内科、循環器科の専門医として、数多くの患者と日々接している医学博士の池谷敏郎氏。血管、血液、心臓などの循環器系のエキスパートとして『モーニングショー』(テレビ朝日)、『深層NEWS』(BS日テレ)などテレビにも多数出演しているが、過去15キロ以上の減量に成功し、57歳でも体脂肪率10.6%を誇ることはあまり知られていない。
このたび、その「減量メソッド」を全公開した新刊『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える内臓脂肪を落とす最強メソッド』を上梓した池谷氏に「40代でも『内臓脂肪がみるみる落ちる』5習慣」について解説してもらう。
「生活習慣」にダイエットのチャンスがある!
「ダイエットがなかなかできない」という人たちの中で、「運動する時間がつくれない」を理由にする人は、とても多いものです。
朝早くから満員電車に揺られ、夜遅くまで仕事に追われるようなビジネスパーソンにとっては、「ダイエットのために運動する時間」を確保することは、そう簡単にはできませんよね。
私は長年、血管、血液、心臓などの循環器専門医として生活習慣病をかかえる数多くの患者さんたちと接してきましたが、このような話は少なくありません。
確かに、運動不足は「内臓脂肪」が蓄積する原因の1つです。運動することはダイエットにはとても大切なことなのですが、「運動をするための時間」をわざわざつくらなくても、「ダイエット効果」を感じられる方法があります。
それは、「生活習慣」をちょっとだけ変えるだけ。家の中で、仕事中、外出先など、毎日の「生活習慣」をちょっとだけ気をつけて行うだけでダイエット効果を発揮し、「内臓脂肪」をぐんと落とすことができるのです。
では、「内臓脂肪」がみるみる落ちる生活習慣とは、どんな習慣でしょうか。いくつかありますが、ここではおすすめの「5つの生活習慣」を紹介します。
まず、「内臓脂肪」を落とす1つ目の生活習慣は、「朝は決まった時間に起きる」ことです。
「時計遺伝子」のリセットで、ダイエット効果が高まる
【1】朝は「決まった時間」に起きる
「起床時間」と「ダイエット」、一見関係ないように思われるかもしれませんが、これが大いに関係があります。
私たちは日中活発に活動し、夜は休息(睡眠)をとるという生体リズム(体内時計)が備わっています。この体内時計と、食事や運動、睡眠といった生活のリズムを同調することが、肥満や生活習慣病の予防にとって大切であることが動物実験や疫学調査から明らかになってきているのです。
「時計遺伝子」のリズムに沿った生活をすると、エネルギー代謝が高まり、筋肉の合成を促進するたんぱく質が増えることがわかっていますが、このリズムは、24時間よりやや長く、実際の時間とは少しズレが生じています。
このズレは「朝起きて太陽の光を浴びる」ことでリセットできます。人間には太陽の光を浴びることで、「時計遺伝子のリズム」と「地球の自転のリズム」のズレをリセットするメカニズムが備わっているのです。
例えば、休みの日などに起床時刻が数時間遅くなると、体内時計と普段の生活リズムとの間にずれが生じ、結果としてダイエットに支障をきたすことになるのです。
朝は決まった時間に起きて光を浴び、体内時計をリセットすることで、効率良く内臓脂肪を減らしましょう!
