立たない水でも汚れを落とすために生まれたのが、叩き洗いなんですね。もともとヨーロッパは水資源も少ないので、この洗浄方法が主流となりました。
対する縦型洗濯機は、業界的には“うずまき型”と呼ばれ、洗濯槽に水を溜めて洗い、たっぷりの水ですすぐのが特徴です。これは“もみ洗い”に区別され、もともとアメリカの方式。日本は昔話にもあるように、川でたくさんの水でジャブジャブ洗うのがいいとされてきました。しかも日本の水は軟水なので、よく泡立つ。水が豊かで、軟水という地場の特徴を活かした方式なんです」(戸井田さん)
そのため日本では、もみ洗いの縦型洗濯機のほうが理にかなっている、と戸井田さんは話します。では、なぜドラム式が日本で一気にブレイクしたのでしょうか?
「ドラム式と縦型の決定的な違いは、乾燥機能です。縦型は乾燥が苦手。遠心力で衣類が洗濯槽に張り付いてしまうので、空気をふくませて乾燥するのが難しい。時間もかかるしシワにもなりやすいんです。一方、ドラム式は乾燥に適しています。持ち上げた衣類が落下する間に温風をしっかり当てて乾かすことができるわけです。
日本がドラム式に傾倒したのは、乾燥機が一体化されたから。洗濯乾燥機になってドラム式が一気に普及しました。ひと昔前、下に縦型洗濯機、上にドラム乾燥機を設置して一緒に使っていた時期がありましたよね? もちろん今もありますが、あのスタイルがそれぞれの機能に適したカタチです。でも洗濯機と乾燥機を一体化する場合、縦型で乾燥するのは至難の業だったので、ドラム式が採用されたんです」(戸井田さん)
洗濯乾燥機になったことで、乾燥に強いドラム式が大ブレイク。しかし縦型洗濯機のファンも多く、最近再び注目を集めています。そこであらためて、両モデルの洗濯時のメリット・デメリットを戸井田さんに聞いてみました。
【ドラム式洗濯機のメリットとデメリット】
・衣類がからみにくい
・節水性が高い
・洗剤残りが少し気になる
・真横ドラムは途中で蓋を開けられない
・節水性が高い
・洗剤残りが少し気になる
・真横ドラムは途中で蓋を開けられない
「ドラム式は叩き洗いなので、衣類が絡みにくいのが特徴です。絡まないので衣類が傷みにくいというのが、縦型との大きな違い。また少ない水で洗濯できるので、節水性も高いんです。しかし、すすぎも少量の水で行うため、洗剤残りやニオイ残りが少し気になる場合もあります。また、洗濯槽が真横になっているタイプは、洗濯の途中で蓋を開けられないので、靴下を片方入れ忘れたときなどには困りますね。
このようなドラム式のデメリットを解消すべく、いろいろな要望を集約して生まれたのが、“ななめドラム”です。ななめドラムは下部に水を溜めることができるので、ある程度泡洗いができたり、途中で開けたりできます。最新の洗濯機の主流は、このななめドラム型なんです」(戸井田さん)
【縦型洗濯機のメリット・デメリット】
・泥汚れなどの頑固な汚れもしっかり落ちる
・洗剤残り、ニオイ残りが少ない
・生地が傷みやすい
・節水性が低い
・洗剤残り、ニオイ残りが少ない
・生地が傷みやすい
・節水性が低い
「洗浄力の高さこそ、縦型洗濯機の最大のメリット。たっぷりの水で撹拌し、泡で汚れを落とすから、泥汚れなど頑固な汚れもしっかり洗浄できます。すすぎもたっぷりの水で行うので、洗剤残りやニオイ残りも気になりません。しかし、渦を巻く水流で揉まれるため、衣類が絡みやすく、生地を傷つけてしまうことも。また、大量の水で洗濯するため節水性が高いとはいえません。
初期のドラム式は性能があまりよくなかったので、登場当初にドラム式に乗り換えた人たちが、不満を感じて縦型に戻ってきているのも、ひとつの要因だと思います。あとは、結局外干しする人がほとんど。乾燥機能はあまり使わないから、というのも縦型の人気が再燃している理由のひとつではないでしょうか」(戸井田さん)
洗浄力で選ぶなら縦型洗濯機のほうがやや優勢。しかしドラム式の性能も向上しており、以前ほど洗浄力にそこまで大きな差はないそうです。ではドラム式と縦型、それぞれどのような人に向いているのでしょうか?
