今後数年で、経済格差はますます拡大すると思われます。そこで、ちょっとした未来予測をしてみました。

日本はどうなるの?未来予測を書いてみます

今後数年で、経済格差はますます拡大すると思われます。そこで、ちょっとした未来予測をしてみました。

2030年の社会

2030年。華々しく開催された東京オリンピックも、懐かしい過去の思い出となって早10年……。

日本の人口は1億1500万人まで減少し、生産人口の減少でGDP(経済成長率)も下落しているが、東京都心だけは輝いている。品川周辺は、2020年に品川-田町間で開業した山手線の新駅や、2027年に品川-名古屋間で開業したリニア新幹線の影響などで再開発が進み、特需に湧いている。晴海、勝どきの周辺も、オリンピックの選手村として建設された住宅約6千戸が分譲マンションとして売り出されたため、人口が急激に増え、活況を呈している。

しかし、これはあくまで東京都心だけの話。首都圏でも、都心から離れたエリアは人口が急激に減少している。神奈川、千葉、埼玉でも家は余るようになり、地価は下落、資産価値の目減りも続いており、中古の戸建ては500万円でも買い手がつかない状況だ。

郊外のマンションも悲惨なケースが増えている。老朽化したマンションを建て替えようにも、建て替えにかかる費用の拠出を渋る世帯が多く、建て替え協議が難航しているのだ。

首都圏以外の地方経済はますます地盤沈下が続き、行政サービスを維持できない限界集落が急速に増加。車を運転できなくなった高齢者世帯は、買い物難民・通院難民と化している。地方自治体は、経済特区による企業誘致やサービス効率化のためのコンパクトシティなどを推進しているが、税収不足もあって思うように進まない。知恵の働くいくつかの自治体が、ネット企業・農業法人の誘致やふるさと納税による収入増などで健闘しているくらいだ。

ローン破綻、年金破綻、医療費破綻が続出

住宅ローン市場も転換期を迎えた。日銀による金融緩和は出口が見い出せず、国債格付けは悪化。そのため国債価格が下落し、金利は上昇しつつある。
史上最低金利を更新した2014年と比べると、住宅ローンの金利は3%も上昇した。当時の金利の安さに飛びつき変動金利型で家を買った世帯は返済苦にあえぎ、住宅ローン破綻者の続出が社会問題になっている。

65歳以上のいわゆる高齢者は3600万人を超え、対人口比でも3割を超えた。そんな人口動態の変化によって、年金財政は改善どころか悪化の一途だ。年金支給開始年齢は68歳に引き上げられ、社会保険料負担額は年収の3割にも到達。税金を合わせると給料から4割も天引きされる。

にもかかわらず年金支給額はどんどん減っていき、サラリーマン世帯でも夫婦合わせて月15万円。自営業の世帯では月8万円を下回る。そのため高齢者の貧困や生活保護世帯の急増が社会不安となっている。

医療費の自己負担割合は現役世代が4割、高齢者でも2割に上昇し、家計への負担はさらに増す。介護保険も財政難に陥り、自治体の要介護認定は厳格化している。その結果、介護認定されずに適切な介護を受けられず、家族の負担が増して殺人事件に発展するニュースも増えた。

「デフレのほうがよかった」と言う声があちこちから

新興国の経済成長によって人件費は高騰し、かつてのようなアジア製の激安商品はあまり見られなくなっている。安いものを探すと、最近ではアフリカ産の商品が中心だ。

さらに円安は150円まで進んで輸入物価は高止まり、そこへ消費税15%が追い打ちをかける。激安で買い物ができた時代は終わり、「デフレ時代のほうがよかった」という声があちこちから聞こえてくる。原材料を輸入に頼る企業にとっても、円安は苦しい状況だ。

人口減少に伴い内需も縮小し、国内向けに事業を行う中小企業のほとんどは斜陽化が継続。あれほどバブル景気に沸いていた不動産業界や建設土木業界も、今では高い失業率に悩んでいる。オリンピックに向けた都心の大リニューアル工事が終了し、東北の復興需要も落ち着いたためだ。

さらには、米グーグルを始め、マイクロソフト、アマゾン、アップルが仕掛けるスマート革命の進展により、サービスのほとんどがネット上に移行した。それらもスマートフォンやスマートグラス、スマートウォッチに集約されるようになっている。このスマート革命は、2015年には存在した職業の3割を消滅させ、この動きに対応できない企業は淘汰に追い込まれている。

安泰と思われた自動車産業も、内燃機関にこだわり続けた国産メーカーの1社が同業他社に吸収合併され、タクシー会社も減った。電池とモーターがあればクルマが作れ、IT制御で自動運転できるようになったからだ。主要都市に誕生したスマートシティ内では、自動運転のクルマによる域内移動が主流で、タクシーは不要なのだ。

賃金は下がる一方、未婚率は上がる一方

このような状況下では、中小企業には高い給与を払う余力などなく、職には就けるが収入はほとんど上がらないという状態は改善できていない。もっとも、労働人口が減少している分、雇用環境は改善し、若年層の失業問題は低下している。しかしそれは非正規雇用の話であり、正規雇用の募集は非常に少ない。正社員になれるのは、ごく一部の優秀な人材だけ。ホワイトカラーがやっていたルーチンワークまでもが、オンラインで自動化、クラウドソーシングで外注化されているためだ。

さらに昨今では、単純作業は学習型ロボットがやるようになっており、人が不要な業種・業務が急増している。実際、2015年にソフトバンクが個人向けロボット「Pepper」を発売したのをきっかけに、知能型ロボットが増加。すでに1000万台が普及し、3000人のロボットホワイトカラー労働者が誕生した。ロボットの進化が、誰でもできる仕事を奪っている。

また、2016年から施行され残業代ゼロ法の範囲が拡大し、ホワイトカラーの残業代は消滅した。成果給という名の「定額働かせ放題」賃金が定着するとともに、ホワイトカラーの年収も2015年に比べると軒並み2~3割減となっている。その結果、30代で年収300万、40代で年収400万円代の世帯が大勢を占める状況だ。それも正社員の話であって、労働者の大半を占める非正規労働者の平均年収は150万円前後だ。

低年収者の増加と、専業主婦の優遇税制が撤廃されたことによる女性の社会進出により、未婚率も上昇。特に30代男性の未婚率が7割という事態で、収入が低いという理由から、結婚したくてもできない「男余り」現象が深刻化している――。

……という状況が本当に来るかはわかりませんが、仮にそうなっても慌てないよう、私たちは備える必要があります。
(文:午堂 登紀雄(マネーガイド))