PHOTOGRAPH BY ICHISEI HIRAMATSU

未来を損なう銀行たち

 2005年、ハリケーン・カトリーナは米国南部の州を襲い、36万戸の住宅ローンを一掃した。そのうち12万戸はサブプライム住宅ローンだった。これがサブプライム・モーゲージ市場の欠陥と、それらデリバティブ商品に投資した銀行間の伝染的な連鎖を露呈した最初のドミノだった。
 2008年のリーマン・ショックから10年、いままでハリケーン・カトリーナが与えた影響は過小評価されてきた。銀行、金融システム、経済が自然環境と社会の健康に本質的に関連しているという事実が見落とされてきた。金融危機の本質が環境問題や社会問題から切り離されてしまっているため、化石燃料や武器輸出といった、持続可能な未来を損なう銀行業務が、いまでも継続されているのだ。
 気候変動に加担する銀行の役割については、「孤立した資産」の問題が強調されている。これは、銀行の化石燃料資産に課した価値が膨大になる一方で、パリ協定に合意した各国政府が気候変動に対してより早く反応しはじめると、これらの孤立した資産は銀行や金融システムの不安定化を一気に招く可能性があるからだ。
 欧州政府を中心に、大気汚染の問題は喫緊の課題となっている。英国をはじめ欧州各国で進められているディーゼル車の禁止政策はその反応のひとつである。これは、銀行が投資の外部性を考慮する必要がある理由の一例である。環境と社会への影響が銀行自身にもたらす将来の金融リスクはどのようなものなのかを、銀行自らが問う時が到来している。

社会的インパクト投資

 2014年9月15日、G8社会的インパクト投資タスクフォース委員長のロナルド・コーエンは、「社会的インパクト投資 市場の見えざる心―アントレプレナーシップ、イノベーションと公益に資するファイナンス」という報告書を公開した。これは、13年G8議長国の英国によって設立されたタスクフォースの報告書である。