富士吉田市のピオーネ(山梨県富士吉田市提供)
 高級食材から酒、家電やパソコン、金券までもが、実質負担2000円でもらえる。そんな謳い文句で一大ブームを巻き起こした「ふるさと納税」に総務省のメスが入った。
 6月から始まるふるさと納税の新制度で、「返礼品の調達価格は寄付額の3割以下で、地場産品に限る」「商品券など換金性の高い返礼品は避ける」などの“改善要請”に従わなかった大阪・泉佐野市、静岡・小山町、和歌山・高野町、佐賀・みやき町の4市町を“除外”することを発表したのだ。
 これにより、返礼品への“規制”が厳格化され、魅力は激減──と思いきや、6月1日からの新制度下でも魅力的な返礼品を揃える自治体はまだ存在するのだ。
 別掲の表は『ふるさと納税ナビ』の協力のもと、同様の商品の市場価格から算出した還元率の高さで作成したランキングだ。1位の佐賀県唐津市のハンバーグ(寄付額1万円)は市場価格が1万円で、実質的な還元率100%だ。9位までが8割。ただ、これらは“3割規制”の方針に反旗を翻しているわけではない。『年収300万円からのふるさと納税』(ぱる出版)の著書のある経済アナリストの森永卓郎氏はこういう。
「総務省がいう“3割”は市町村が仕入れた価格が寄付額の30%以内ということ。市場価格がどんなに高くても、各自治体が安く調達していれば問題ないということです。なかでも食品は大量購入することで仕入れ値を抑えやすく、豪華にしやすい」
 厳しい規制のなかで、自治体側が工夫を重ねた結果、用意された返礼品なのだ。いずれの自治体も取材に対して、表中の品目は、6月以降も各自治体のHPや仲介サイトに掲載を続ける予定だと回答した。
 また「換金性が高い」として総務省が“目の敵”にしてきた金券こそ消えたが、“クーポン券”の返礼品は存在する。
 空港の所在する全国35の自治体はJALと協力して「ふるさとへ帰ろうクーポン」を返礼品として提供。利用したい空港のある自治体に寄付することで、その空港から離発着する便の航空券を実質3割引で購入できる。「自治体の名産品を味わってほしい」という名目で食事券や旅館の宿泊券も依然掲載されている。
 家電商品も健在だ。新潟県燕市の返礼品には掃除機やオーブン、コーヒーメーカー、大阪・大東市でも空気清浄機などを用意している。ただ、「還元率3割」「地場産品」の規制強化のため、以前より地味に見える。
「総務省が明確な基準を出していないので、立派な地場産業であるはずの工業製品や電化製品を返礼品から外してしまった自治体も多い。それでも探せば魅力的な返礼品はまだまだある。ふるさと納税の新制度では、これまで以上に“知っている人が得をする”といえます」(森永氏)
 新制度開始までもう間近。魅力的な返礼品の“発掘”を楽しみたい。
※週刊ポスト2019年5月31日号