年収400万円▼1日1000円のお小遣いを巡る攻防戦
30代 デザイナー 花形康輔さん(仮名)
■ビットコインを数万円購入したのが始まり
「もともとギャンブル好きで、学生時代から競馬やパチンコにハマっていました。ギャンブル仲間からなんとなく仮想通貨が儲かりそうということを聞き、ビットコインを数万円購入したのが始まりです」
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
デザイン会社勤務の花形康輔(仮名・30代)さん。会社が東京に用意した家賃0円のアパートに住む。現在、借金生活を続けながら、単身赴任で一人暮らしをしているギャンブラーサラリーマンだ。妻と子供は東海地方に暮らしており、単身赴任が終わるまでに「堂々と見せられる家計簿にしたい」という。
果たして、その夢は叶うのか――。
「仮想通貨を始めた2018年夏は、ビットコインがどんどん値上がりしていた。もともとギャンブラー体質だったこともあり、大きく儲けるために消費者金融で50万円を借りました」
しかし、18年末の高騰以降はビットコインをはじめとして、仮想通貨はダウントレンドが続き、花形さんの損失額はどんどん膨らんでいった。
「それでも逆転を狙ってまた借り入れたおかげで、借金は増える一方になってしまいました」
現在、借金は総額200万円弱。月給ではとても簡単に返せない額だ。
■仮想通貨も借金も「妻には秘密にしたまま」
「毎月の返済額は3万5000円。妻からもらっている月3万5000円のお小遣いを返済に充てていますが、当然仮想通貨のことも借金のことも妻には秘密にしたままです」
ジリ貧の生活は続いたままで、出費はこれ以上抑えられないというレベルまで抑えているという。
「一人暮らしなので食費はレトルト食品がメーン。たまに外食するときも牛丼屋しか行かないですね。会社の飲み会はすべて断っています。大好きだった競馬も軍資金がないので一切やらなくなりました」
現在の貯金額を聞くと、消費者金融から借り入れたお金で、手をつけていないものが15万円ほどあるそう。
「でも、毎月切り崩しており、このままいけばその金もなくなります。消費者金融では満額まで借り入れており、これ以上の増資は無理。今は投資用に買ったはずのビットコインを現金化して生活費にしています」
■妻に相談することはできないのだろうか
思い切って妻からもらうお小遣いの額を増やしてもらわない限り破綻は目に見えているが、妻に相談することはできないのだろうか。
「妻に伝えても、今の借金について何の解決にもなりませんから。心配もかけたくないですし……」
現在勤めるデザイン会社は、転職してきたばかりということもあり、給与が上がる見込みはない。副業として友人に頼まれてイラストレーターの仕事を受注することもあるというが、まれに報酬が10万円を超す案件が入るが、基本的には不定期で2カ月に1回、5000円程度の仕事が入ればよいほうだという。
「副業でも稼げない以上、もう1度消費者金融から借り入れようと思っています。これまで毎月返済してきたのでそろそろ借り入れできる枠が増えるかもしれないんです」
取材中、スマホをしきりに気にする花形さん。乱高下が続くビットコインの価格がどうしても気になるようだ。まだ逆転を狙っている?
「狙っていますね。たまにチャートを見ていると妻から電話がかかってくることがありますが、ドキッとして電話に出られず無視しています。ラインで『ごめん、今仕事中なんだ』と伝えて、その後はどうやって金を借りられるか考える。最後は、損しちゃったことはもうどうにもならないな、と自分にいい聞かせています」
■「とにかく金がほしい。一発逆転したい」
そんな花形さん、3歳になる息子がいる。妻が勝手に学資保険に加入したというが、それでも何かと金がかかってくるだろう。そのことについてはどう考えているのか。
「そんなの考えているわけないでしょう。自分のことで、せいいっぱいですよ」
食費や家賃など、切り詰められる点はすべて切り詰め、ギャンブルをやめた今、新たな収入がない限り花形さんの家計が明るくなることはほぼないと言ってよいだろう。
「自分にはギャンブルの才能がなかったのかもしれませんね。1度儲かったときにやめておけばよかった」
とにかく金がほしい。一発逆転したい。そう繰り返す花形さんだった。
▼FUKANO’S POINT仮想通貨は税制メリットも少ない。奥さんに頭を下げて借金を一括返済しましょう
これだけチャートが崩れてしまっては、今から仮想通貨で儲けるのは難しいでしょう。税制上のうまみも株と比べると少ないです。また、ギャンブル依存症から借金依存症に発展するケースもあります。借金しながら1年半もやってダメなら恐らく花形さんには投機の才能はないでしょう。諦めることを強くお勧めします。さて、どうやって借金を返済するかです。奥さんに内緒のままにするなら、副収入を上げて、コツコツと借金を返済していくしか道はありません。ただ、消費者金融は金利が10%を超えることがほとんどです。そう考えると、やっぱり奥さんに頭を下げ、200万を貸してくれる親戚や知り合いを探して、一括返済して再スタートです。
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深野康彦
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルリサーチ代表。『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』『ジュニアNISA入門』など、著書多数。
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■▼妻に内緒で消費者金融では満額借り入れ
(編集者・ライター 鈴木 俊之 撮影=村上庄吾 写真=iStock.com)
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