多少お金がかかっても必要ならば思い切って乗ったほうがいい場面はあります(写真:A_Team / PIXTA)
「10年後もお金に困ることなく食べていく自信はありますか?」
そう聞かれて「はい」と即答できる人は少ないかもしれません。この10年間を振り返るだけでも世の中は激変しました。この先も内外の変化に対応してずっと稼ぎ続けるのは、簡単なことではありません。

「お金に困らない人」と「お金に困る人」の違い

私はセミナーや講演会などを通して経営者や会社員、士業、公務員などさまざまなタイプのビジネスパーソンと接していますが、学歴が高かったり、社内で実績を出していたり、難関資格を持っていたりしても、お金に困っている人を大勢見てきました。
一方で、そうした人たちと実力的には大差がないにもかかわらず、社内外で必要とされ、まわりがうらやむような年収を稼ぎ出し、お金に困らない人たちがいます。
拙著『1万2000人を見てわかった! お金に困らない人、困る人』でも解説していますが、両者の違いは周りからの評価です。実力をちゃんと評価され、「お金に困らない人」には考え方や行動原則に共通点があります。逆に「お金に困る人」とはどんな違いがあるのか。2つの例をご紹介しましょう。
●食えない人は、タクシー代を浮かす
●食える人は、タクシーに乗って時間を買う
30℃をはるかに超える暑い夏の日に、駅から徒歩30分の取引先を訪問する用事があったとします。
お金に困る人は、「もったいないから」と徒歩で訪問先に向かいます。そのため到着したときは、汗が大量にふき出して、ワイシャツもびっしょり。その姿がみすぼらしく見えれば、取引先からは軽く扱われてしまいかねません。
一方、お金に困らない人は、駅からタクシーに乗り、書類の最終チェックをしながら、余裕をもって取引先に到着。タクシー代こそかかりますが、時間を有効に使い、先方にも不快感を与えることはないでしょう。
お金に困らないためには「お金で時間を買う」という発想も必要です。
以前、こんなこともありました。ある大事なアポイントに向かうため電車に乗っていたところ、車両事故が発生。アナウンスによると、いつ運転再開するかわからないとのこと。そこで、私は瞬時に電車を降りて、駅前のタクシーに飛び乗りました。
もちろん、「運転再開を待つ」、あるいは「アポイントの相手に『電車が遅れていること』を伝える」という選択肢もありましたが、私は迷わず電車を降りました。
結果、タクシー代はかかりましたが、時間どおりにアポイント先に到着し、相手に迷惑をかけることはありませんでした。

