金投資はどう始める? 実物資産のひとつである「金」の投資法、メリットとデメリットについて紹介しましょう

有事の「金」は、株や債券とは異なる値動きをする

根強い人気の「純金積立」。金に投資する入門としては、始めやすい積立商品です。しかし、「金」という現物資産に投資をすることに変わりはありません。金投資の仕組みについて、十分理解しましょう。

まずは、過去の金価格の推移をご覧ください。

▼金価格の推移
2019年6月現在、日本での小売り価格は1g5000円を超えて上昇傾向にあります(月次平均)。1980年1月に6495円の最高値をつけましたが、その後は下落し、再び上昇、高値圏でとどまっています。リーマンショックで一時急落しましたが、すぐに回復し、おしなべて2000年ごろから右肩上がりで推移しています。2013年2月に4910円をつけたあと下落したものの、直近では、4000円台半ば~5000円の間で上げ下げをしている状態でした。過去の水準から見ても、高値圏にあることがわかります。

それが、世界的な政情不安の影響で、6月に入ってからは5000円を超え、上昇を続けているのです。

日本の金価格は、ロンドンの値決めである海外ドル建て価格の動きに、為替相場の影響を受けます。そのため、グラフのように、海外ドル建て価格と日本の小売り価格にギャップが生まれるのです。しかし、基本的には、金は、株式相場が下落局面で買われ、相場が好転すれば、資金がほかの資産に流出する傾向にあり、これは世界的なお金の流れでもあります。また、金は有事に強いといわれ、世界情勢が不安定なときに、通貨の代替資産として資金が集まり、金取引は活発化します。

金取引の特殊性は、その希少価値にあります。ジュエリーなどの宝飾品や電子部品などの工業用の需要もさることながら、埋蔵量が有限であるため、無価値にはならない性質のものだからです。各国の中央銀行が資産の一部として買い入れをするのも、そのためです。

金投資をする上では、こうした価格変動の要因を理解することは重要ですが、別の一面もあります。それは「金」を持っていることの幸福感。抽象的な言い方になりますが、コインやお札は現実的な生活感がありますが、「金」は、日常的に使うものではありません。日頃の支払いに使うものでもありません。いつか換金するかもしれませんが、「持っている」そのことが、幸せをもたらしてくれます。

支払いに使うことはない、と書きましたが、取引自体は日々行われており、価格変動するものです。短期的な売買で利ザヤを稼ぐということも可能ではありますが、一般では現物での取引ではなく、金ETFや金に投資する投資信託、純金積立といったマネー商品を使って取引することになります。また、冒頭で説明したように、資産のポートフォリオに組み込むものなので、頻繁に売買するのではなく、他の資産とのバランスを考え、全資産の1割程度を保有するようにしておくといいでしょう。

金投資の4つの種類とメリット・デメリット

個人で金に投資するには、4つの方法があります。

(1)金地金、金貨
(2)金ETF
(3)金に投資する投資信託
(4)純金積立

究極の金投資は、「金地金」を保有すること。インゴット、バーとも呼ばれ、板状になったもの。ドラマや映画で見るような金塊は、1本1kgで販売価格は約500万円! なかなか手に入れられるものではないでしょう。しかし、金地金は、1g、5g、10gと少量から扱いがあるので、予算に合わせて購入するのもいいでしょう。ただし、金地金を購入する場合、販売手数料が1gあたり約0.3%~1%程度かかり、少量での購入では、スモールチャージという加工手数料もかかるので、手数料などのコストが割高になります。

手軽に金の現物を手に入れたい、ということであれば、金貨。「メープルリーフ金貨」や「カンガルー金貨」、「ウィーン金貨ハーモニー」などが有名です。それぞれ、カナダ、オーストラリア(パース)、オーストリアの造幣局が発行しています。金貨の大きさにもバリエーションがあり、1トロイオンス(約17万円)~1/10トロイオンス(約1万8000円)。美しいデザインの金貨はそれ自体がプレミアム的な価値があり、人気がありますが、傷がついたりすると価値が下がってしまいます。

