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 中年を襲う意外と知られていない病気のリスク。「本当は怖い中年の病気」第4回は、水ぶくれを伴う発疹とともに動けないほどの強い痛みに襲われる「帯状疱疹」だ。

 この帯状疱疹、病気自体はよく知られており、「過労気味の上司などがこの病気で倒れた」なんて話はどの職場でも耳にすることだろう。

 だが、日本人の3人に1人が発症し、後遺症が残ることもあると聞けば、初耳の人も多いのではないだろうか?

 世田谷そのだ皮膚科院長の園田広弥氏は、帯状疱疹のリアルをこう語る。

◆50代から発症率が急激に上昇

「そもそも帯状疱疹の原因は、『水痘・帯状疱疹ウイルス』という水ぼうそうのウイルスです。幼少期に感染することで水ぼうそうとして発症しますが、治った後もウイルス自体は体内に潜んでおり、免疫力によって活動が抑えられた状態にあります。しかし、加齢やストレスによって免疫力が低下することで、ウイルスが暴走。神経に沿って皮膚まで達し、発疹や強い痛みを引き起こすのです」(園田氏・以下同)

 この「水痘・帯状疱疹ウイルス」は日本の成人の9割以上が体内に保持しているため、ほぼ誰にでも発症のリスクがある。

「そのトリガーは免疫力の低下であるため、特に50代から発症率が急激に高まります。帯状疱疹患者の約7割が50歳以上であり、日本人は80歳までに約3人に1人が発症を経験すると言われています」

 帯状疱疹の症状自体は1カ月ほどで収まる。だが、その後も数カ月から長い時で数年間、痛みが残る後遺症にも注意が必要と園田氏。

「約2割の患者さんが、帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行すると言われています。また、まれに視力の低下や難聴、めまいなどの合併症も引き起こし、最悪の場合、失明に至るケースもあります」

◆ワクチンによってリスク軽減が可能

 こんなにも身近で恐ろしい帯状疱疹。予防法はあるのだろうか?

「ストレスのかからない生活習慣など免疫力の低下に気をつけることはもちろんですが、早期治療が有効ですので、痛みを伴う発疹を見つけたら、できるだけ早めに受診してください。また、近年は50歳以上を対象にワクチンを使用した予防接種を行っています。だいたい7000円~1万円で、有効期間はおよそ10年。リスクを完全に防ぐものではありませんが、発症率が半減、後遺症の重症化率も軽減されます」

 一度発症した人は免疫がつき再発しづらくなるというが、それでも数%は再発のリスクがつきまとうという帯状疱疹。万全を期すならワクチンの接種が有効か。
〈取材・文/日刊SPA!取材班〉

【園田広弥氏】
世田谷そのだ皮膚科院長。皮膚科専門医。筑波大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、がん・感染症センター、都立駒込病院、国立病院機構相模原病院など国内トップレベルの専門病院で皮膚科診療に従事し、’16年に開院。