39歳ローン残高220万、貯金が増えず借金返済が厳しい
貯蓄が少なく、仕事もキツく。ローン返済と貯金をどう考える?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、カードローンの返済が大きな負担となり貯蓄が増えない、実家暮らしの39歳の女性会社員の方。ファイナンシャル・プランナーの八ツ井慶子さんがアドバイスします。▼相談者ハブさん(仮名)
女性/会社員/39歳
関東/実家
▼家族構成父(無職/70代)、母(無職/60代)、祖母(無職/90代)
▼相談内容カードローンが残り220万円あり、月4万円の支払いや、車検やクルマの維持のため毎月2万円の貯蓄、オタク趣味に年間10~20万円、クレカの支払い毎月1万円などで貯金がなかなかできません。 趣味をなくして、美容にかかる費用(美容院、基礎化粧)を減らせばとも思いますが、それぐらいしかモチベーションを上げるものがなく……。
貯金が少なく、結婚もするつもりはありません。いつまで働けるかも分かりませんし、これから一人で生きていくのに不安です。早期返済、貯金をするにはどうしたらよいでしょうか? 宜しくお願いします。
▼家計収支データ
▼家計収支データ補足(1)ボーナスの使いみちについて
自動車ローンのボーナス払い10万円×2回(今後はない)、残りは日用品、趣味(10万~12万円)、クレジットの支払い等でほぼ使い切る。
(2)カードローンについて
現在の残高223万円、完済予定2023年10月、利率8.0%、返済額・月4万円。カードローンは、まず保険適用外の手術で90万円を借り入れ、その返済が2万円。さらに月3万円のクレジットカードリボ払いもあり、その上、2014年からの自動車ローン(返済期間5年、毎月2万6000円、ボーナス月10万円加算、金利2.3%)もあったので、昨年銀行系カードローンにまとめた。
(3)住宅について
将来も実家に住み続ける予定。実家は15年ほど前に建て替えているため、リフォームの必要性は今のところなし。
(4)相続について
実家はおそらく相談者が相続するとのとこと。
(5)趣味について
趣味は年に数回のライブ・イベントに行くこと。家庭の問題などで心療内科に通院していたが、この趣味により笑うことができるようになり、外出もでき、交友関係も広まった。
(6)加入保険の保障内容について
・本人/医療保険(終身保障終身払い、入院1万円、手術・女性疾病・先進医療などの特約あり)=保険料8634円
・本人/がん保険(がん入院1万円、診断給付金100万円)=保険料2836円
・本人/定期保険(保険期間65歳、死亡保障100万円、受取人・父)=保険料3034円
・本人/養老保険(保険期間60歳、満期金450万円)=保険料1万38円
・本人/介護保険(終身保障終身払い、介護年金10年/年60万円、一時金60万円、65歳から確定年金で受け取ることも可)=保険料6031円
・本人/個人年金保険(60歳から10年確定、年金額72万円)=保険料1万303円
(7)働き方、職場について
(相談者コメント)「目を使い、重いものを持つ作業が多く、持病で腰痛・ひざ痛があるので体力的にもいつまでできるのか不安。また、老眼になると仕事がしにくい。今は厚生年金に加入していますが、何件か転職をしていまして10年くらいは加入していませんでした。定年は多分60歳だったと思います。退職金はあります。勤続10年までは1年で12万、10年以上勤務するともう少し増えると聞いています。定年後の雇用延長はできたと思います」
▼FP八ツ井慶子からの3つのアドバイスアドバイス1 いま優先すべきは貯蓄よりローンの返済
アドバイス2 「2年半で完済」を目標に
アドバイス3 無理に「一人で生きていく」と考えない
アドバイス1 いま優先すべきは貯蓄よりローンの返済
いろいろ不安を抱えられている、その最大の要因は重いローンの返済だと思います。したがって、「早期返済、(そして)貯金をするには」と質問されていますが、同時に目指すのではなく、ハブさんが現時点で優先したいのは貯蓄よりローンの完済です。貯蓄額が少ないことへの不安は理解できます。ローン完済も大事だが、もっと手元資金を増やすべきというアドバイスも、当然あるでしょう。とは言え、ハブさんの借り入れは金利8.0%。これは、メガバンクの定期預金に預けた際の利息の800倍に相当します。貯蓄に回す資金をローンの返済に充てた方が、金利面ではるかに有利です。結果的に「オトク」ということです。
貯蓄が少なく心配する人は、よく「もしも何かあったら怖い」と言います。しかし、ハブさんは実家に住み、さほど無駄なく家計管理をし、ちゃんと正社員としても働いている。ならば、本当にお金が足りなく困ったら、そのときに、あらたに借りてもいいのでは。少なくともハブさんの現状においては、不確定な何かに備える方が「もったいないな」と私は思います。
