使わなくなった銀行口座やゆうちょ銀行の貯金口座を何年も放置する時の注意点とは? 長い間使っていない休眠口座はどうなっているの?

10年以上使っていない銀行口座、「休眠口座」を解約しないで放置するとどうなる?

転勤や就職によって住む場所が変わり、利用していた銀行が近所にないなど様々な理由で、使わなくなった銀行口座を持っている方は多いのではないでしょうか。

一定期間を超えて使われていない口座のことを休眠口座といいます。金融庁の発表によると10年以上使われていない(入出金等がない)休眠口座の残高合計は、平成26~28年の間毎年700億円にものぼったそうです。そしてこのお金を有効活用としようとする法律が2018年1月に施行されました。

では私たち一人一人が休眠口座を解約しないで放置しておくととどのようなデメリットがあるのか、2018年に施行された法律がどう影響するかも含めて注意しておくべきことを解説していきます。

使わない口座を放置するとどうなる? 休眠口座は解約するのがよい

休眠口座を作るとどうなるでしょうか。すぐに損失が出るわけではないのですが、大きなリスクが潜んでいるので、使わない口座はすぐに解約したほうがよいというのが結論です。その理由を説明します。

▼(1)残高が少ない場合は手数料を取られることがあるまず、休眠口座を持ち続けることに金銭的なデメリットはあるかというと、今のところはありません。しかし、一定期間以上預け入れや引き出しをせず、残高が1万円以下のまま放置した場合に未利用口座管理手数料を徴収するという銀行が存在します。

未利用口座管理手数料を徴収していき、この手数料を支払うだけの残高がなくなったところで口座が解約されるという仕組みです。

▼(2)通帳の維持費のしわ寄せがくるかもしれない銀行の立場になってみると、銀行は通帳1冊ごとに毎年200円の印紙税を負担しています。預金者の数×200円というとかなり大きな金額です。銀行のコストがかさんでしまうことが、巡り巡って、利用者の負担になることも考えられます。

▼(3)振り込め詐欺のような犯罪に使われる最大のリスクが犯罪に利用されることです。普段使用している口座であれば、すぐに気づくことができそうですが、放置している休眠口座では発見が遅れることになるでしょう。

▼(4)口座維持手数料が将来発生するかもしれない一部の金融機関が口座維持手数料を検討していることが話題になっていました。口座維持手数料とは、お金を銀行に預けているだけで手数料を取られるものです。

海外の銀行では一般的で、日本においても外資系の銀行や元々外資系だった銀行では、すでに口座維持手数料を取っています。「20万円以上の残高がある」などの条件を満たせば無料になる銀行もあるようです。

もし、全ての銀行で口座維持手数料が導入されるならば、休眠口座を放置する目に見えるデメリットになり、やはり休眠口座の解約は早めにしておくのがよさそうです。

銀行口座の消滅時効について

休眠口座についてもう少し詳しく見てみます。

放置した口座には消滅時効があります。銀行の口座が5年、信用金庫や労働金庫が10年です。時効までの年数は、普通預金は預け入れの時からの年数を、定期預金は満期の時からの年数を数えます。放置していても消えてなくなりそうですが、銀行は消滅時効後の払い戻しにも応じているのが実態のようです。

ゆうちょ銀行の注意点

ゆうちょ銀行は違います。消滅時効の期間よりは長いですが、平成19年9月30日以前に預け入れた定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金は、満期後20年2カ月を経過して払い戻し請求等がない場合は消滅します。

それ以外の場合は、最後の取り扱いから10年を過ぎるとATMやインターネット取引が使えなくなることがありますが、払い戻しはできるようです。

※参考:ゆうちょ銀行HP

休眠口座の預金を活用する法律

2018年1月に休眠預金等活用法が施行されました。休眠預金等活用法とは、2009年1月1日以降の取引から10年以上入出金等の異動のない預金を民間の公益活動の促進に活用するというもの。10年以上入出金や照会などの「異動」がなく、1万円以上の預金で金融機関からの通知が届かない時に、「休眠預金の発生」となります。

休眠預金の対象になると、預金保険機構に移管され公益活動の促進に活用されることになります。法施行から1年となる2019年1月、はじめて「休眠口座が発生」し、2019年秋頃には民間公益活動の促進への活用が始まる予定となっています。

民間の公益活動とは、国や自治体では対応できない民間の団体が行う社会の課題解決に向けた取り組みのことで、活用される分野は、子供・若者、生活困難者の支援や地域の活性化(人手不足や空き家の増加の課題解決)と定められています。

休眠預金は払い戻しできる

休眠預金がこの法律に基づき使われた場合、口座に残っていたお金が没収されるかというと、没収はされません。口座のある金融機関の窓口でいつでも「休眠預金」の払い戻しを受けることができます。通帳やキャッシュカード等の提示で、元本に利子を加えて払い戻しが可能となっています。

休眠預金の対象になる範囲や払い戻し手続きについては、口座のある金融機関ごとに基準が異なることがあります。

同じ銀行の店舗が近所にない場合の口座解約

休眠口座の行く末を解説してきました。ここからは解約についてです。

休眠になっている理由の1つに口座のある銀行が近くにないということが考えられます。銀行が近所にない場合は、他の銀行でも解約することができます。「取立(とりたて)」という方法です。

解約書類を口座のある銀行から取り寄せ、解約する口座の通帳と届印などを近くの銀行窓口に持参すれば解約手続きはできます。銀行によって必要書類は異なるので、電話やホームページで事前に確認しましょう。

通帳や印鑑をなくした場合も解約できる

休眠になっているもう1つの理由が通帳や印鑑をなくした、ではないでしょうか。紛失した場合は、身分証明書、口座番号などで本人の口座と特定できれば解約できます。本人書類や口座の番号等がわかるものなど全て持参して銀行の窓口に行ってください。

まとめ

使っていない銀行口座についての注意点について解説しました。使っていない口座を放置しても今のところ目に見える損はありませんが、将来的な負担となったり、犯罪に利用されたりといったリスクが潜んでいます。

現実になった時に慌てたり、損をしたりすることのないよう今のうちに休眠口座は解約、銀行預金口座などについても、整理をしておきましょう。
(文:井上 陽一(マネーガイド))