ボクのお城 見に来てニャ 備中松山城(岡山県高梁市)
岡山県中西部の高梁市にある山城、備中松山城が猫城主「さんじゅーろー」で人気を集めている。2018年7月の西日本豪雨の被災直後に住み着くと、猫目当ての客も増え、来訪者が前年比で3割上回る月も出てきた。復興の救世主として「招き猫」にかかる期待は高まる一方だ。
さんじゅーろーは毎日午前10時と午後2時、1時間ほど「城内見回り」として来訪客の前に登場し、愛くるしい姿を披露する。三重県と岐阜県から来た女性3人組は「テレビで知って会いに来た。これが例の猫城主か」と歓声を上げた。
西日本豪雨では高梁市でも多くの被害が発生。備中松山城は登城道の寸断で、2週間ほど封鎖に追い込まれた。JRの運休も響き、18年7月の来訪客数は前年比76%減まで落ち込んだ。
そんな悲運の直後、1匹の雄猫が三の丸周辺に迷い込んで住み着いた。備中松山藩出身の新選組の七番組組長、谷三十郎にちなんでさんじゅーろーと命名。猫城主の効果で徐々に客足は回復し、18年10月の観光客数は前年比3%増に。その後は19年1月まで例年並みだったが、2月以降は30%以上を維持している。
3月まで市観光協会事務局長を務め、さんじゅーろーをプロデュースした市産業観光課の相原英夫課長補佐(49)は「それほど城に興味がない人も、さんじゅーろーを目当てに来てくれるようになった」と客層の広がりを喜ぶ。SNS(交流サイト)でのPRも進み、フェイスブックのフォロワーは5千人以上。インスタグラムも15日に3千人を突破した。外国人のフォローも増えている。
SNS効果もあり、それまで海外の観光客は台湾や香港からがほとんどだったが、最近では欧米からの客が増えた。SNSの管理を担当する市観光協会の大樫文子さん(36)は「『米本土から会いに来た』という書き込みがあった」と話す。無料通信アプリ「LINE(ライン)」のスタンプの販売も好調という。
さんじゅーろー人気を生かした取り組みも増えてきた。地元の高校生が「ラテアート」を描いたコーヒーを提供。市街地では町歩きイベントの計画が進む。市内には「ベンガラの里」として知られる吹屋地区など観光資源が豊富な一方、交通の便の悪さなど改善を要する点は多い。さんじゅーろー効果をどれだけ波及させることができるか、今後の動きが注目される。
(岡山支局 沢沼哲哉)
日経参照
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