経済学者のブラッド・バーバーとテランス・オーディーンが、良い教訓を残してくれていたので共有します。彼らが執筆を手がけたハンドブックの一節によると、「個人投資家は、市場平均よりも利益を出せていない!」のだとか
経済学者のブラッド・バーバーとテランス・オーディーンが、良い教訓を残してくれていたので共有します。彼らが執筆を手がけたハンドブックの一節によると、「個人投資家は、市場平均よりも利益を出せていない!」のだとか。

以前、「金融のプロは市場平均にすら勝てないから、当てにならない!」というお話をしましたが、個人投資家もあまり変わらないのが実情みたいです。

ではなぜ、個人投資家は、資産運用で失敗してしまうのでしょうか? 

この原因について、ブラッド・バーバーとテランス・オーディーンは、3つの点を指摘しています。それは、「ひんぱんに取引し過ぎる」「損得に振り回される」「十分に分散投資できていない」という3つの要素です。

資産運用で失敗する原因その1:ひんぱんに取引し過ぎる

ぼくら個人投資家が失敗する1つ目の原因は「ひんぱんに取引し過ぎる」という点です。

過去に「デイトレードは長期投資よりも儲からないし、危険だ!」なんて話をしましたが、取引をひんぱんにし過ぎると、利益を出せなくなります。金融誌「ジャーナル・オブ・ファイナンス」に掲載された論文によると、「ひんぱんに取引している人ほど利益を出せていない!」ということが分かっています。

取引をひんぱんに行うということは、そのぶん多くの取引手数料がかかるということです。このような人は長期で投資をする人よりもコスト面で不利になるので、利益を出しにくいのだと言えるでしょう。

資産運用で失敗する原因その2:損得に振り回される

ぼくら個人投資家が失敗する2つ目の原因は「損得に振り回される」という点です。バーバーらによれば、個人投資家は「含み損を抱えている銘柄を売ることができない」傾向があるのだとか。これは、いわゆる「塩漬け」として、日本人の間でも知られている現象です。

他にも、「過去に損をした経験が後を引きずり、冷静な判断ができなくなる」「過去に利益を出した経験のせいで、リスクを取りすぎてしまう」といったことが、個人投資家の間ではよくあるようです。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンらの研究によれば、「ぼくらは損失を大きく見積もり過ぎるせいで、冷静な判断ができなくなってしまう」のだとか。この現象は、「損失回避特性」と呼ばれています。それだけ、ぼくら人間は、損得勘定がニガテだということなのでしょう。

資産運用で失敗する原因その3:十分に分散投資できていない

ぼくら個人投資家が失敗する3つ目の原因は「十分に分散投資できていない」という点です。バーバーらによれば、個人投資家の多くが、あまり資産を分散していないのだとか。

プリンストン大学の名誉教授であるバートン・マルキールは、論文の中で「幅広く分散するほうが良い!」なんて話をしていますので、素直に資産は分散した方がよいでしょう。

たとえば、1カ国に集中投資している投資信託よりは、多国間にわたって分散投資をしている投資信託の方がよいでしょう。あるいは、50銘柄にしか分散していない投資信託よりも、1000銘柄、2000銘柄と、幅広く分散している企業の方がよいと考えられます。

「1つでも失敗を減らすことが大切」

世界屈指の投資アドバイザー、チャールズ・エリスは、彼の著書の中で「資産運用では多くの成功を積み重ねることよりも、1つでも失敗を減らすことが大切だ」ということを示唆しています。ぼくも、同意見です。

資産運用は、宝くじではありません。大きな成功を夢見ることは楽しいですが、夢見る投資家が利益を出しているか?と聞かれると、そうではないのが実情でしょう。結局のところ、ぼくらのような個人投資家は、インデックス投資を使って「幅広く分散された投資信託を長期保有する」のが、正解なのでしょうね。

●参考文献
なぜ、個人投資家は資産運用で失敗するのか?(https://allabout.co.jp/gm/gc/477443/)記事下段に記載
(文:中原 良太(マネーガイド))