墓は非課税――。そんなふうに思い込んでいる人も多いのではないか。だが、非課税なのは相続税や固定資産税であって消費税ではない。複数の費用で構成される墓の一部には消費税がかかる。葬儀の費用も同じで、一部が課税対象になっている。予定通り10月に消費税が10%に上がれば、値上げをする事業者も出てきそうだ。墓や葬儀など終活に関するお金と税金について調べた。
■建立に2~3カ月、購入は6月までが有利
「お墓の購入は6月30日までがおすすめ」「お得に墓石を購入できるのは6月末まで」。墓について検索するとこんな表示が出てくる。一般的に墓を建てるには通常2~3カ月かかる。3月末までに契約していれば、引き渡しが10月以降になっても消費税は8%で据え置きだが、それ以外は10月から10%になる。8%のうちに墓を建てようと思ったら、6月までに決めておけば間に合う可能性が大きい。一般に墓は高額なため、2014年4月に消費税が8%に上がったときには前年の年末から年明けにかけて駆け込みで購入する動きがあった。「今回も6~7月になると同じような動きがあるのではないか」と、墓の動向に詳しい鎌倉新書の執行役員・田中哲平さんは指摘する。
まずは墓の価格体系を見てみよう。いわゆる「一般墓」と呼ぶ通常の墓の場合、「永代使用料」と「墓石建立費用」、そして「管理料」の3つの合計となっている。「墓を買う」と言うが、実は買うのは墓石であって、土地は墓地の管理者から借りる。その土地を使用する権利の取得料を永代使用料という。「土地の貸し付けは非課税なので、永代使用料に消費税はかからない」と税理士の浦田泉さんは話す。続く墓石建立費用は、墓石本体や外柵などに使う石の代金や彫刻などの加工費、そして基礎工事や石碑工事などの施工費だ。これには消費税がかかる。そしてもうひとつの管理料は、草刈りや清掃、共同使用物の整備・修繕などにかかる費用で毎年支払う。これも課税対象だ。
■墓石建立費の平均は120万円
鎌倉新書の18年度の調査によれば、永代使用料の平均は55.2万円、墓石建立費用は119.9万円となっている。この金額で計算すると課税対象となる墓石建立費の増税分は2万円強となる。管理料は年間数百円から1万数千円と金額が小さいので増税分も少ない。この墓石建立費と管理料については増税で値上がりする可能性もありそうだ。
寺院墓地や民間の霊園に墓を建てるときは通常、永代使用料は寺院や宗教法人に払い、墓石建立費は石材店などに払う。中には総額表示しているところもあり、その場合は買った人は石材店に全額支払い、永代使用料の分は石材店から寺院に渡る。総額表示の価格が上がるかどうかは、石材店などの判断次第だろう。ちなみに改葬の際の墓石の撤去、土地を更地に戻すための工事なども税金がかかる。納骨の費用も同様だ。石材店などに墓のカロート(納骨室)のふたを開けてもらう際の手数料ともいえる。一方でその際に僧侶に払う読経料などは税金がかからない。課税・非課税は支払先によって変わってきそうだ。
■人気の樹木葬や最新式の納骨堂は?
最近では樹木葬の墓や納骨堂も人気を集めている。主に寺院墓地などの一角にある都市型の樹木葬の墓は、1人用、2人用といった形で価格表示している。内訳は「永代供養料」と「諸費用」などだ。首都圏などで樹木葬の墓地を展開するアンカレッジ(東京都港区)社長の伊藤照男さんは「永代供養料はその寺院が続く限り供養するというもの。樹木葬の墓の費用の多くを占める」と説明する。「永代供養料も宗教行為に対するお金なので税金はかからない」(税理士の浦田泉さん)。一方の諸費用には、墓石代わりに埋めるプレートの彫刻代や骨つぼの料金などがあり、こちらは通常消費税がかかる。値上げするかどうかは業者の判断によるだろう。
都市部などで増えている機械式の納骨堂も、費用は総額表示が一般的になっている。費用の多くを占めるのはやはり永代供養料で税金はかからない。納骨堂や樹木葬の墓では、このほかに「護持費」や「護持会費」などと呼ぶ、寺院の維持・管理などに必要なお金を継続的に払うことが多い。年間に数千円から1万数千円程度だが、これらはお布施や寄付などと同じ扱いとされ、原則として税金はかからない。
■僧侶に渡す「お布施」は非課税
葬儀についても見てみよう。これも3つの費用に分類される。ひとつは、祭壇や棺(ひつぎ)、骨つぼや生花飾りといった葬儀本体にかかる「葬儀一式」、ふたつ目が式場の使用料や飲食、香典返しなどの「実費」、そして最後に読経や戒名などに対して寺院や僧侶に渡す「お布施」となっている。このうち、お布施には税金がかからない。それ以外の葬儀一式と実費には消費税がかかる。飲食の費用に関しては、弁当を購入して会場に持ち込んだ場合は軽減税率が適用されそうだが……。お布施以外の2つは通常は葬儀会社にまとめて支払い、そこから個別の事業者に渡るケースが多い。「10月以降は、仕出し料理や弁当などを扱う店や、祭壇などを飾る生花店といった仕入れ先の状況によっては、値上げする可能性もある」と葬儀の動向に詳しい鎌倉新書の小林憲行さんは指摘する。
相続税や固定資産税も確認しておこう。国税庁のホームページには「相続税がかからない財産」が列挙されており、その中に「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝している物」とある。生前に建てる墓を「寿陵」と呼ぶが、これも対象になるので、生きているうちに墓を買うのは相続税対策のひとつとされる。もちろん、墓は実物でないとダメ。墓を購入するために用意していた現金は課税対象になる。国税庁の文章には「ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかる」という続きがある。金のおりんなどに相続税がかかることがあるのは、このただし書きに該当するからだろう。固定資産税については、個人が建てた墓にはかからない。借りた土地の上に建てるので、所有者は個人でなく土地の持ち主になるからだ。
最後にペットの墓について触れたい。近年は犬や猫などかわいがっていたペットが死ぬと、個別に墓を建てて弔うケースがある。ペット専用の霊園や区画も人気だ。実は永代使用料や永代供養料に税金がかからないのは人間の墓だけ。ペットの場合は原則として税金がかかる。最近見かけるようになった飼い主とペットが一緒に入る墓では、ペットが「副葬品」の扱いになるため、税金はかからないという。
(土井誠司)
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