金地金、金貨ともに、購入時の手数料、加工手数料がほかの金投資に比べると、割高になります。また、金を保有しているだけでは、金利、利息が付かず、タンス預金と同じと考えましょう。購入と売却の価格には差があり(スプレッド)、仮に同日に売買したとすると、売るだけでソンすることになります。最大のリスクは盗難。販売業者に保護預かりをしてもらうこともできますが、その場合は、保管料がかかります。やはりコストと、現物を保有している「幸福感」との兼ね合いで、投資をするようにしましょう。

次に、現物ではなく、マネー商品として、少額でも金投資ができる、金ETF、金に投資する投資信託、純金積立を紹介していきます。

金ETFの銘柄選びのポイント

金ETFは金上場投資信託のことで、文字通り、投資信託の一種。株式市場に上場され、株式と同じように市場が開いている間は、自由に売買できる機動性があります。指値注文や成行注文をはじめ、注文方法が選べるのも、金投資を考えている人にとって使い勝手がいいといえます。


現在、国内市場に上場している金ETFは、5本。いずれも金価格に連動するように運用されていますが、銘柄ごとに特徴があります。ロンドンの値決めの金現物に連動するもの、国内金価格に連動するもの、金価格に連動する債券に投資するもの、金の先物価格に連動するものなど、ひとくちに「金ETF」といっても、その中身は異なります。売買単位も1口単位、10口単位と違いがあり、数千円で購入できるもの、数万円必要なものとあります。

銘柄選びでは、1日の出来高にも注目すべきです。出来高が多ければ、それだけ取引が活発に行われているということで、売買のタイミングを逃すことがありません。また、投資信託同様、売買コストのほか信託報酬が保有中かかりますので、その点も重要になってきます。

金ETFは随時売買できますが、一度にまとまった資金で購入せず、価格変動を見ながら、時間を分散して投資をすることも損失を最小限に抑えるコツといえるでしょう。

「金に投資する投資信託」なら、毎月少額から積み立てを

金に投資をする投資信託は、今のところ本数は多くありませんが、ETFとは異なり、積立投資ができるのが利点です。下記に代表的な4本を紹介しますが、その他の投資信託同様に、販売手数料、信託報酬は、取り扱いの金融機関によって異なります。また、購入金額の単位も取り扱い金融機関によって異なります。最近は、100円から積立投資ができる証券会社も増えてきました。


紹介したうち3本は、金ETFを主な投資対象としており、日本の金価格の値動きに連動するか、米ドル建ての金価格に連動するかの違いがあります。また、冒頭で説明したように、日本の場合は、為替の影響を受けるため、為替ヘッジの有無でも運用成績に違いがでてきます。

投資信託のメリットは、積立購入が可能になるほか、年1回の決算で分配金の期待があることです。現物投資では金利、利息は付きませんので、投資で分配金を得たいなら、投資信託も選択肢にあがるでしょう。

純金積立ならスポット買いも併用

金を積み立てて購入するなら、純金積立が候補になります。純金積立は毎月一定額が指定口座から引き落とされ買い付けをしてくれるシステムです。少額から積み立てられるので、投資初心者でも始めやすい商品でしょう。

投資の積み立ては「ドル・コスト平均法」によって、価格変動のリスクを軽減できる効果が期待できます。価格が安い時には数量多く買い付け、高い時には数量少なく買い付けるため、結果的に購入単価が平準化されるというものです。

積み立てをして、まとまったグラム数になれば、金貨やジュエリーと等価交換できるというのも人気の理由となっています。

しかし、純金積立は年会費がかかる場合や買い付け時のコストが金ETFに比べて割高になってしまうのがデメリット。価格下落時に、スポット購入(即時購入)で平均買付単価を下げるなどの工夫が必要になってきます。

現在、純金積立ができる主な会社は上で紹介したとおりです。鉱山会社、貴金属商、一部の銀行・証券会社で取り扱っているので、それぞれの特徴を理解して、自分の希望にあったところを選ぶといいでしょう。
(文:伊藤 加奈子(マネーガイド))