インスタ副業詐欺 キラキラ主婦への憧れにつけ込む手口とは
インターネット検索による調べ物を「ググる」と言い始めたのが2000年代初頭のこと。万能かと思われた検索機能はSEO対策がすすみ、目的の結果にたどり着きづらくなった。そのため最近ではSNS検索、とくにInstagramを利用した検索に信頼を寄せる人が、とりわけ女性に増えている。そんなInstagramへの信頼につけこんだ、副業詐欺事件が続いている。SNS関連のトラブルに詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、背景と理由について解説する。
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◆在宅スマホ副業で20万円稼げる詐欺
◆在宅スマホ副業で20万円稼げる詐欺
あるInstagram好きの主婦の話を聞いた。Instagramはお洒落な写真が見られるし、情報交換もできて気に入っていたという。そのうち、気になる女性ユーザーを見つけた。「子どもがまだ小さくてうちの子と同じくらいなのに、ブランドバッグを持っていたり、お洒落なレストランにいたり。羽振りがよくて羨ましいと思っていた」
主婦がInstagramでフォロー、コメントを付けたのをきっかけに、相手からDMが届いた。DMに喜んでいたが、やがて相手が投稿する儲け話に興味をもつように。「詳しくはLINEでと言われ、自分も彼女みたいになれるかと思って、連絡をしてしまった」。先行投資として10万円以上もかかるというので、貯金をはたけば足りると思っていたけれど、翌日になり怖くなってやめてしまったそうだが、詐欺だった可能性が高い。
今年2月、消費者庁が、「在宅スマホ副業で7日間で20万円稼げる人続出中!」などとうたい多額の金銭を支払わせる事業者について注意喚起した。
まず、SNS上で副業で儲けているという女性が、SNSで親しくなったユーザーに対して、DMで儲かるという無料モニターに誘ってくる。無料モニターに参加するためには、被害者はある企業とLINEでつながることになる。無料モニター中は自動集客システムで複数のユーザーが誘導されてくる上、一件につき5000円の報酬が受けられると説明をされるため、消費者は「儲かりそう」と思い込まされる。
そして、多額の収益を得るためには、Instagram上で集客するためのシステム代として初期費用を支払う必要があると言われ、多額の現金を支払わされることになるのだ。しかし実際は簡単に稼げるわけではなく、謳い文句のとおりに収益を上げた事例もない。つまり、副業詐欺なのだ。
実は、Instagram上では同様の副業詐欺は多数起きている。2018年10月にも、消費者庁は「写真を撮るだけで稼げる」とうたい消費者に情報商材等の購入を持ちかけ、多額の金銭を支払わせる「カシャカシャビジネス」と呼ばれる副業詐欺について警告している。
副業詐欺の多くは、最初のみ儲けそうと思わせておき、数十万円に及ぶ金銭を支払わせて情報商材などを売りつけるパターンが多い。では、なぜInstagramでこのような副業詐欺が多発しているのだろうか。
◆スマホでのお小遣い稼ぎが普及
背景には、スマホでのお小遣い稼ぎが一般的になっていることも大きい。
プリキャンティーンラボの「お小遣い稼ぎに関する調査」(2017年4月)によると、29.2%が「インターネットでお小遣い稼ぎをしたことがある」と回答。内訳は、「ポイントサイトに登録してポイント交換」(40.3%)、「不用品などを販売」(35.3%)などとなっている。
「休み時間はスマホでポイントサイトでお小遣い稼ぎをしている」という女子高生も少なくない。主婦の間でも「ポイ活」、つまりスマホを使い、ポイントサイトでお得にポイントを貯める活動が流行中だ。
学生も主婦も、どちらも自由に働けるわけではない点が共通している。彼女たちにとってスマホでお小遣い稼ぎは一般的であり、違和感は感じにくい。◆「#節約」など“映えない”投稿も人気
最近のInstagramは、いわゆる「インスタ映え」写真ばかりが投稿される場ではなくなっていることをご存知だろうか。
たとえば、ダイエット法と共にダイエット前後の写真を投稿する「#ダイエット」は741万件投稿されている人気ハッシュタグ(#)だ。離婚に関する悩みや相談などを投稿する「#離婚」も6万件投稿されるなど、Instagramが自分の意志を継続させたり、同じ環境の人同士でコミュニケーションするための場として使われていることも多いのだ。
そして今では、何か知りたいことがあるとき、ハッシュタグ検索は、ググることより標準的な検索手段にもなっている。気になるワードの前にハッシュタグをつけ、その検索結果を情報として収集している。主婦に人気のワードをハッシュタグ検索すると、投稿数の多さに、この機能が彼女たちにとって欠かせないことがわかる。
「#節約」は92.7万件投稿されており、節約するための小ネタが満載。食費を浮かせるための「#節約レシピ」(7.7万件)、リアル家計簿を公開する「#家計簿」(39.2万件)なども人気が高い。
このような投稿を見ていると、関連ハッシュタグとして「#副業」や「#お小遣い稼ぎ」などのハッシュタグが表示される。そのようなハッシュタグ付きの投稿には、紹介したような副業詐欺投稿が混じっているというわけなのだ。
◆特徴は「札束」「子ども」「スキマ時間でOK」
Instagramはひとつの電話番号につきひとつのIDしか持てないLINEなどと違い、匿名で複数アカウントが作れる上、知らないユーザーとの交流が普通に行われる場だ。共通のセンスを持った人が集まる信頼できるSNSという暗黙の了解があって信頼しあっているからだが、逆に、詐欺などを働く上で都合が良い場とも言える。そこでInstagramを使い、お金がほしい主婦に人気のハッシュタグを利用した詐欺が多発することになる。
副業詐欺のアカウントの特徴はいくつかある。まず、札束やブランドものなどの写真や、子どもの写真を投稿していることが多い点。放っておくだけでスマホだけでスキマ時間に稼げるなどの手間がかからない副業という点も特徴だ。子どもが小さく働けない主婦層を狙い、楽に儲けられることをアピールしているのだ。
また、連絡方法は密室状態でやり取りできるDM、或いはLINEということが多い。アプリを使って音声通話もできるため、最終的にはLINEに誘導することが多いようだ。類似のハッシュタグの投稿を調べたところ、複数のInstagramのアカウントが同じLINE IDを連絡先として示したり、説明文がまったく同じコピーしたものというケースを複数見かけた。
「#お小遣い稼ぎ」「#副業」などのハッシュタグで調べると、多数の情報が見つかる。その中には、本当に収入につながるものもあるかもしれない。しかし、事実としてInstagram上には副業詐欺がはびこっていること、主婦層がターゲットとされていることを知っておくべきだろう。
もし魅力を感じる投稿を見つけたら、すぐに相手に連絡するのではなく、同じハッシュタグの他の投稿を調べたり、ビジネス名などで評判を検索したり、家族などに相談してみるといいかもしれない。
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