【2】いすに座るときは「背もたれ」を使わない
オフィスワークなどで、日中は長時間座りっぱなしという人は多いと思います。しかし、長時間の座りっぱなしは血行を悪くして、肩こりや腰痛の原因となるばかりでなく、肥満や生活習慣病にもつながってしまいます。
オーストラリアの研究機関の調査では「座っている時間が、1日4時間未満の人たちと比べて、11時間以上の人たちは、死亡するリスクが40%も高まっていた」という報告があります。
長時間座っていると、背もたれをつい使ってしまいがちですが、人間の頭の重さは成人で約5キロ。ボウリングの球と同じくらいの重さになるので、姿勢の違いで体にかかる負担も大きく違います。
まっすぐに頭を支える姿勢なら、肩や背中全体で頭の重みを支えることができるので無理がありません。しかし、背もたれにもたれかかると頭が前方に出て、首と肩に大きな負担がかかってしまいます。少しでも「座りっぱなしの弊害」を減らすために、いすの背もたれには、なるべく寄りかからないようにして、「背筋をまっすぐに保つ」ことを心がけましょう。
3つ目の「内臓脂肪」を落とす生活習慣は、ながら運動ができる「かかと上げ下げ運動」です。
「血液循環」をよくすればダイエットに効果がある
【3】「かかと上げ下げ」のながら運動
職場や日常の中でできる「最も簡単な運動」があります。それは「かかとの上げ下げ運動」です。台やテーブル、あるいは壁につかまって「ギュッとかかとを上げて、止めて、下ろす」だけの簡単な運動です。
ふくらはぎの血管は、重力に逆らって血液を心臓に送り返すために、ポンプのような働きをしています。この運動をすると、ふくらはぎの血管は圧迫と弛緩を繰り返すことになり、ポンプ機能が促進されます。
「かかとの上げ下げ運動」で下肢の筋肉を動かすことは、血液循環の滞りを解消するとともに、脂肪燃焼を促す効果も期待できます。
料理をしながら、テレビを観ながら、人を待ちながら、いつでもどこでもできます。仕事中でも、立っているとき、コピーをとるときなどにやってみましょう。電車の中でも、吊り革につかまりながら行えばいいのです。
この運動は1日1~5分、3セットほど行うのが理想的です。ちょっとの隙間時間でできるので、気がついたときに少しずつやってみましょう。
【4】いつでもどこでも「ドローイン」
もう1つ、いつでもできる「プチエクササイズ」があります。前回記事「なぜ痩せない?『お腹太りの人』が陥る5大盲点」でも紹介しました、お腹と背中がくっつくようなイメージで、下腹を凹ませる「ドローイン」です。
お腹を引っ込めたままで、呼吸は普段と変わりなく行います。お腹が気になって呼吸が止まったり、浅くなったりしがちですが、普段と変わりない呼吸になるように気をつけましょう。また、そのときは背筋を伸ばした「いい姿勢」をキープしてください。
たったこれだけのことですが、「体幹(インナーマッスル)」を鍛え、お腹ぽっこりを解消してくれる強力なエクササイズです。立っていても座っていても、いつでもどこでもできるのが「ドローイン」のいいところです。
私は、「いつも周囲の人に、自分のお腹を見られている!」という緊張感をもって、普段から意識して行っています。歩きながら行ってもOKなので、ぜひみなさんもチャレンジしてみてください。
運動のタイミングは、専門家によって意見が分かれるところですが、私は「食後30~60分に10分程度」をおすすめします。
【5】「食後30~60分に10分」程度の運動
「運動のタイミングはいつがいいですか」というのは、患者さんからもよくいただく質問です。いろいろな意見がありますが、私は「食後30~60分」にすることをおすすめしています。
理由は「血糖値の上昇を抑えるため」です。血糖値は、食後1時間前後に最も高くなります。血糖値が高くなるとインスリンが出て、血糖を細胞内に取り込みます。このとき筋肉などでエネルギーとして消費されなかった分は、肝臓に蓄えられたり、脂肪細胞にため込まれたりします。
つまり、食後のこのタイミングで運動をすれば、血中のブドウ糖をエネルギーとして使うので血糖値を下げることになり、脂肪が蓄積されにくくなるのです。
また、「運動」というと長時間のランニングやトレーニングなどの激しい運動をイメージしがちですが、その必要はありません。軽い有酸素運動を10分程度するだけでOKです。ラジオ体操や散歩などで十分なので、食後の運動として取り入れてみましょう。
「小さな積み重ね」が「大きな結果」を出す
毎日の生活習慣、一つひとつはとてもシンプルなことですが、やるとやらないでは大違い。「小さなことの積み重ね」が、後々の結果にとても重要な意味をもつのです。
今までの生活習慣を「変える」わけですから、少々の節制は必要になります。誰でも自分が慣れ親しんだ習慣を変えるのはつらいものです。でもそのままでは一生「お腹太り」から逃れることはできません。
だから、最初は「ちょっとだけ」ガマンしてください。でも、これも続けるうちにガマンがガマンでなくなり、「習慣」になってきます。そうなったら、しめたものです。
お腹が凹めば「見た目」も若返り、「外見力」もアップし、気持ちも前向きになるものです。ぜひ内臓脂肪を落とし、「健康な体と心」を一気に手に入れてください。
「お腹太り」になりがちな40代、50代になっても、生活習慣を「ちょっとだけ」見直すだけで、内臓脂肪を減らすことは十分可能だと、私は自分自身の実体験からも確信しています。
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