海外スマホを買ったら日本では違法な機能が…要注意の機種とは
 クラウドファンディングで望みの製品を手に入れる、というスタイルが敏感な層には定着しつつある。クラウドファンディングは、ネットユーザーから資金を調達したのちに製品を開発、量産する仕組みである。そのため、クラウドファンディングを通した金銭と製品のやり取りは「売買」ではなく、どちらかといえば「出資」に近い。

 だからこそ斬新な製品も登場するのだが、中には日本で使用したら御法度という代物も存在する。この記事では、「クラウドファンディングの罠」とも言うべき要注意の製品をご紹介したい。

◆一歩間違えれば檻の中? トランシーバー機能搭載のスマホ

 私たちの生活に無くてはならないスマートフォンだが、クラウドファンディングでも新しい機能を備えたものが出展されている。それもメジャーなメーカーのものではなく、いわゆる中小企業がクラウドファンディングを通じて資金集めを行っているのだ。中小メーカーだからといって、その製品の質を馬鹿にしてはいけない。アイディアと技術はあるが販路がないという企業が、クラウドファンディングで名を挙げているのである。

 たとえば、今年の初め頃に米国のクラウドファンディング「Indiegogo」に登場した『Doogee S90』(中国のメーカー、Doogee。すでにAmazon等でも並行輸入品が販売されている)。
 これはモジュラー型のスマホで、本体以外にもそれぞれの機能が与えられたモジュールが4種類用意されている。暗視カメラモジュール、ゲームパッドモジュール、トランシーバーモジュール、モバイルバッテリーモジュール。

 闇夜でもくっきりとした写真を撮影できる暗視カメラは、持っていれば何かと役立つものだろう。スマホでゲームをする人にとっては、ゲームパットは欠かせない。長期出張などではモバイルバッテリーがどうしても必要になる。以上の3つのモジュールに異論を感じる必要はない。

◆日本で許可なく使うと違法なトランシーバーモジュール

 しかし問題は、トランシーバーモジュールである。これは400-480MHz帯の電波を使用し、契約通信会社の回線が届かない場所でも通信を可能にするという触れ込みだが、日本では国の許可なく利用すると電波法に抵触してしまう。

 そもそも電波というものは公共財産で、我々が普段使っているスマホの電波も通信業者がライセンスを取得して運用しているものだ。時折、キャバクラの客引きが仲間との連絡用に違法無線機を使用して逮捕されたという話題を耳にするが、ノーライセンスの無線通信は他の機器に干渉してしまう上、案外あっさりバレてしまう。アマチュア無線の愛好家が、不審な通信を発見して総務省に通報することもよくある。

 もしDoogee S90のトランシーバーモジュールを日本国内で使用した場合、待っているのは留置所と裁判所である。

◆日本人も入手可能だが…

 もうひとつ、同じくIndiegogoに出展された『Ulefone Armor 3T』(中国のメーカー、Ulefone。こちらも一般販売中)をご紹介しよう。

 これは「ガテン系スマホ」というべき代物で、水没しても泥を被っても、車に踏まれても壊れないほどの耐久力を有している。過酷な環境で荒々しく使うにはもってこいの機種と言えよう。

 そしてこのUlefone Armor 3Tにも、400-470MHz帯周波数で通信できる機能が備わっている。

 もともとは建設現場での相互連絡を想定して設計された製品であるが、やはりこれも日本で使うと法律違反。もちろん日本でも現場作業員が無線機を使用している場面を見るが、あれは施工会社がちゃんと許可を取っているからできることである。

 ところが、製品の開発メーカーは必ずしも各国の法律に精通しているというわけではない。Doogee S90は、日本への配送も無料で行う。出資さえすれば、誰でも簡単に製品を手に入れることができる。

 世界中の最先端テクノロジーに直接触れることができるクラウドファンディングだが、海外のサービスは一歩間違えれば自分が犯罪者になってしまう可能性もある。それを踏まえてから、所在国の法律に接触しない製品を厳選しよう。<文/澤田真一>

【参考】
Doogee S90 - Super Flagship Modular Rugged Phone-Indiegogo
Ulefone-Triproof Digital Walkie-Talkie Smartphone-Indiegogo

PROFILE●澤田真一(さわだ・まさかず)
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』