少しでも安くおトクに!コスパ重視の「10代女子」節約のリアル
若者がお店に行く前には、LINEなどでクーポンを探すなど、少しでも安くする工夫をしていることをご存知だろうか。「10円引き」でも、わざわざ少し遠いコンビニに行くこともあるという。大人としては非合理的に感じるが、彼らにとってはそうではないようだ。
若者、特に「10代女子」の金銭感覚とお金との付き合い方の実態を、10代のSNS利用や情報リテラシー教育に詳しいジャーナリストの高橋暁子さんが、わかりやすく解説する。

「コスパ」が大切な若者世代

全国大学生活共同組合連合会の「第54回学生生活実態調査の概要報告」(2019年2月)によると、自宅生の小遣いは12780円で5年連続減少している。大学生は、節約志向でコスパが高いものが好きな傾向にあるのだ。
Instagramでも、「#しまむらパトロール」(11万3千件)「#ユニクロコーデ」(13万8千件)「#guコーデ」(9万9千件)などの、いわゆるファストファッション系コーデのハッシュタグは若者に人気が高い(数字は執筆時のもの)。
10代向けファッション誌を見ても、いわゆるファストファッションや100均を活用する特集は毎月のように掲載されている。「中学生のプチプラぜんぶ!」「全身GUだけでおしゃモテコーデ」「JKの1ヶ月の洋服代平均5191円以下でチープリ大作戦!」などは、すべて実際の特集タイトルだ。
「スマホ代がかかりすぎっていつも(両親に)叱られる」と彼女たちは口々に言う。スマホ代がかかる分、若者世代の小遣いは低く抑えられる傾向にあるようで、彼らにとって節約は当たり前のことになっているのだ。
10代女子に人気を誇るゆうこすも、「毎日のモテメイク~プチプラ編」を公開している。
プチプラとはプチプライスの略で、安いという意味だ。
「デパコス編」(デパートコスメ、つまり高額という意味)よりも再生数が多くなっており、「プチプラでどうやって可愛くなるか」に強いニーズがあることを感じる。

「ポイ活」のために友だちの個人情報入力も

デジタルアーツの「第11回未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」(2018年1月)によると、高校生の6割以上がネット上の小遣い稼ぎ経験があると回答。ポイント交換の他、「メルカリ」などのフリマサイトで不用品を販売(同約2割)したり、LINEスタンプを作成・販売(同約1割)する例もある。
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「登下校の時間とか電車待つ時間とか使ってる。休み時間は廊下でみんなでスマホをポチポチしている」とある女子高生は言う。彼女の学校は進学校であり、バイト禁止だ。そこで友達の間では、暇つぶしにもなりスキマ時間でお小遣い稼ぎができるポイントサイトの活用、通称「ポイ活」が人気だという。
少し前のデータだが、バンダイの「小中学生のおこづかいに関する意識調査」(2016年5月)によると、一ヶ月にもらうお小遣いの平均額は小学生で1227円、中学生で2143円。筆者がヒアリングしたところ、高校生で5000円程度だった。
毎月のお小遣いとお年玉をやりくりして、服やコスメを買ったり、お菓子代やプリクラ代を出したりすることになる。「お金を使う時、失敗したくない、損したくないという気持ちはとても強い」と彼女は言っていたが、それは当然だろう。
ポイ活でもらえる金額は、1分間くらいのアンケートに答えて2円分のポイントになるなどかなり少額だ。正直、時給換算するとあり得ない額だし、大人からすると時間の無駄と見えてしまう。しかし、彼女たちの可処分所得は非常に少ないので、ポイ活で得られる金額は非常に貴重なのだ。「数百円でも増えると助かる。お小遣いアップは難しい」。
必要ということはわかるが、それによって迷惑メールなどが増えるなどのトラブルも起きている。サービスによっては、換金できる金額の下限が高すぎて現実的に無理な設定になっているものもあったようだ。結局は個人情報を切り売りする行為なので、安易に入力しすぎないことが大切だ。
友達紹介でポイントがもらえることは多いが、ポイントほしさに安易に紹介している子は少なくないようだ。「お互いに紹介し合ってるから平気」と言っている子がいたが、個人情報に対する意識の低さに恐ろしさを感じる。

「メルカリならほしいものが買える」

彼女たちはフリマアプリも大好きだ。「メルカリで見て売れるものを買う。売れたらその分で新しいものが買えるから」とその子は言っていた。「メルカリならほしいものも買えるからよく見る」。
メルカリの「フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動」に関する意識調査(2018年4月)によると、「中古品を購入し、使用することに抵抗を感じるか」という質問に対して、「全く抵抗を感じない」「あまり抵抗を感じない」と答えた20代は53.5%と合計5割を超えていた。
「コスメは基本プチプラ。そうでなければメルカリ」。使いかけに抵抗はないか聞いたところ、「全く気にならないわけじゃないけど、それより新品を買って失敗する方が怖いかな。きれいに使っていそうなものなら大丈夫だと思う」と言っていた。
写真の見極めは大切で、きれいに使っていそうなものを慎重に選ぶそうだ。中古品の他、サンプルを安く購入することもある。兄が修理したイヤフォンを代わりに販売したりと、家族でうまく利用しているようだ。
ある大学生から、「要らない教科書を売ったらまだ必要で焦ったことがある」という話を聞いたことがある。稼ぎたいあまりに売るべきではないものまで売ってしまっている例もあるようだ。

ギガ節約でフリーWi-Fiを駆使

最近はTikTokやInstagramストーリーズなど動画系サービスが流行しており、ちょっと見ているだけで通信量を食ってしまう。月の後半になると通信量が上限に達してしまい、通信制限になることは多いという。
通信制限になったら使い物にならないので、仕方なくチャージするという大人は多いだろう。しかし子どもたちにはそんな余裕はないので、データ通信量、つまりギガ節約が基本だ。
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「アプリダウンロードや動画閲覧、 アップデートなどはWi-Fiのあるところでまとめてする」という話はよく聞く。 フリーWi-Fiを利用することで通信を盗み見られるセキュリティリスクはよく言及されるが、彼女たちにとってはギガ節約の方が大切なため、利用しまくっている子は多い。
この傾向は少し前から強まっており、2015年頃、法政大学や立教大学などの複数の大学で、SNSやゲームでの利用増大で学内でのインターネット利用が制限されたこともあるほどだ。学業や研究などでの利用に支障が出るほどだったためというが、最近はネットワーク環境が改善されたのか制限は解除されているようだ。
ギガ節約が身についている子は多いようで、喫茶店などの店の選択などにも影響しているという。「無料Wi-Fiがあるところは選ぶポイントになるかも。もしあったら、みんな積極的につないでいる」。
生まれたときには既にバブルがはじけて久しく、好景気を知らない若者世代だが、少ない所得でも楽しく工夫して乗り切っている。その姿勢は健気だが、セキュリティが甘 かったり、個人情報に対する危機意識が低いなど、心配になることもある。子どもにそのような傾向が見られたら、注意するようにしてほしい。