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 シチズン時計の連結子会社であるシチズン・システムズは4日、医療・介護市場に本格参入すると発表した。
 従来から販売している電子血圧計、電子体温計、超音波洗浄器などに加え、8月以降に振動体温計、手首式血圧計を発売する予定で、在宅医療・介護市場で新しい販売チャネルの拡大を目指すものである。
 シチズンは1918年、貴族院議員の山崎亀吉によって、尚工舎時計研究所として創業された。1924年に懐中時計が完成し、当時東京市長だった後藤新平が市民に親しまれるように「シチズン」と名付けたのが、ブランドの始まりとなった。1930年に会社組織となりシチズン時計株式会社が設立された。
 2019年3月期売上高3,216億円の構成比は、シチズンの原点である時計事業で51%、自動車、医療、IT関連などの幅広い産業を支える工作機械事業で22%、LED、自動車部品などデバイス事業で19%。業務用プリンター、電子血圧計などの電子機器事業で6%、遊技用機器向けの独自システム、宝飾品などその他事業で2%。時計製造で培った小型・精密加工技術を生かして大きく発展してきたシチズンの動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績と今期見通し

前期売上高は3216億円(前年比1%増)、営業利益は前年よりも25億円減の224億円(同10%減)であった。
 減益要因としては、ムーブメント販売が伸び悩んだ時計で37億円、照明向けLEDが悪化したデバイスで2億円、その他と全社調整で10億円の減益だった。一方で、欧米市場が好調で国内でも幅広い業種が順調に推移した工作機械は26億円の増益だった。
 今期は好調を維持してきた工作機械の減速感の強まりを受けて、売上高3,180億円(同1%減)、営業利益200億円(同11%減)を見込んでいる。

■中期経営計画(2019年3月期~22年3月期)で営業利益300億円へ挑む

2022年3月期売上高3,700億円(対前期比15%増)、営業利益300億円(同34%増)を目指して、次の事業戦略を推進する。
 1. 時計事業で時を通して新たな価値と体験を創造 ・デジタルマーケティングの推進: 消費者データの活用によりセグメンテーションとターゲティングを明確化し、パーソナライズ対応を強化。 ・製品領域の拡大: 情報分析、決済機能、AIスピーカー、IT家電との連動などの機能を取り入れたスマートウォッチへの本格参入と機械式、高級品の中長期的育成。 ・ムーブメントと完成品のコスト力強化: 合理化、自動化の徹底による生産性向上と多品種少量生産への対応力強化。
 2.工作機械事業で世界最先端の生産革新ソリューションを創造し、「新モノづくり企業」のポジションを確立 ・生産革新による強固な事業基盤確立: 工場の自動化、スマート化推進と顧客の希望する仕様のパッケージ化拡充によるリードタイム短縮。 ・既存事業の拡販推進: 新興国市場の生産販売体制強化と自動車需要を取り込むグローバル販売生産体制の構築。
 3.デバイス事業で差別化製品の提案で次の成長事業創出 ・市場変化に対応して高品質、高付加価値製品の拡大: 小型金属加工事業をコアに多様な車載関連製品、LEDやスイッチなど独自技術でシェア拡大。
 超小型精密加工技術を生かして、中期経営計画で新たな価値づくりに挑むシチズンの動きに注目したい。