マルチ取引の年代別相談件数
 「必ずもうかる」という言葉につられ、逆にお金をだまし取られた――。
 そんなマルチ商法(連鎖販売取引)に関する20代の相談が突出している。2022年には成人年齢が18歳になり、借り入れ契約などを自由に結べる人が増える。被害の拡大を危ぶむ声もある。
 近年は大学内で勧誘されるケースも相次いでいる。埼玉県内の男子大学生は20歳になったばかりの17年夏、友人から「いいバイトがある」と言われ、30歳代の男を紹介された。
 バイトは中国の通販サイトの商品を国内で転売する内容。ノウハウ取得のため男の会社と50万円でコンサル契約を結ばなくてはならないが、会社に知人を紹介して新たなコンサル契約が結ばれれば10万円が支払われる、という内容だった。
 大学生は「50万円もの金はない」と断ったが、男は「500万円した」という腕時計を見せながら「必ずもうかる」と熱弁を振るった。結局、大学生は消費者金融でお金を借りて契約。しかし、その2日後、男とは連絡が取れなくなった。
 勧誘された人が新たな買い手を誘い込むことでマージンが稼げるマルチ商法。それに関する相談が国民生活センターに例年、全国で1万件前後ある。18年度は9759件で、年代別の最多は4割を占める20代だ。
 消費者問題に詳しい貞松宏輔弁護士(埼玉弁護士会)は「悪徳業者は成人になったばかりの人たちを積極的にターゲットにしている」と指摘する。社会経験や知識が乏しい一方、借り入れやローン契約で使えるお金が一気に増え、親の同意なしで契約ができるようになることが影響しているという。22年4月の改正民法施行で成人年齢が18歳になれば被害はさらに拡大するおそれがある。
 被害に遭った場合などは、消費者ホットラインの「188」や埼玉弁護士会の法律相談センター(048―710―5666)が相談に応じる。
 ただ「被害金を取り戻すのは簡単ではない」と貞松弁護士。裁判で勝訴しても相手側に支払い能力がないなど回収できないケースも多く「とにかく相手側にお金を支払う前によく考え、周囲の人に相談することが重要です」と話している。(釆沢嘉高)