「一番影響が大きいのは子どもの年齢かもしれません。子どもが0~10歳くらいで、とくに共働きの人はドラム式のほうがいいと思います。保育園には着替えを数セット持って行かなくていけない。でもすぐに着られなくなるので、たくさんの服は持っていないのが普通。なので、服をどんどん乾かさないといけない。まだ子ども服が小さく、乾燥してもシワにならないので、乾燥機能をフル活用したいですね」(戸井田さん)
では子どもが大きくなったら?
「10~20歳の子どもがいる人は、共働きであるかどうかは関係なく縦型がおすすめ。遊びや部活の泥汚れなど子どもの服が一番汚れる時期です。成長臭などのニオイもつくので、たっぷりの水でジャブジャブ洗うのがいい。洗浄力が大事です」(戸井田さん)
では、DINKSだったり子どもが独立したりして、子育てをしていない世帯なら、どうでしょうか?
「子育て世代以外の人は、好みや生活スタイルで選ぶといいと思います。外に干す時間がある人や、やっぱり外干しがいいという人は縦型。乾燥まで終わらせて、できるだけ洗濯にかかる手間を減らしたい人はドラム式。でもペットを飼っていたり親を介護していたり、ニオイ問題がある人は縦型のほうがおすすめです。とくに、毛が抜ける犬や猫を飼っているなら、糸くずキャッチーがある縦型ですね。糸くずキャッチャーがついているのは縦型だけなんです」
しかし乾燥機能を頻繁に使うと、電気代も気になるところですが……。
「洗濯だけなら電気代はほぼ同じです。乾燥を頻繁にするならドラム式のほうが安く済みます。縦型洗濯機の乾燥代は、ドラム式のおよそ3倍もかかるので。ちなみに10年前のドラム式はヒーター式だったので、びっくりするくらい電力を消費していたのですが、ここ3~4年はヒートポンプ式やヒートリサイクルなど省電力方式になって、消費電力は大幅に下がりました。最新モデルに買い替えるだけでも、電気代は相当抑えられると思いますよ」
ドラム式と縦型、自分ならどちらを選べばいいのかわかってきましたね。では最後に、それぞれの最新モデルの特徴を戸井田さんに解説していただきました。
どちらも温水洗浄で汚れにしっかりアプローチ
「ドラム式の最新モデルはトルクが向上しています。ドラムの回転がパワーアップしているので、洗濯物をより高く上げて高所から落下させ、汚れをしっかり押し出せます。また温水洗浄もトレンド。皮脂汚れに効果的な37~38℃以上の温水で洗濯でき、洗浄力がアップしました。海外製品では90℃まで上がるものも登場しています。あとは乾燥時の温風も温度が上がっています。高温風でダニ対策になり、素早く乾かせるのでシワも抑えることができます。
一方、縦型の最新モデルにも、ドラム型と同様に温水洗浄が搭載されています。縦型ならではの特徴としては、容量アップでしょうか。自宅で洗濯できる寝具や衣類が増えたので、それに合わせて洗濯機も大型化。だから1世帯あたりの人数は減っているのに、洗濯機は大型が人気なんだそうですよ。また、ガラス蓋を採用するなどデザイン性が向上しているのも顕著です」(戸井田さん)
これでドラム式と縦型の特徴&トレンドは把握できたはず。あとは自分に合ったモデルを見つけるだけです。家電のなかでも洗濯機は高価なので、じっくり比較検討して選んでください。
次回は、戸井田さんおすすめの最新モデルを具体的に挙げて紹介します。
【プロフィール】
インテリア&家電コーディネーター / 戸井田 園子
大手プレハブメーカーのインテリア研究所でインテリアコーディネートを担当したのち、商品企画部へ。その際に習得した、商品の性能・デザイン・価格などを総合的に比較して優劣を見極めるテクニックを活かし、インテリア&家電コーディネーターとして独立。情報ポータルサイト「All About」のガイドをはじめ、テレビ・新聞・雑誌など各メディアで活躍している。
GetNavi webがプロデュースするライフスタイルウェブメディア「@Living」(アットリビング)
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