人手不足、仕事が高度化している現在、プレイングマネジャーには、チームをまとめる以外に、戦略的な動きで会社・チームに業績をもたらす仕事が求められています。
このベースとなるチーム運営が、全社員でチームを動かす「シェアド・マネジメントスタイル」です。これは数多くの現場で実践されており、明日から活用できる実験済みの方法です。令和時代には、カリスマリーダーシップの求心力でチームを動かす方法は合っていません。
人・チームを動かす技術にも変化が求められています。昭和世代の上司から教えてもらった緩やかな仕事のやり方と、部下の平成ゆとり世代の価値観の狭間で悩んでいる、30歳以上のリーダーが非常に増えています。
そのようなリーダーのみなさんに向けて著した『プレイングマネジャーのルール』から、エッセンスをご紹介いたしましょう。
能力がないのではなく、経験していないだけ
自分で現場の仕事の担当を持ちながら、マネジメントもこなすプレイングマネジャー。大手企業であれば、さまざまな研修を受けて、準備に備えることもできるかもしれませんが、多くの企業はそのような余裕はありません。ほとんどの人が、ぶっつけ本番で、その立場を経験するのです。
プレイとマネジメントの両立は難しいものなのです。サッカーで例えるならば、グラウンドでボールを蹴りながら選手交代等の作戦展開を考える人というイメージです。もし、あなたがサッカーチームのプレイングマネジャーとしてピッチに立って、息をゼイゼイさせながら走り、選手交代・作戦展開を考えられますか? それだけ両立させることが難しい役割なのです。プレイングマネジャーの機能しない企業が、多いこともうなずけます。
それでは、プレイングマネジャーは、何を身につけることが必要なのか。まずは以下2つの基本を身につけることが大切です。
① 「動かす技術」を身につける
チームリーダーは、周りを動かす技術を身につけることが不可欠です。動かすとは人を動かし、チームを動かすことです。プレイングマネジャーであるチームリーダーの最大の仕事は「動かす技術」に集約できます。組織には、人が動きやすくするために共通の価値観が必要になり、それが乏しい集団は烏合の衆に陥りやすいものです。
だから、リーダーは組織に必要な共通の価値観を常に訴え続け、組織・メンバーに共通の価値観を意識させることが必要となります。それをパターン化することでメンバーが行動しやすくなります。行動し、継続すれば習慣になり、一つひとつのやるべきことの習熟度が増し、精度が上がっていきます。
② いちばん先まで見る
人・チームを動かす前提として、チームリーダーである自分自身を動かすことが重要です。自らの動きがデタラメなら、当然人は動いてくれません。まずは会社全体の方向性や目標を意識することです。つまり、チームの中では、いちばん先の時間まで見えないといけないのです。なぜならチームリーダーはチームの案内人であり、チームを迷わせない羅針盤になるからです。
チームを強くする、6つのポイント
そもそも最初から強いチームはありません。先ほどの基本を身につけたリーダーが人の動きをコントロールして、組織を強くしていかなければなりません。そのポイントをご説明します。
① チームの共通語をつくる(目的・目標の共有化)
チーム内での「共通語づくり」です。目的・目標の共有化とは、チームの方針・目標を全員が理解し、意識することです。業績のいいチームは、そのチームでしか使わない固有の共通語が多くあります。今月の目標はいくらと問われたら、「いくらです」と答えられる。これはそのチームの共通語です。共通語をいかに多くつくるか、これが最初のカギになります。
② できない人をつくらない(具体的計画の立案と周知徹底、役割分担)
目標が決まると、それをどういう方法で実践していくかを具体的に考え、計画をつくることが大切になります。そこで、目標に向けての具体的な手順・段取り・方法をメンバーに理解させ、できるように訓練していきます。
この段階で、「やり方がよくわからない」「やったことがない」と問題が出るのでやり方をキチンと教えていくことも含めた周知徹底になります。「できる人とできない人をつくらないこと」が重要です。それを踏まえ、誰が、何を、いつまでに、どういう方法でやるのかを5W2H形式で役割分担を図るわけです。
③ 最優先業務を考え、判断して実践する
具体的な計画を作成する段階で決め事をつくります。リーダー、メンバーが役割分担に基づき、決め事を決まったようにやることが実践です。ここで重要となるのが、「行動管理」です。行動管理とは、まず自分が取り組むべき最優先業務を考え、判断していくことです。
目標を達成していくには、必ず押さえるべき最優先業務があるはずです。これを押さえてスケジュール化するから、初めて目標管理と行動管理が一致するわけです。そしてリーダーはそれをやらせていくのが最大の仕事です。
④ 出来栄えを確認し問題を早期発見する(チーム全体と各メンバー)
出来栄えの確認とは問題の早期発見であり、チェックをすることです。出来映えの確認がないと、いくら具体的な計画をつくって役割分担しても、「1カ月間ノーチェックで経過」しては、「月末に締めて出てきた結果が業績である」という発想になります。「業績が出た」と「業績をたたき出した」では根本的に違います。
途中のプロセスをキチンと確認していくことは業績をつくり上げていくのと同時に成功事例、失敗事例の要因も押さえることにもなり、これがチーム固有のノウハウにつながります。
⑤ 問題点の早期治療を行う(軌道修正)
月初に決めた内容は月中・月末の間で状況変化が起こります。それに対し、素早く問題点を見つけ、軌道修正をします。スピードのないチームは業績の締め日に初めて問題があったことに気づきます。
このようなチームは、未処理のままになっている決め事の山を築き、「業績はさっぱり」の状態になってしまいます。現場を毎日見つめて、何かに気がついたら軌道修正、これが大切です。
⑥ 学習能力を活用して生産性を上げる(学習効果の発揮)
「学習」とは、いま、やっていることを反省し、次に行う業務の行動能力を高めることです。
私たちの足元には成功事例、失敗事例というたくさんのノウハウがあります。
これをストック化し、意識の共有化を図ります。会社の業務のうち、7割はルーチンワークとよばれる規則性の仕事です。
この学習能力、学習効果を発揮できるチームは非常に強いチームになります。問題意識をもって業務に取り組むので、「次回はこの部分を直してみよう」とつねにいま、やっている仕事から「ネクストを生む」という発想が訓練されます。
つまり、「生産性を上げる思考回路のチーム」に成長するのです。
プレイングマネジャーになる人へ
プレイングマネジャーの役割は大きくなっています。いかにリーダーにしかできない、高度な現場仕事をするかがカギになってきます。だからこそ、全社員でチームを動かすのです。チームを動かすマネジメント量の4割をメンバーに任すことを目標にしましょう。
プレイングマネジャーの立場にある人、これからなる人も、この記事が参考になれば幸いです。
0 件のコメント:
コメントを投稿