「自分でやればタダになる」は時間の浪費

時間を大切にする人は、ひとりで仕事を抱え込むこともしません。自分ひとりで頑張っても出せる成果は小さいと知っているからです。チームを組んで働くと、時間が短縮できるうえ、レバレッジ効果により、少ない労力で大きな成果も期待できます。つまり、時間を買っているのです。
仕事の結果にレバレッジが利く、だから大きな仕事もできるのです。アイドルグループも、解散してソロ活動を始めた途端、人気が落ちていくことがよくあります。これはチームでいるからこそ、相乗効果が発揮されている典型的なパターンです。
お金に困らない人は、時間が有限であることもわかっています。だから、自分にしかできない仕事に専念するために、最初に「やらないこと」を決めるのです。
たとえば、営業畑のサラリーマンが独立した場合、経理業務に時間を割くよりも、仕事を取りにいくことに集中したほうが効率のいいことは言うまでもありません。経理のために人を雇うか、アウトソーシングするのが賢いやり方です。これは、お金で時間を買うという延長にある考え方です。
逆にお金に困る人は「すべて自分でやればタダになる」と思い、仕事を抱え込みます。しかし、これは時間の浪費につながるのです。あなたが1日かかる仕事も、プロなら1時間で終わるかもしれません。それならば、お金を払ってでもプロに頼んで、その分、自分は得意分野の仕事をするべきです。
「やるべきことに加えて、やらないことを決める」
自分でやらないと決めたことはお金を払ってでも他人にやってもらう。お金に困らない人はそうした考え方をつねにしています。仕事の役割分担をすることで、より多くの成果につながるのですから。
●食えない人は、保険に入って安心する
●食える人は、健康のために時間とお金を使う
私は数年前、健康診断で「肺に影がある」と言われました。
「ガンかもしれない……」
最悪の事態が脳裏をよぎりました。ふだんはポジティブ思考の私ですが、精密検査の結果が出るまでの期間は完全にネガティブ思考になっていたのです。何をするにもやる気が出ず、悪いことばかり考えていました。
幸いなことに検査の結果はガンではありませんでしたが、私はこのことで健康の大切さを思い知らされました。健康でなければ仕事もできず、お金に困る生活に陥ってしまう、と。
暴飲暴食を繰り返してきた私は、この出来事をきっかけに「深酒はしない」「食事は腹八分」、そして「できるだけ早く寝る」と決め、さらに毎朝4キロのジョギングを自分に課し、これまで5年続けています。
お金に困らない人は「健康でなければ仕事もできず、お金を稼ぐことはできない」といった現実をつねに意識しています。そのため食生活には気を遣い、運動やトレーニングも欠かしません。
健康維持のために時間を確保し、惜しみなくお金も使います。たとえば、スポーツクラブでプロのトレーナーに自分に合ったプログラムをつくってもらったり、毎年人間ドックに入ったり。健康のためにお金を使うことは健全な投資です。それによって仕事が安定し、長期にわたって働けるわけですから。
保険をかけておけば健康を失ったとき金銭的な補償が受けられます。人によっては「健康維持に時間とお金を使うくらいなら、最初から保険に入ったほうが手っ取り早い」と思われるかもしれません。はたして保険にお金を使うことは有効的な投資と言えるでしょうか。

食生活や健康に気を遣うのは「効果的な投資」

保険会社出身のファイナンシャルプランナーに聞いた話だと、加入者に支払われる保険金は掛け金全体の30~40%程度だそうです。残りのおおよそ60~70%は保険会社の取り分となります。
これは宝くじなどのギャンブル以上に保険会社が儲けをとっている計算になります。ちなみに、宝くじの控除率はおおよそ50%。控除率とは運営者側である胴元の取り分となる「テラ銭」のことです。宝くじの売り上げの約半分は発行している自治体などに入るのです。
宝くじを「愚か者に課せられた税金」と言う人までいます。だからお金に困らない人は宝くじ売り場に並んでいる行列を見て、冷ややかに笑うのでしょう。これは競馬もパチンコも同じ。ギャンブルは胴元が必ず儲かり、賭ける側は長い目で見れば必ず損をするシステムなのです。
保険をギャンブルとは言いませんが、誰でも確実に大きなリターンを得られるものではありません。お金に困らない人はギャンブルなどに浪費をせず「投資」にお金を回します。投資と聞いて株式投資などをイメージする人も多いでしょうが、将来のために使うお金はすべて投資です。
たとえば、お酒を飲むという行為。部下や取引先にお酒をご馳走してコミュニケーションが取れ、その後、部下が一生懸命に働いたり、取引先からの新たな仕事を受注できたりすれば、それは立派な投資と言えます。一方、いつもの仲間とだらだら飲む酒や、ひとりでルーティーンのように飲む晩酌は単なる趣味、嗜好品と言えるでしょう。セミナーなどに参加しても、その後、得たことをアウトプットせず仕事に使わなければ、これまた投資ではなく浪費になります。
先のファイナンシャルプランナーは次のように断言しています。
「保険金をたくさんかけるくらいであれば、食生活や健康に気を遣うほうが断然効果的な投資になる」と。だから、お金に困らない人はみな健康を意識しているのです。











考える事をかえる必要が確かにある!