地方公務員の退職金、平均でいくら?
公務員の約8割は地方公務員
本題に入る前に、地方公務員の人数などの全体像をイメージしてみましょう。平成30年4月1日の公務員数は約332万人。うち約83%にあたる約274万人が、都道府県・指定都市・市区町村(一部事務組合等を含む)の自治体に属する地方公務員です。総務省「給与・定員等の調査結果等」によると、平成30年4月1日現在の職員数と構成比は次のとおりです。
・都道府県……約139万人(約51%)
・指定都市(※)……約34万人(約13%)
・市区町村他……約135万人(約49%)
※指定都市とは人口が50万人以上の「区」を持つ政令で指定された市で、都道府県とほぼ同じレベルの権限を持ちます。
また、部門別の職員数と構成比は以下のとおりです。
・一般行政……約91.9万人(約33.6%)
・教育部門……約101.3万人(約37.0%)
・警察部門……約29.0万人(約10.6%)
・消防部門……約16.2万人(約5.9%)
・公営企業等会計部門……約35.4万人(約12.9%)
職種には、事務職(行政事務、学校事務、警察事務、消防事務)や資格・免許職(福祉、保育士、保健士、栄養士)、警察官、消防官、技能職(土木や農林水産など)などがあります。
地方公務員の給与水準をはかる「ラスパイレス指数」
ラスパイレス指数とは「全地方公共団体の一般行政職の給料月額を同一の基準で比較するため、国の職員数(構成)を用いて、学歴や経験年数の差による影響を補正し、国の行政職俸給表(一)適用職員の俸給月額を100として計算した指数(総務省「給与・定員等の調査結果(平成26年)」)のことです。ざっくり言えば、ラスパイレス指数が100を超えていれば国家公務員より給与が高く、100を切っていれば国家公務員より低いということです。
ラスパイレス指数は都道府県>指定都市>特別区>市>町村
平成30年4月1日現在の地方公共団体の一般行政職のラスパイレス指数は、平均が99.2で都道府県は100.1、指定都市が100.3、特別区100.1、市が99.1、町村が96.4でした。都道府県と指定都市、特別区は国家公務員とほぼ同水準の給与となっています。因みに平成29年4月1日のラスパイレス指数は平均が99.2でした。詳細は、都道府県(100.2)>指定都市(99.9)>特別区(99.6)>市(99.1)>町村(96.4)です。▼地方公共団体のラスパイレス指数(平均/最高/最低)・ 都道府県:100.1/神奈川県:102.5/鳥取県:95.3
・ 指定都市:100.3/静岡市:103.0/大阪市:96.9
・ 市区町村: ―/静岡県熱海市と三島市:103.6/大分県姫島村:79.6
地方公共団体は、普通地方公共団体と特別地方公共団体に大別されます。それぞれ次のようなものが属し、給与体系や諸手当制度なども異なります。
・普通地方公共団体……都道府県、指定都市、市町村
・特別地方公共団体……特別区、地方公共団体の組合、財産区、地方開発事業団
退職金の平均支給額は都道府県より市区町村のほうが高い
都道府県・指定都市・市区町村の公務員のうち、平成29年4月1日~平成30年3月31日に退職した人の退職手当の平均支給額を、総務省「給与・定員等の調査結果(平成30年)」をもとに見てみましょう。以下に職種別の平均支給額を挙げました。( )内は最高額を支給した地方公共団体名と金額です。
▼都道府県(47団体)・全職種:約1122万円(秋田県:約2080万円)
・一般職員:約1255万円(三重県:約1986万円)
・一般職員のうち一般行政職:約1485万円(三重県:約2162万円)
・教育公務員:約1109万円(大分県:約2184万円)
・警察職:約1748万円(熊本県:約2064万円)
▼指定都市(20団体)・全職種:約1426万円(広島市:約2025万円)
・一般職員:約1449万円(広島市:約2019万円)
・一般職員のうち一般行政職:約1833万円(京都市:約2178万円)
・教育公務員:約1629万円(新潟市:約2162万円)
▼市区町村・全職種(1563団体):約1477万円(埼玉県滑川町:約2458万円)
・一般職員(1547団体):約1491万円(埼玉県滑川町:約2458万円)
・一般職員のうち一般行政職(1390団体):約1702万円(北海道上富良野町:約3146万円)
・教育公務員(153団体):約1155万円(大分県大分市:約2373万円)
ラスパイレス指数では「指定都市>都道府県、特別区>市>町村」でしたが、退職手当の平均支給額は「市区町村>指定都市>都道府県」になっています。市区町村の一般行政職は、トップこそ約3146万円ですが、2番~17番までは2400万円台です。
60歳定年退職者の退職金は平均2250万円前後
では、60歳で定年退職した人だと、退職手当の平均支給額はどれくらいでしょうか。こちらも職種別に見てみましょう。( )内は最高額を支給した地方公共団体名と金額です。▼都道府県(47団体)・全職種:約2219万円(福島県:約2347万円)
・一般職員:約2194万円(静岡県:約2360万円)
・一般職員のうち一般行政職:約2236万円(長野県:約2416万円)
・教育公務員:約2235万円(兵庫県:約2377万円)
・警察職:約2218万円(香川県:約2381万円)
▼指定都市(20団体)・全職種:約2243万円(千葉市:約2321万円)
・一般職員:約2185万円(千葉市:約2292万円)
・一般職員のうち一般行政職:約2325万円(静岡市:約2469万円)
・教育公務員:約2319万円(相模原市:約2428万円)
▼市区町村・全職種(1232団体):約2083万円(埼玉県小川市:3847万円)
・一般職員(1227団体):約2083万円(埼玉県小川市:約3847万円)
・一般職員のうち一般行政職(1003団体):約2217万円(千葉県成田市:約3063万円)
・教育公務員(38団体):約2180万円(大阪府吹田市:約2485万円)
ご覧のように、60歳定年退職者(全職種)が受け取った退職手当の平均支給額は、都道府県は約2219万円、指定都市は約2243万円、市区町村は約2083万円です。
一般行政職で見てみると、都道府県が約2236万円、指定都市は約2325万円、市区町村は約2217万円で、指定都市>都道府県>市区町村の順です。
定年退職金は国家公務員より都道府県と指定都市が高い
常勤職員のうち60歳以上の定年退職手当は平均2204.5万円、行政職俸給表(一)の定年退職手当は平均2149.2万円です。一方、地方公務員の一般行政職の定年退職者の平均退職手当は、都道府県が約2236万円、指定都市は約2325万円、市区町村は約2083万円。都道府県は国家公務員を87万円、指定都市は176万円超えました。順位は、指定都市>都道府県>国家公務員>市区町村の順に低くなりました。指令都市が都道府県や国家公務員より高いのはなぜなのでしょうか。
※地方公務員の退職手当の詳細は総務省の「平成30年 地方公務員給与実態調査結果の状況」を参照してください。
(文:大沼 恵美子(マネーガイド))
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