皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、かつて個人再生をし、何とか貯蓄できる家計を目指す30代の会社員の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

貯蓄目標100万円、どう家計を立て直せば可能ですか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、かつて個人再生をし、何とか貯蓄できる家計を目指す30代の会社員の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

▼相談者美咲さん(仮名)
女性/会社員/36歳
東京都/賃貸住宅

▼家族構成独身、一人暮らし

▼相談内容100万円を目標にお金が貯めたいのですが、まったく貯められません。昔、クレジットカードで個人再生をしてしまいました。今は借金はないですが、毎月ギリギリか足りない状態です。貯蓄をしてもすぐ取り崩してしまいます。食費、交際費、衣料費などにかかっている気がします。特に買い物は我慢ができなく、一気に買い込んでしまいます。

クレジットカードは現在、所持していません。実家にも毎月1万3000円入れていて、また奨学金の返済も残っています。まだ結婚もしていないため、将来がとても不安です。また、もし結婚しても、自分に貯金がないことを相手に言えない気がします。

▼家計収支データ

▼家計収支データ補足(1)ボーナスの使いみち
貯金/20万円、投資/10万円、奨学金返済/10万円、旅行/10万円、買い物/10万円(洋服・趣味・雑貨等)、その他20万円(家賃滞納分を支払うことも)

(2)家賃について
会社から3.5km圏内で、会社からは2万円の住宅手当(家計収支データの給与に含む)が支給されている。

(3)親への仕送りについて
現在、親は年金生活だが、借金(過去に自己破産)があり、相談者を含む子どもたちでそれを支払っているため、仕送りはやめられない。それどころか、親への生活費援助が発生する可能性もあるとのこと。

(4)趣味娯楽費の内訳
服/1万5000円、ペット費用(モルモット)/5000円、生活雑貨/5000円、スポーツジム/3000円、交際費/2万5000円、その他5000円

(5)奨学金の残額と期間について
2種類借りていて合計で400万円ほど。50歳近くまで払う予定になっているとのこと。

(6)家計節約の余地について
食事は自炊が面倒で続かなく、外食かコンビニで済ます。交際費は、誘われると断れない性格で1回のコストは4000円くらい。ただし、あまり行きたくない。衣料費は削りたいが、ストレス発散で急に使ってしまう。

(7)結婚について
結婚への希望はあり、婚活もしている。

▼FP深野康彦からの3つのアドバイスアドバイス1 自力で貯蓄できれば世界が変わる
アドバイス2 予算内で生活費を収める、それを徹底しよう
アドバイス3 貯蓄がまとまれば奨学金返済の前倒しも

アドバイス1 自力で貯蓄できれば世界が変わる

個人再生を経て、今は頑張って経済的に自立しようとしているのですから、まず、その気持ちを持ち続けることが大切。目標としている「貯蓄100万円」も無理がなく、いい設定です。そして何より大きいのは、達成できれば「世界が変わる」からです。決して大袈裟ではありません。

大きな負債をしてしまった人が、今度は自分の力でそれだけ貯めることができた。そのことで自信も心の余裕も生まれ、生活への意識も今までとは違ってきます。将来への不安も親御さんへの対処も、取れる選択肢、解決策が増えてくるはずです。

さて、目標の貯蓄100万円ですが、意外に簡単です。私は2年間でクリアできると考えています。その理由はボーナスの支給額が大きいこと。相談者にとって、最大の強みがここです。年間手取額80万円のうち、奨学金返済で10万円、その他で20万円を支出しても、50万円残ります。それだけで、2年後には100万円貯められるわけです。ただし、これまでも貯蓄をしてはすぐに取り崩していたとのこと。だとすれば、これには絶対手をつけないこと。言うまでもなく、それが達成の絶対条件となります。

アドバイス2 予算内で生活費を収める、それを徹底しよう

その方法ですが、まず貯蓄していくシステムをしっかり作りましょう。そのためには、先取り貯蓄が有効です。そして、残った予算で毎月の生活費を収める。この習慣づくりが何より大切です。勤務先に、給与天引きで貯められる財形貯蓄制度があれば、それを利用してください。おろすのに手間がかかるため、取り崩し予防につながります。最初、毎月は少額(5000円~1万円程度)でもいいので、ボーナスはきっちり、年間50万円を天引きします。その制度がなければ銀行等の積立定期でも構いません。

次に支出を抑えることです。親御さんへの仕送りが削れないとすれば、ご自身の生活費を削らないと貯蓄はできません。ただし、一度にあれもこれも削るのは無理ですから、優先順位をつけ、低いものから削るのがもっとも合理的です。

相談文を拝見する限り、交際費2万5000円はある程度下げられるのでないでしょうか。「誘われると断われない」とありますが、断りましょう。親が経済的に大変たがら節約しないといけないのでと、正直に言えばいいと思います。恥ずかしいことではありません。現に、立派に親御さんへ仕送りをしているのですから。食費や趣味娯楽費、雑費などは、今後少しずつ見直していけばいいと思います。

家賃については、家賃補助がどういう決まりになっているか詳細は不明ですが、収入に対して割高である以上、検討していい費目です。今は引っ越し費用を捻出できませんが、家賃補助を受けられる範囲で、なおかつもっと家賃の安い物件への引っ越しも考えておいてください。

アドバイス3 貯蓄がまとまれば奨学金返済の前倒しも

「買い物が我慢できない」という部分とどう付き合うかも大きなポイントです。いただいた収支データでは6000円ほど赤字ですが、そういうことで不定期に支出がかさむ月もあるのでしょう。もちろん、我慢できない気持ちはご本人にしかわからない部分ですが、現在のご相談者なら乗り越えられると思います。しかも、毎月の趣味娯楽費も、ボーナスからの支出もそれなりに確保して、2年後に100万貯蓄も可能なのですから、決してきびしいハードルではありません。焦らず、できると信じて、決められた予算の枠を出ないことを意識して生活に取り組みましょう。

また、これはしっかり貯蓄習慣ができた上で、さらに数年後のことになりますが、できれば奨学金の返済の前倒しをしてほしいと思います。たとえば、貯蓄が200万円になった段階で、うち50万円程度を繰上返済して、返済期間を短縮していく。支払利息を軽減するためだけでなく、将来の家計負担リスクを減らすことにつながります。

最後に、ボーナスから投資商品を買われていますが、しばらくは中断して、元本保証の貯蓄商品で増やしていくことだけに集中してください。目標の100万円が達成できたら、ボーナスから年間10万円程度、投資を再開されてもいいでしょう。ただし、今はまだリスクは取れません。いまや利息はないに等しいですが、まずは元本保証を優先することです。

教えてくれたのは……
深野 康彦さん

業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武
(文:あるじゃん 編集部)