2019年に在日ベトナム人は30万人を超えると予測されております。これほどまで多くのベトナム人が日本に入国しているのはなぜなのでしょうか。
 第3回のコラムは、『なぜ日本に?』をテーマに、弊社が現場で感じ、それを元に考えられる理由をいくつかご紹介させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
(株)asegonia 代表取締役 井上義設

 24年の間、一貫して『人』に従事。新卒でアデコに入社、31歳の時にキッザニア東京創業メンバーとして、子どもたちの未来を育む事業に従事。その集大成として、外国人のキャリア形成に従事すべく2013年にasegoniaを創業。少子化が現実的になっており、確実に外国人の力が必要になります。日本とアジアに架け橋を創り続け、真の共生社会を目指して参ります。

ベトナム人留学生が日本を目指す3つの理由

日本文化への興味関心が強い
 ベトナムは親日国家であり、日本への興味・関心を強く抱いてくださっているというのが根底にあります。
 あまり知られていないのですが、ベトナムでは2015年より国策として、第一外国語の中に「日本語」という選択肢を追加しました。これにより、小学3年生から日本語を学ぶ環境が与えられたわけです。日本に対しての興味・関心がますます強まっていることは事実だと思います。
日系企業就職への期待が高い
 ベトナムは高度経済成長ともいえる成長を続けており、個人所得の伸びと教育熱が高まり、日本企業も数多くベトナムに進出しております。
 その経済成長の波に乗り、学生たちも海外への留学が急増しております。アジア圏内で、親交の深い日本留学を経て日本企業へ就職という実利的な目標もあります。日本企業がベトナムへの進出を拡大する過程で、日本で就職することや、進出している日本企業への就職を希望するのは自明の理であるといえます。
外貨獲得の狙い
 日本と比べると、ベトナムはまだまだ所得が低く(物価も安い)、約5倍の通貨価値の差があります。アジアの中でGDPで見ても、まだまだ発展段階といえるでしょう。とはいえ、ベトナム経済は順調に伸びており、毎年国民の年収は上がっているのも事実です。未来が明るいベトナムですが、昭和の日本人が口にした「アメリカン・ドリーム!」のアメリカがベトナムにとっては日本。日本企業に就職することで、ベトナム現地企業への就職では得られない外資企業(日本企業)収入を得られる「ジャパニーズ・ドリーム!」があるわけです。
 また、日本滞在中の留学生は、週28時間のアルバイトが許可されており、その収入を得る狙いもあります。
 総じていえば、日本に憧れを持ってくれて、語学を学ぶことに力を入れ、外貨を稼ぎ、日本の良い文化をベトナムに持ち込みたい傾向が強いと思います。「日本で成功してやる!」 「日本に留学した経験を生かして母国を豊かにしたい!」「家族が豊かな環境で暮らせるよう、日本で働いて仕送りをしたい!」 等々、彼らはさまざまな思いで日本に向かってきてくれているのです。

留学生アルバイトのキャリアパス

 入国した留学生たちはどのようなキャリパスを描くのでしょうか。
 弊社では、ベトナム人雇用のコンサルティングをさせていただく際に、次のピラミッドを多用します。

 多くのベトナム人は、片言の日本語が話せる状態で日本に入国し、働きながら学び、学びながら働き、日本語力をつけていきます。例えると、まるで出世魚のように、このステップを上がっていくわけです。
 実は、キャリアパスの上位にコンビニエンスストアがあり、われわれが街でよく見掛けるコンビニ外国人スタッフは、日本語レベルとしては上位に位置します。この次のステップとして、正社員、事務職、通訳翻訳などを目指すわけですが、まだまだ、募集自体が少なく、狭き門となっております。
 最近では、この中間にアパレルや小売販売等に就く方が増えてきました。訪日ベトナム人の増加傾向もあり、飲食業のみならずベトナム人ショップ店員が増えてきているのです。

卒業後の就職の門戸は狭いという現実

 福田康夫内閣が打ち出した「留学生30万人計画」は2020年までの目標達成を目指しており、アジア各地などで日本留学フェアが開催され、大学や日本語学校などの教育機関が出展しています。「特定技能」等の改革も行い、留学生、単純労働者を増やす傾向にあります。
 しかしながら、学費や生活費などの負担が大きく、留学生はアルバイトをして生活費を稼ぎながら、勉強しているのが実態です。文化の違いもあり、生活環境で困惑することも多々あります。このように苦労して生活を続けても、卒業後の就職の門戸は狭いという出口のない留学、雇用とも見てとれます。
 こうした背景を踏まえ、弊社としては真の共生を目指し、外国人雇用の機会と、採用の枠を広げる活動を展開しております。
 次回は「ベトナムから見た日本の真価」とし、読者の皆様の視点をベトナムに移し、リアルな情報をお伝えします。それでは、また次回をお楽しみにください。

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