不動産投資のプロが教えるサラリーマンのための「勝てる不動産投資」のポイントとは?
今の収入を底上げするため、退職後の人生のため、将来を見越したさまざまな理由から「投資」を考えている人は少なくないだろう。数ある投資の中でも近年、特に注目されているのは「不動産投資」だ。

そんな不動産投資のプロが、一般の不動産投資家のために専門家ならではの不動産の見方やポイントを紹介した一冊が『超実践 不動産投資のプロ技』 関田タカシ著、彩図社刊)』。
著者は、大手不動産売買仲介業者、マンション管理業者、学生寮運営業者、一棟売買仲介、一棟買取業者と渡り歩き、自身も不動産投資プレーヤーをしている人物だ。

本書では、不動産業者でありながら、自らも「買って」「持って」「売って」という不動産投資にも取り組む著者が、プロとして培ってきた知識と経験を余すところなく紹介している。本書から不動産投資の「正解」への道のりを歩むための考え方やポイントをいくつか紹介していこう。

■出口戦略として「買う前に売ることを考える」

個人向けの不動産投資では、「家賃収入を得る(インカムゲイン)」ばかりが注目されるが、著者は「出口戦略」として買う前に売ることを考える「売却時の利益を得る(キャピタルゲイン)」の視点も必要だと説く。

融資がつくから買う、良さそうな物件だから買うといった、安直な「買う」というスタートからの考え方ではなく、「〇〇円で売れる→ならば□□円で買おう」と考え、「〇〇円で売れる」というアタリを付ける。これが「出口戦略」だ。

たとえば、年間の賃料収入600万円、都心から少し外れたエリアにある築浅の木造アパートで考えてみよう。

年間賃料600万円として、今のマーケットなら8500万円(利回り7.0%)で売れる。
では、5年後なら利回り8%前後だろうか? 賃料が3%下落していたとして、年間582万円。8%で割り戻すと約7270万円となる。

15 年後でも、利回り9%くらいで売れる可能性がある。賃料が 10 %下落していたとして、年間540万円。9%で割り戻すと約6000万円だ。
さらに、40 年後に更地にした場合はいくらで売れるか……。

こういった物件の持つポテンシャルを把握して、シミュレーションをもとに購入するか否かを決めるのだ。実際は、将来の金融機関の融資情勢、諸費用なども考慮するが、業者から提示される「新築時の賃料での満室稼働が永続的に続くようなベストシナリオ」だけではなく、ワーストシナリオについても事前に描くことで、投資として収益の最大化、リスクの最小化を図る、これは非常に重要な考え方だろう。

■「投資用不動産の卸業者的なポジション」の不動産業者との接点をつくる

不動産投資において著者が特に重要視するのは「信頼できそうな不動産業者」を見つけることだ。

そのためには、まず「付き合う不動産業者が、業界内のどういうポジションにいるのか」を知っておく必要がある。そこで「不動産業界全体のマップ」を知っておこう。

不動産関連の業態は、「開発」「売買」「賃貸」「管理」の4つに大別できる。
投資用不動産の物件情報を得られる可能性が一番高いのは、不動産を仕入れて販売する転売事業者、売買の仲介業者といった「売買」の分野に携わる企業。特に「個人を対象にしている」「実需よりも投資用に特化している」「自分の好みの分野を扱っている」というポイントに絞っていくことが大切だ。

また、個人が良い物件を得ようと思ったら、物件の情報が集まってくる「投資用不動産の卸業者的なポジション」の不動産業者と接点を持つとだいぶ効率がよくなるという。

こうした業者との接点を作るには「セミナーへの参加」「物件問い合わせ」「個別相談やコンサルティングを受ける」と言った方法がある。Webの「不動産投資ポータルサイト」をフル活用していけば、接点の入り口を見つけることができるだろう。

■プロが実践する「不動産情報の扱い方」とは?

物件情報の収集に注力し、購入実績を積んでいくと「こんな物件が出てきましたが買いませんか?」と、どんどん物件情報が入ってくるようになる。しかし、残念なことにプロの目から見ると、そうした物件情報の「9割以上は即ゴミ箱行き」なのだという。
どれだけ良い情報が回ってきても、判断に時間が掛かれば「すべてが1点モノの不動産」は他の人に持っていかれてしまう。時間の無駄となる検討はできるだけ省き、「検討に値する物件」について、情報を精査して、いかにスピード感を持って判断できるかが不動産投資の成否につながる。

例えば、著者の本業の仕入営業では「更地の土地情報」「求める物件種別外」「価格(利回り)が合わない」「古過ぎる」といった情報は、即ゴミ箱行きにするという断捨離基準があるという。

不動産投資だけに限った話ではないが、「情報」はやはり重要だ。

例えば、投資用不動産の情報収集をするため、プロもGoogleマップを活用しているというが、そこにもプロならではの「使いこなし度合い」がある。

ストリートビューや3D画像を使うのはもちろんだが、Googleマップでは「過去のストリートビューを見る」という機能があることを知っているだろうか。建物の大規模修繕のビフォー・アフターの比較や、新築物件の場合だと以前はどのような環境であったのか等、簡単に把握できるこの機能は、Webで物件を見る上で有効な手段なのだ。

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情報の入ってくるルート、紹介してくれる人物はたくさんいるに越したことはない。ただ各々の物件の精査自体は自分自身で納得できるまで行うことが大切だ。

物件の種別によって特徴はあるが、どれが駄目、どれが良いではなく、「物件が持つポテンシャルより安く買うことができるかどうか」がとても大きなポイントになる。
その物件ポテンシャルの見極めをするために必要なテクニックが本書にはわかりやすく書いてある。大家体験記が羅列された有象無象の不動産投資本とは一線を画する、実践書だ。
「投資は自己責任」と言われるが、リスクを減らして投資の「正解」の道を歩みたいなら、一読する価値はあるだろう。

(ライター:大村 佑介)