たった10分で1億円を失う…カジノに狂った大富豪のスゴい負け方 5年で60億円つぎ込んだ人も
人はなぜ、カジノに狂うのか? その知られざる裏側と、大富豪たちのリアルな生態を明かすのは、マカオの日本人カジノエージェントで、著書『カジノエージェントが見た天国と地獄』がある尾嶋誠史氏だ。たった10分で1億円を失って平然としている人、5年で60億円をつぎ込み、なお懲りずにカジノへ通う人……。私たちの想像を超えた、大富豪たちの見事な「負けっぷり」を暴露する。
大富豪は負けっぷりもすごい
VIPルームのお客様になるには、まず最低でも140万円のデポジットが必要。さらに、ハイリミットでの1ゲームの最低の賭け金が14万円から……。
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正直、信じられない金額が日々やりとりされているのですが、そこに集う人々のお金の使い方は半端ではありません。
ここからは、僕自身が体験した話、また僕と同じようにジャンケットに勤める周囲の人から聞いたものすごいお金持ちの話をお伝えしたいと思います。
ジャンケットのエージェントとして、僕はこの6年ほどの間、年間300人近いお客様をアテンドしてきました。
どのお客様も予算は最低1億円。多ければ年間100億円単位のお金を使って帰るような方々も決して少なくありませんでした。
1枚のチップの金額が、1万香港ドル(約14万円)、10万香港ドル(約140万円)、なかには100万香港ドル(約1400万円)というものも。
そんな金額を気軽にやりとりしていれば、あっという間にお金はなくなってしまいます。結果、ついつい勝負に熱くなり、自分の資産を全部カジノに突っ込んでしまうような方もいらっしゃいました。
僕がアテンドしたお客様のなかでも、最速でカジノで大金を失った大富豪といえば、おもちゃメーカーを経営していた李さんでしょう。
李さんの年齢はおよそ40代半ば。細身でいつも柔和な笑みを絶やさない、見た目はいたって普通の男性でした。
しかし、彼はとにかくカジノが好きで、マカオにやってくると酒よりもゴルフよりも、まずカジノという人でした。
そんなわけで、李さんをアテンドするときは、どこにも寄らずにまずホテルへとチェックイン。
そして、ホテルに荷物を預けてから、すぐにカジノに繰り出すというのがおきまりのパターンでした。
でも、ある日のこと。
いつものようにホテルのロビーで待つ李さんを残して、僕が彼の代わりにチェックインの手続きをしにいきました。チェックインが終わって、10分後に戻ってみると、どうやら李さんの様子がおかしい。
どこかふてくされたような顔をして、ぶつぶつ文句を言っています。
「李さん、どうしたんですか?」
チェックイン待ちをしている間に、ホテルの従業員が何か失礼なことをしたのか、もしくはなにか僕のサービスで気に入らないことがあったのかなどの不安が頭をよぎり、思わず聞いてみました。
すると、李さんは怒りながら
「今日はまったくついてない……!」
とつぶやいています。
たった10分で1億円を失う……
「ギャンブルをやる前から、今日はずいぶん弱気だな……」と不思議に思っていたら、李さんの奥さんが笑いながら「この人、今日もう負けちゃったのよ」と彼の肩を叩いています。
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どうやら詳しく話を聞いてみると、僕がチェックインをしに行っている時間すらも惜しかったのか、待ちきれず、李さんは1人で先にホテルのロビー近くにあったVIP用のカジノルームに行き、そこで大金を賭けたもののいきなり大負けしてしまったとか。
しかも、その金額は1億円……。
僕がチェックインしているたったの10分の間に、なんという早業。
数々のお客様をアテンドしてきましたが、これまでにそんな短時間でそんな大金をギャンブルに突っ込んで負けてしまった人を見たことがなかったので、しばし唖然としてしまいました。
それでも、李さんは悪びれる様子もなく、
「多分、タイミングが悪かったんだ。もう一度巻き返してやる」
と言って、またカジノに戻っていきました。
結局、李さんはマカオに3日間滞在していましたが、その間に彼がカジノで負けたお金はなんと30億円ほど。
ものすごく運が悪かった……としか言いようがないほどに、見事に負けていました。
その後も李さんは僕のお客さんとして何度もマカオに来てくれたのですが、そのたびに、何億円ものお金を賭けては、負けて、「次こそは勝ってやる!」とつぶやきながら帰っていくのでした。
彼と出会ってから数年経ちますが、これ以上の負けっぷりの良いお客様は、まだ見たことがないかもしれません。
中国は非常に金融システムが発達しているため、自分が銀行に預けたお金は、24時間365日、いつでも動かすことができます。
ただ、中国本土からマカオへは、お金の持ち出しに制限があり、現金はもちろん、中国で現金を銀行に預けて、それをマカオで引き出す場合であっても、上限は100万元(約1700万円)だといわれています。
1700万円というと、すでにそれだけで普通の感覚では「多いじゃないか」と思われると思いますが、日ごろ何十億円というお金を動かしているVIPたちの常識からすると、まだまだ1700万円では少なすぎる……。
そこで、着金確認システムの利点を活用して、手持ちの現金を使い切ってしまった場合は、多くのお金持ちたちはすぐにジャンケットの口座を通じて地下送金し、資金を引き出しています。
5年で60億円つぎ込んだ人も
しかし、逆に考えると、いくらでも地下送金をかけられるため、自分の資産のギリギリいっぱいまでギャンブルに投じることができるという怖い状況でもあります。
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いくらでもお金を引き出せるそのせいで、多くのお客様はついついカジノでお金を使い過ぎてしまう傾向にあります。
ですが、そんななか、僕のお客様の1人である中国人の陳さんは、とても理知的な人で「毎回カジノで使うお金をきちんと決めて来てそれを守る」というしっかり者でした。
彼は中国の地方の建設関係の社長さんで、年齢は40代中盤くらい。見た目はスーツが似合いそうな、普通のビジネスマンです。
この十数年ほどは中国バブルで公共工事の受注が立て続けに入るなど、建築関係の需要が高まった結果、陳さんの資産は何十倍にも増え、カジノ通いを始めることにしたそうです。
カジノ通いを決めた際、彼が自分のなかのルールとして決めたのは、「いかに勝負に負けて熱くなっても、自分の手持ち資金を超えたら、即、撤退する」ということ。
このルールが守れなくて、想定していた資金の何倍、何十倍も使ってしまう人が多いなか、そんな陳さんのストイックな姿勢と強靭な精神力にはいつも感心していました。
さらにすごいのがその軍資金の金額です。
カジノ用の軍資金として彼が毎回準備していたのが、なんと3億円。
しかも、彼は年に4回マカオに来ていたので、単純計算すると年間12億円のお金をカジノで使っていた計算になります。
そのうえ、残念なことに陳さんはとてもギャンブルが弱い人で、きっちり3億円を軍資金としてもってきては毎回カジノに入り浸るものの、全部きれいさっぱりすってしまう。陳さんは5年ほど前からマカオに通っているのですが、そのなかで一度も彼が勝っているところを見たことがありません。
5年間に毎年12億円使っていたと考えれば、最低でも60億円をカジノにつぎ込んでいるはず。
そんな大金を失っても、いまだに平然とカジノに通い続ける陳さんを見るたびに、カジノの持つ謎の魔力を感じるのでした。
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