あなたは家でどのような鏡を使っていますか?(写真:Ushico/PIXTA)
エグゼクティブ・プレゼンスとは、「社会的な地位、職位や社格、専門性にふさわしい存在感(オーラ)」のことです。欧米では「上に立つ人に必須の資質」とされ、「それがあるかどうか」は、昇進・抜擢のときの判断基準ともなります。会社を代表する立場の人間として、信頼を勝ち取ることができ、ひいてはビジネスチャンスにつながるからです。
近年では、ビジネスシーンですばらしい活躍を見せる女性の間で、エグゼクティブ・プレゼンスへの注目が高まっています。
私は、プレゼンスコンサルタントとして、そのエグゼクティブ・プレゼンスを身に付けるためのお手伝いをしています。前回に続いて、今回は「自分を客観視する秘訣」を紹介します。

「鏡」をうまく使えていますか

「あなたは家でどのような鏡を使っていますか?」
私のセミナーやトレーニング、コンサルティングでは、必ずこう質問します。自分を客観視するために活用したいアイテムが「鏡」だからです。「鏡はエグゼクティブ・プレゼンス」の入り口であると言っても過言ではないほど大切なものです。
鏡にも「いい鏡」と「悪い鏡」があります。その基準は「周囲から見えている自分の姿=本当の自分」をチェックできるかどうかです。顔や上半身だけなど、身体の一部しか映し出せない鏡は「悪い鏡」です。これでは、全身のコーディネートやバランスをチェックできません。
一方、「いい鏡」とは、全身がチェックできる鏡です。ただし、同じ全身が映るものでも角度が後ろ斜めに傾く「スタンドミラー」は、おすすめしません。こうした角度で人が自分を見ることはほとんどないからです。いいのは「垂直型の全身鏡(姿見)」です。この鏡に映るのが、他人が自然に見る「本当の自分」です。
実際に、このタイプの全身鏡を購入した方は、「鏡を変えてから、これまで意識しなかった視点で自分を見られるようになって、身だしなみへの意識も変わった」「これまでバランスの悪い恰好をしていたのが恥ずかしくなった」と言います。
もし、「悪い鏡」でしか毎日自分を見ていない、という人はこの機会に「いい鏡」に変えてください。鏡を変えれば、自分を客観的に見る視点が身に付くのです。
「客観的な視点」を手に入れるために、専門家の力を借りることもおすすめします。成功している人ほど、さまざまなアドバイス、コーチング、コンサルティングなどのプロのサービスを積極的に利用しています。とくにイメージ形成やコントロールに関しては、多くの方が何らかの利用経験を持っています。
私自身も、第三者である専門家から、自分を見てもらうことで「気づかなかった可能性に気づく」という経験をしたことがあります。そんな経験をして1つ上のステージに進むためにも、第三者の視点を活用してほしいのです。
しかし、第三者だからといって友人や家族、知人の意見で済ませるのでは、効果はありません。「視点」を持っていても、「知識」がないため、診断やアドバイスの具体性や一貫性が担保されないという欠点があるからです。どうせなら、「プロの利用」という商品を買い、自己投資体験をしましょう。その場数を踏むだけ、自分の自信の原資となります。

メイク、パーソナルカラーはプロに学んでみる

では、おすすめするのはどんな専門家、どんなプロフェッショナル、どんなアドバイザーか、ということですが、まずは印象や外見に関して有用なアドバイスや知識をくれる存在を頼ってはいかがでしょうか。
まずおすすめするのは、メイクアップアーティストです。メイクは女性特有の身だしなみですが、なかなかきちんと習う場がないので、メイクをする意味や自分にとっての理想形がわからず、「何となく塗っている」状態の人も多いのではないかと思います。
その点、専門家は、さまざまなタイプの顔の骨格やパーツに合ったメイク方法や似合う色を的確に診断してくれます。メイク用品の情報の豊富さも素人とは比較になりません。そんなプロから「自分にとっての理想形」となるメイク方法や、必要なテクニックを学ぶことで、印象コントロールはぐっとしやすく、また効果的にできるようになります。
次に、パーソナルカラーでしょうか。パーソナルカラーは、女性は知る人がほとんどで、もはや「定番」といえます。パーソナルカラー診断は、人体の色素や血色、皮膚の薄さなどの身体的要素を「個性」と捉え、その個性によってそれぞれに合う色系統、合わない色系統を診断して提案する手法です。もしまだ診断された経験がなければ、お試しください。百貨店などで気軽に診断できます。
私もコンサルティングの中で、パーソナルカラー診断は必ず行います。「似合う色」を知っておくのも役に立ちますが、「似合わない色」も知っておかないと、印象で思わぬ損をします。例えば、合わない色が顔周りにあると、顔色が悪く見える、不健康で疲れて見える、機嫌が悪く見える、印象が薄く存在が冴えない、など望まない見え方の原因となってしまうのです。人気上昇中の「骨格診断」と組み合わせて診断するサービスも増えてきているので、そちらを利用するのもいいでしょう。
スタイリストによるショッピング同行サービスも利用者が増えています。クライアントの出したいイメージに合わせてトータルコーディネートを提案してくれたり、逆に本人が自分では想像できなかったスタイル、アイテム、色の組み合わせを提案してくれたりします。「こんなスタイルが似合う、意外な自分」を発見できたりするのも楽しいでしょう。

プロに「丸投げ」せずに準備すべきこと

このような外部のプロの力を、好奇心を持って積極的に活用してください。といっても、気が引ける方もいらっしゃるでしょう。私の実感では、セミナーなどの参加型のスタイルには女性は積極的なのですが、専門家に依頼するスタイルには消極的な方が多い気がします。その原因として、「相性が合わなかったらどうしよう」と必要以上に気を使うことが挙げられます。
もちろん、お互いの相性が合わないこともあります。例えば、依頼したスタイリストから好みが合わない服や、役職や専門性に合わないスタイルしか提案されないケースなどです。これを防ぐには、依頼しようとしているプロのブログ、書籍、口コミなどを見て、情報収集することが大事です。そのうえで依頼して、体験後「違う」と思えば、やめる、変える、は自由です。気を使いすぎることはありません。
ただし、利用するときには、準備もしておきましょう。それは「自分が課題と思っていること」「自分が目標としていること」を考え、自分なりに言語化しておくことです。
プロはあなたの「これを解決したい」「こうなりたい」という意図を大事にし、それに沿って提案や指導を行います。例えば、「軽く扱われないようにしたい」「上司としての品格を身に付けたい」「クライアントから信頼を勝ち取りたい」など、シンプルなものでもいいでしょう。
中には「専門家に丸投げすれば、知らない自分に変身できる」というサービスもありますが、責任あるポジションを担う女性なら、「丸投げ」より「自分の現状や意図を理解しておく」ことを自分でできる限りしておくことのほうが成功します。
必ずしていただきたいのは、まず「なりたい自分」「与えたい印象」をしっかり認識することです。「自分を他人にどう見せたいか?」という意識したうえで、そのための「最善の振る舞い」を選ぶ、能動的な姿勢こそが大切です。「エグゼクティブ・プレゼンス」を身に付ける人に、受け身の姿勢は似合わないのです。