金融広報中央委員会は2018年11月9日、「家計の金融行動に関する世論調査(2018年)」を公表しました。2人以上世帯の金融資産保有額は平均値で1151万円と、前年と増減はなかったものの、金融資産保有世帯だけに限ると、前年比で210万円減少の1519万円でした

2018年の調査では、貯金をもっている世帯の貯蓄が減少している?

金融広報中央委員会は2018年11月9日、「家計の金融行動に関する世論調査(2018年)」を公表しました。2人以上世帯の金融資産保有額は平均値で1151万円と、前年と増減はなかったものの、金融資産保有世帯だけに限ると、前年比で210万円減少の1519万円でした。前年と比較して減少となったのは2年振りのことですが、100万円を超える減少は6年振りのことです。2人以上世帯の内容から見ていきましょう。


2人以上世帯が保有する金融資産の保有額の平均値は、1151万円と前年と増減はありませんでした。中央値は450万円と前年の380万円から70万円の増加となりました。一方、金融資産を保有している世帯だけに限ると、その平均値は1519万円と前年より210万円もの大幅な減少となりました。平均値も787万円と前年から213万円減少しています。

図2は、金融資産を保有している世帯だけのデータになります。

金融資産保有世帯において、現在の金融資産残高が1年前と比較して「減った」と回答した世帯は28.4%(前年24.4%)と4ポイントの上昇、金融資産が「増えた」と回答した世帯は22.2%(前年28.6%)と6.4ポイントの減少となりました。


金融資産残高が増加した世帯では、その理由について「定例的な収入が増加したから」、「定例的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから」が40.4%、27.9%(各前年33.6%、25.2%)と上昇しました。「株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから」、「配当や金利収入があったから」は、14.5%、10.7%(各前年14.7%、10.0%)でしたので、資産効果よりも収入増、貯蓄額増が残高を増やした要因といえそうです。

一方、金融資産残高が減少した世帯では、「定期的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」が39.1%(前年39.3%)、「耐久消費財(自動車、家具、家電等)の購入費用の支出があったから」が34.7%(前年28.9%)、「こどもの教育費用、結婚費用の支出があったから」は30.4%(前回31.9%)でした。目立って増えたのは耐久消費財の購入ですが、何だか腑に落ちません。

ちなみに金融資産残高を減らした世帯の割合が最も多いのは、収入が1000万円以上1200万円未満でした。

貯金を保有している世帯の金融資産の中身は?

金融商品別の構成比をみると、預貯金(郵便貯金を含む)は43.9%と前回の54.1%から10.2ポイントの大幅減少となりました。金額に直すと前年の937万円が667万円に減少しているのです。預貯金の割合が全体50%を切ったのは、統計をとり始めて初めての出来事である気がします。

債券・株式・投資信託の有価証券の構成割合は19.2%と、前回の18.0%を1.2ポイント上昇しました。債券、投資信託は構成割合を減少させたものの、株式だけが増加して全体を引き上げました。有価証券全体では株高の恩恵にあまりあずかっていないようです。


一方、構成割合を大きく増やしたのは生命保険です。前年は16.7%に過ぎなかったのですが、今回は22.4%と5.7ポイントも増やしているのです。保険の予定利率は低下傾向にあるのに、その割合が増えているのはやや謎ですが、1つ考えられるのは銀行で毎月分配型投資信託の販売自粛があったことから、その分「貯蓄型の生命保険」に販売を注力したのではないかと推測されます。

NISAを保有している世帯における平均保有額は198万円と前年の183万円より15万円増加しています。その歩みは緩慢ですが、順調に「貯蓄から資産形成へ」と動き始めていることが窺えます。2018年から始まった「つみたてNISA」ですが、その残高も27万円あります。

残高上は「貯蓄から資産形成へ」と進んでいるように見えますが、金融資産構成を前年と比較して「現金や流動性の高い預貯金から、長期運用型やリスク資産に振り向けた」とした世帯は6.2%(前年6.4%)と0.2ポイント減少。反対に、「長期運用型やリスク資産から、現金や流動性の高い預貯金に振り向けた」世帯は5.0%(前年4.9%)と0.1ポイント増えています。実際は、一部の世帯が積極的に投資を行っているだけで、全体では投資を行う世帯はやや減少という状況のようです。
(文:深野 康彦(マネーガイド))