AI(人工知能)の発達によるリストラのリスクがある時代だからこそ、既に組んでいる住宅ローンの返済不安を払拭する対策を整理しておきましょう。また、リストラ目前でマイホームを購入する場合の注意点もおさえておきましょう

リストラされる前だからこそ、できることを考える

社内でリストラが始まったときに、既に住宅ローンを組んでいる場合の対策を考えてみます。マイホームを売却する、失業手当や貯金の取り崩しで対応する、金融機関に相談するということを検討することになります。

既にリストラされてしまった場合とは異なり、準備するための時間があることから、この時間を有効活用することで、住宅ローンの返済不安を払拭するための対策の選択肢を増やしていくことが重要となります。

具体的には、マイホームを売却する場合であれば、すぐに売れるかどうかは売り出してみないとわからないため、売却して、住宅ローンの月々の返済よりも安い賃料の賃貸住宅へ住み替えようとしても、実現するまでの時間がかかってしまうという問題点はありますが、リストラされる前から売却の手続きを進めていれば、実現できる可能性は高くなるといえるでしょう。

仮に、思いのほか、希望のタイミングよりも早く売却できた場合でも、契約上の交渉で引渡時期を調整することも可能なため、引越を急かされるといった心配もありません。

また、リストラされる前から転職活動を進めていれば、切羽詰まった状況での収入減を前提とした再就職ではなく、収入レベルを維持したままの再就職の可能性も高くなります。そのため、そもそも、住宅ローンの返済不安を感じることすらないのかもしれません。

ここまでは、既に住宅ローンを組んでいる場合の対策を考えてきましたが、次に、リストラが目前に迫るタイミングで、マイホームを購入する場合の3つの注意点についてもおさえておきましょう。

リストラ目前時にマイホームを購入する場合の注意点 その1

なんといっても、住宅ローンの融資実行のタイミングには、絶対気を付けなければなりません。なぜならば、下手をすると、違約金といった余計な負担が増える危険性があるためです。

具体的には、金融機関の住宅ローン審査時のみならず、融資実行時(多くの場合は、物件の引渡しのタイミング)まで、前職に在籍していなければならないことに注意しましょう。仮に、在籍していないことが判明してしまうと、融資されないことになります。そして、引渡日に残代金を用意できなければ、白紙解約ではなく、売買契約上の違約となるため、違約金も用意しなければならないといった事態に陥ることとなります。

特に、建築中の新築マンションの購入の場合など、住宅ローンの審査から融資実行までの期間が長いパターンについては、購入の選択肢から外さなければなりません。

リストラ目前時にマイホームを購入する場合の注意点 その2

次に、いくら借りるのかということで、借入金額にも注意を払いましょう。やむをえず、再就職で収入減となってしまう場合、現在の収入で借りられる上限額で住宅ローンを組んでしまうと、月々の返済に苦しむということが容易に想像できてしまいます。

さらに、将来的に売却する場合にも、債務超過(住宅ローンの残債が、売却金額を上回ること)となる可能性が高いため、売りたくても売れないという状況に陥ってしまう危険性があることを知っておかなければなりません。

リストラ目前時にマイホームを購入する場合の注意点 その3

最後に、失業保障付き住宅ローンも、特約料とのバランスに注意しながら選択肢に加えてみるということです。たとえば、楽天銀行の失業保障付き住宅ローンでは、リストラなどで失業した場合、再就職まで最長6カ月間の返済が保障されます。そして、この保障を受けるためには、借入金額100万円当たり800円(年間)の特約料となるため、2,000万円の借入の場合であれば、800円×20=16,000円(年間)となります。

なお、保障は借入日より3カ月を経過した日の翌日より開始されるため、特に、リストラが目前に迫っているタイミングでは、この待期期間の存在に注意しなければなりません。

長期の住宅ローンでは、常に、返済不安が付きまとうが…

今後、AI(人工知能)の発達によって、ごく一部の職業以外、安定した職業とされるものは、どんどん減っていくのかもしれません。そのため、特に長期の住宅ローンでは、常に返済不安が付きまとうことにもなりかねません。もっともこれは、住宅の購入を否定して賃貸住宅を推奨するものではありません。

なぜならば、住宅ローンであれば返済という名目ですが、賃貸住宅であれば賃料という名目にすぎず、名目が異なるだけで、「住まいに対しての適正な支出」という共通の観点で、住まいに対するお金について、考えていかなければならないためです。

そして、時には、FPなどの専門家に相談しながら、ご自身のライフプランを見直してみることが重要となるでしょう。
(文:大島 浩之(マネーガイド))