アドバイス2 「2年半で完済」を目標に
具体的には、手持ちの貯蓄はそのまま置いておき、クルマの車検、税金用としての貯蓄2万円を返済に回す。これで、毎月の返済は6万円。また、ボーナスから支払っていた自動車ローンの返済分20万円も、今後はカードローンの返済に回す。これで、年間で返済に回せるのは92万円。これで、おそらく2年半後には完済できるでしょう。クルマの維持費はボーナスからと、厳しいかもしれませんが、毎月の支出を見直す中で捻出する。それでも2年半の我慢です。繰上返済に手数料が発生しないのなら、毎月少しずつ返済しましょう。そして今後は、借りるのではなく「お金が貯まったら買う」を肝に銘じましょう。
悩ましいのは保険です。本来なら、貯蓄に等しい養老保険、個人年金保険もその保険料を返済に充てることを検討するのですが、養老保険は満期金450万円、個人年金保険は年金総額が720万円と、ともにローン残高より大きく、保険料から判断して予定利率の高い時期に加入したものだと推測できます。これらは大切に今後も貯蓄としてぜひ続けてください。
また他の保険も、ハブさんにとっては「安心料」が含まれているのかなという気がします。支払う保険料が安心料として納得できる、または保障を削ると不安だ、というのであれば、このまま継続もアリだと思います。少なくともしばらくは保険には手をつけず、現状のまま継続でいいでしょう。
アドバイス3 無理に「一人で生きていく」と考えない
返済最優先と先に述べましたが、気になるのは心療内科に通われていたということ。また「最近、笑えるようになった」とも。ライブ・イベントや美容などにかかるコストが、ハブさんを精神的に支えているのなら、ローンの早期返済を目指していても、むやみに削らなくてもいいかもしれません。原因や詳しい症状はわかりませんが、今後、他のことでも笑えるようになったら、そのときあらためて検討しましょう。貯蓄については、返済が終わったときがスタートライン。当然ですが、収入の範囲内に支出をおさえれば(現状おさまっています)、自然と貯まっていきます。焦ることはありません。ローン完済後、その支払いに回していた資金を全額貯蓄できるとすれば、年間92万円ですから、43歳から60歳までの17年間で1564万円。退職金を200万円として、その他、養老保険の満期金と個人年金保険の年金総額を加算すれば、2934万円。ボーナスからの貯蓄額をもう少し増やせば、老後資金として3000万円超を用意することも十分できるでしょう。
貯めるポイントとしては、ローンは組まないこと。ローンは将来の収入をあてにした先取り支出です。いわば、貯蓄の基本である先取り貯蓄の真逆の行為なのです。また、長く働くこともとても重要。持病があり、身体的に厳しい職場なのであれば、今後どうすべきか。転職活動なのか、勉強などのスキルアップなのか。ともあれ、いろいろな人と積極的にコミュニケーションをし、多くの人とつながっておくことが今後に役立つのではないでしょうか。
最後に「一人で生きていくのに不安です」とありますが、仮に生涯独身だとしても、だから「一人」というわけではありません。バブさんには家族もいれば知人、友人もいるはず。近所の人もそう。人は、人の力を借りなければ生きていきません。苦しければ頼ればいいんです。ということは同時に、苦しい人を見かけたら助けることも大事だということです。
単身者が急増することで怖いと感じるのは、誰の力も借りず一人で生きていく代わりに、誰にも手を差し伸べない。そんな人が増えてしまうのでないか、ということ。人には得手不得手があります。補い合ってこそ、心豊かに生きていけるのではないでしょうか。そう考えて行動する方が、必要以上に不安を抱えずに済むと思います。
相談者「ハブ」さんより寄せられた感想
返済しながら貯金をしようかと思っていたのですが、アドバイスを頂いたように、早期のローン返済を目標に頑張っていこうと思います。自分の考えだけでは片寄ってしまい、どのようにした方が正しいのか分からず困っていたので、アドバイスがとても助かり励みになりました。ありがとうございました。教えてくれたのは……
八ツ井慶子さん
ファイナンシャル・プランナー。大学卒業後、大手信用金庫に入庫。本当にお客様にとっていいものを勧められる立場になりたいとの思いから、個人相談が中心のファイナンシャル・プランナーとして独立。近著に『ムダづかい女子が幸せになる38のルール』(かんき出版)と『サラリーマン家庭は"増税破産"する! 』(角川oneテーマ21)がある。テレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。All Aboutマネーのガイドを務める
取材・文/清水京武
(文:あるじゃん 編集部)
続きは朝日新聞デジタル
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