皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、一軒家を購入したいという30代の独身女性。ファイナンシャル・プランナーの飯村久美さんがアドバイスします

30代独身で自営業でも住宅ローンは借りられる?返済できる?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、一軒家を購入したいという30代の独身女性。貯蓄が少ないだけでなく、自営業のため収入に波があって、住宅ローンを組むことに不安を感じるというお悩みです。ファイナンシャル・プランナーの飯村久美さんがアドバイスします。

▼相談者2020さん(仮名)
女性/自営業/35歳
中部地方/借家

▼家族構成独身/1人暮らし

▼相談内容自営業で月平均50万円ほど売り上げています。経費は約25万円。独身ですが、一軒家を購入したいと考えています。予算2500万。自営業で波があるので、払っていけるか心配です。現在はシェアオフィスに住んでいるため家賃は6万円で、その中に光熱費、ネット代、雑費等は含まれています。保険は3大疾病になったら1000万円受け取れる保険で、貯金代わりにと思っています。

▼家計収支データ

▼家計収支データ補足(1)購入したい住宅について
購入時期/未定、物件価格/1900万円、諸費用/200万円、借入期間/35年、毎月の返済額/6万5000円、をイメージしている

(2)加入している保険について
生前給付保険(終身、三代疾病または死亡で1000万円)=毎月の保険料3万3000円

(3)趣味娯楽費について
洋服、化粧品、エステ、マツエク代など。仕事柄、きれいにしないといけないので、どうしても必要になる。

(4)今後の事業の見込み
毎年、少しずつ売り上げは増えているが、波があるので平均すると月50万円程度。

(5)今後のライフプランについて
相談者コメント「仕事は、一生涯するつもりです。90歳で現役の方もいます。普通に考えて、今のペースで働けるのは、70歳くらいまでと考えています。結婚は、できればしたいですが、相手がいません。出産は、考えていません」

(6)公的年金の加入状況
国民年金に加入。節税のために、小規模事業者が入れる個人年金を考えている。

▼ファイナンシャル・プランナー飯村久美の3つのアドバイスアドバイス1 自営業者の住宅ローン審査は厳しい。まずは頭金を貯めてから
アドバイス2 事業の経費も含めて支出を見直して削減を
アドバイス3 小規模企業共済よりもiDeCoで節税+年金の増額を目指す

アドバイス1 自営業者の住宅ローン審査は厳しい。まずは頭金を貯めてから

一軒家を購入したいとのこと。その積極性はビジネスをしていくうえでも、きっと2020さんのパワーになるでしょう。ただ現実は、そう簡単ではありません。

まず自営業者に対しては、住宅ローン審査が会社員よりも厳しく判断されます。たとえば、申し込み基準のひとつである勤続年数が、一般的には会社員なら1年以上で、提出する源泉徴収票は前年の1年分ですが、自営業者は営業年数3年以上ということが多く、3年分の確定申告書などが必要になります。さらに、今後も継続して利益を出せるかどうかという点も審査されるため、過去3年の利益は少しずつでもアップしていることが求められるようです。

ほかにも住宅ローンの審査には、返済比率の基準もあります。これは住宅ローンの返済額が収入に占める割合のこと。2020さんの場合、購入を希望する物件の価格があまり高額ではないようなので、この点はあまり問題がないかもしれませんが、住宅ローンを組むには売り上げではなく、申告所得を見られることを覚えておいてください。

これらのことを勘案すると、現状では住宅ローンの審査に通るかどうかという心配もあると思います。まずは事業の安定が最優先。この努力をしながら、頭金にする貯蓄を増やしてください。

アドバイス2 事業の経費も含めて支出を見直して削減を

支出の内容を拝見すると、通信費が1万2000円となっていますが、事業の支出にも通信費1万5000円が計上されています。2台使っていらっしゃるのでしょうが、通話が多い事業用は大手キャリアと契約する必要があっても、個人用は格安SIMで充分ではないでしょうか。これだけでも1万円くらい削減できるはずです。

また、趣味娯楽費の5万円というのも「仕事柄、きれいにしていないといけない」とのことですが、だとすると一部は経費とすべきものかもしれません。いずれにしても、家を買いたいのに貯蓄が少ない現状では、節約を考えたいところです。ファストファッションやフリマ、セルフエステなどを利用したり、少し工夫をしてみてください。

もうひとつ気になるのが保険料です。「貯金代わりに入っている」とのことですが、それにしても25万円の家計の中に占める割合が13%というのは多すぎです。収入に対する保険料の割合は、5~6%が一般的。半分程度にし、どうしても補償額を確保したいなら、共済などの保険料の安いものへ加入しましょう。これで1万5000円は貯蓄を増やせるはずです。

アドバイス3 小規模企業共済よりもiDeCoで節税+年金の増額を目指す​​

​​ 自営業の方は国民年金なので、満額を受給できたとしても年間で77万9300円(平成30年度の場合)、1カ月にすると約6万5000円ですから、個人年金で将来に備えるというのは正しい判断です。ぜひ、お考えの通りに始めてください。

検討していらっしゃる小規模企業共済は選択肢のひとつですが、20年以内の任意解約だと元本割れしてしまいますし、ほとんど増えません。それに比べると、iDeCo(個人型確定拠出年金)の方が増やせる可能性が高い商品があります。掛金が全額所得控除になる、運用益は非課税、受取金は一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金控除の対象になるというメリットは同じですから、iDeCoを検討してみてはいかがでしょう。

ただし、iDeCoは60歳以上、小規模企業共済は65歳以上で、180カ月以上掛金を払い込むか廃業しないと受け取ることはできません。2020さんの場合は、まだまだ貯蓄を増やさなくてはいけない時期ですから、少額から始めてください。また、iDeCoの手数料は金融機関によって異なりますし、運用商品は自分で選び、リスクも自分で負うことになります。始めるにあたっては、制度の仕組みや商品の内容をしっかり理解してから始めましょう。

相談者「2020」さんから寄せられた感想

細かいところまでありがとうございました。自分でも保険料は高いかなと思っていたので、掛け捨ても検討します。iDeCoの方がいいんですね。小規模企業共済を考えていたので、とても勉強になりました。ありがとうございました。

教えてくれたのは……
飯村 久美さん
 
ファイナンシャルプランナー。FP事務所アイプランニング代表、All About家計簿家計管理ガイド。金融機関在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。自らの経験から、お金の正しい知識を身に付けることが「やりたいこと」や「夢」の実現につながる一方で、「生活を守る手段」であると痛感し、FPとして独立。2006年、FP事務所アイプランニング開業。これまでの家計診断は1000世帯。「日本の家計を元気に」をモットーに活動中。

NHK「日曜討論」、日本テレビ「ヒルナンデス!」 などメディア出演多数。著書に「シングル女子の今日からはじめる貯蓄術」(成美堂出版)、「ズボラでもお金がみるみる貯まる37の方法」(アスコム)、「子どもを持ったら知っておきたいお金の話」(中経出版)など。

取材・文/鈴木弥生
(文:あるじゃん 編集部)