平成25年4月施行の「改正高年齢者雇用安定法」により60歳定年後に継続雇用で働き続ける人が増えています。労働条件や雇用形態、仕事内容、給与水準など、継続雇用されている人たちの実情をレポートします

8割超が定年後も継続雇用されることを希望している

平成30年度に60歳になる人の特別支給の厚生年金の支給開始は62歳です。60歳定年の場合には「改正高年齢者雇用安定法」(平成25年4月施行)により、年金受給開始年齢の62歳までは継続雇用で働き続けることができます。

▼年金支給開始引き上げスケジュールと経過措置適用年齢との関係
平成28年6月1日~平成29年5月31日に60歳定年に到達した人の84.1%が継続雇用され、希望したが継続雇用されなかったのはわずか0.2%でした(出典:厚生労働省「平成29年高年齢者の雇用状況」(平成29年10月27日発表))。

・継続雇用された者……84.1%
・継続雇用を希望しなかった者……15.8%
・継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者……0.2%

2016年3月、株式会社リクルートジョブズが60~74歳の男女各3000人を対象に行った「シニア層の就業実態・意識調査(個人編)」から、定年後に継続雇用されている60~64歳の人の現状をお知らせします。

5割超が正社員で働いている

一般に、定年後の継続雇用と言えば、契約社員あるいは嘱託というイメージです。ところが調査結果のトップは「正社員」。なんと5割を超えています。

・正社員……56%
・契約社員・準社員……22%
・アルバイト・パート・派遣社員……18%

継続雇用で働いている60~64歳の男性の現状をもう少し詳しく見ていきましょう。

▼継続雇用後の仕事の内容の変化:定年前と変化はない、が約8割 ・全く変化はない……45.9%(59.7%)
・あまり変化はない……31.2%(29.9%)
・半分以上の変化があった……11.7%(3.9%)
・全く別の仕事内容になった……11.3%(6.5%)
*( )内は女性。以後も同じ。

▼労働時間(定年時の勤務時間を100%とする):定年時より長い、が約半数約5割が定年時より労働時間が長くなっています。半減以下になった人は1割以下です。

・100%以上……49.8%(46.8%)
・75~100%未満……22.1%(16.9%)
・50~75%未満……21.2%(19.5%)
・25~50%未満……2.2%(7.8%)
・25%未満……4.8%(9.1%) 

▼給与水準(定年時の給与を100%とする):50~75%が5割弱定年時の50~75%に減少は48.1%、25~50%未満に減少は29.4%。反面、定年前よりアップした人が6.1%います。

・100%以上……6.1%(14.3%)
・75~100%未満……12.6%(24.7%)
・50~75%未満……48.1%(36.4%)
・25~50%未満……29.4%(16.9%)
・25%未満……3.9%(7.8%)

▼継続雇用を選んだ理由のトップ3(複数回答)・1位:職場や勤務地など環境を変えたくない……47.6%(51.9%)
・2位:今まで培ったスキルやノウハウをそのまま生かせる……47.2%(45.5%)
・3位:会社の方から継続を頼まれた……35.9%(28.6%)

以上から浮かび上がる継続雇用後の働き方は、仕事内容はほとんど変わらず、労働時間は長くなり、給与は定年前の50~75%に減少、です。働くモチベーションが下がっても致し方ない状況です。

「69歳まで働きたい」人が約4割

今後の就労で最優先するのは「勤務時間」。給与は2番手です。それに「勤務日数」、「勤務地」、「通勤時間」が続きます。

▼就労の意思・したい……39.2%
・どちらともいえない……25.6%
・したくない……35.2%

▼何歳まで?・65~69歳まで……38.5%
・70~74歳まで……36.1%
・75~79歳まで……12.2%

▼雇用形態は?・アルバイト・パート……39.8%
・契約社員・準社員……30.4%
・正社員……20.7%

▼勤務日数は?・週5日程度……36.7%
・週4日程度……30.4%
・週3日程度……24.0%

▼勤務時間はどれぐらい?・8時間程度……24.9%
・5時間程度……19.3%
・6時間程度……18.8%

▼働く理由は?・生計維持……49.8%
・自由に使えるお金の確保……36.0%
・家計の補助……34.7%
・健康維持……34.1%

▼希望の給与額・100万~200万円未満……20.4%
・50万~100万円未満……19.1%
・200万~300万円未満……17.4%

将来的に労働力人口の不足が予測されていることから、高齢者の活用が企業にとってより重要になっており、企業は、定年制の廃止を含む定年年齢の引き上げや再雇用での評価方法、給与水準の見直し、など労働環境の整備に着手しています。公的年金制度や企業年金制度の改正もちらほら目にします。人生100年時代、何歳でリタイアするか、健康と年金制度が決め手になりそうです。
(文:大沼 恵美子(マネーガイド))