「平均貯蓄額」を語るときに、ベースとなる調査があります。主なものに、毎年5月に総務省統計局が発表する『家計調査』と、11月に日銀の関連団体である金融広報中央委員会が発表する『家計の金融行動に関する世論調査』の2つです。

2019年の平均貯蓄額、二人以上世帯は1139万円、シングルは645万円

ここでは、金融中央広報委員会が11月に公表した、『家計の金融行動に関する世論調査』(令和元年)から、平均貯蓄額などを紹介します。

ここでいう平均貯蓄額は、同調査の「金融商品の保有額」のことです。金融商品の保有額とは、預貯金、貯蓄性のある生命保険、債券や株式、投資信託、その他の金融商品の総合計。

ただし、預貯金に関しては、日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分を除いた、「運用のため、または将来に備えて蓄えている部分」のみをカウントすることとしているため、銀行口座などに保有している金額のすべてではないことを、前置きとして付記しておきます。

さて、今回の調査では、平均貯蓄額は、二人以上世帯で1139万円、単身者世帯で645万円という結果となっています。貯蓄額が少ない順に並べてちょうど真ん中にあたる世帯の貯蓄額である中央値は、二人以上世帯で419万円、単身者世帯で45万円でした。

金融資産を保有している世帯のみでの結果は、二人以上世帯で1537万円、単身者世帯で1059万円。同じく中央値は、二人以上世帯で800万円、単身者世帯で300万円となっています。

平均値はいずれも、1年前の前回調査から減少しています。

これらは、平均値であれ、中央値であれ、全国、老若男女、年齢や年収を考慮しない数値ですから、自分ごとにするには、イメージしにくいといわざるをえないでしょう。

ちなみに、二人以上世帯の世帯主の平均年齢は58歳。手取り年収534万円(中央値450万円)。単身者世帯の平均年齢は44歳、手取り年収262万円(中央値220万円)でした。

●二人以上世帯の金融資産の保有額
金融資産を保有していない世帯も含む平均値……1139万円(中央値419万円)
金融資産を保有している世帯のみの平均値……1537万円(中央値800万円)

●単身世帯の金融資産の保有額
金融資産を保有していない世帯も含む平均値……645万円(中央値45万円)
金融資産を保有している世帯のみの平均値……1059万円(中央値300万円)

手取り収入からの貯蓄割合は、二人以上世帯で平均8%

では、こうした調査のデータを自分ごととして、参考にするとしたら、「収入からの貯蓄割合」を見てみるのもいいでしょう。

▼年間手取り収入からの貯蓄割合(二人以上世帯) 

二人以上世帯、単身者世帯とも金融資産を保有している世帯を対象とした「年間手取り収入からの貯蓄割合」は、二人以上世帯で、平均8.0%、単身者世帯で12.0%。

二人以上世帯で、最も多い回答は貯蓄割合15%未満で18.9%。次いで10%未満と回答したのが15.1%となっています。

▼年間手取り収入からの貯蓄割合(単身者世帯)
単身者世帯では、貯蓄割合15%未満が15.2%、10%未満が11.2%。二人以上世帯と比較すると、35%以上と回答したのが9.5%と高く、単身者世帯では貯蓄できている層とできていない層が二極化しています。

しかしながら、二人以上世帯も単身者世帯も、収入から貯蓄をしなかった世帯が、32.6%、36.6%と非常に高いことに驚きを禁じえません。

収入とのクロス集計結果を待たなければなりませんが、ボーナスも含めて、年間で貯蓄できなかった世帯がこれだけ多いというのは、金融資産は保有しているものの、かなり厳しい生活実態である可能性が高いといえるかもしれません。

臨時収入からの貯蓄割合は、二人以上世帯で平均15.0%

貯蓄割合については、ボーナスのあるなしでも、差があるでしょう。

今調査で、「臨時収入があった」とする世帯は二人以上世帯で62.9%、単身者世帯で50.3%。単身者世帯の属性で、フルタイム雇用の従業者が6割弱なので、就業形態がボーナスのあるなしに反映された格好です。

▼臨時収入等からの貯蓄割合(二人以上世帯)

ボーナスなどの臨時収入からの貯蓄割合は、二人世帯で平均15.0%、単身者世帯では31.0%と高い割合を示しています。

▼臨時収入等からの貯蓄割合(単身者世帯)
また、単身者世帯では60%以上貯蓄に回した人が12.1%という結果も特筆すべき点でしょう。

貯蓄をしなかった世帯については、二人以上世帯で26%、単身者世帯では17.3%という結果に。二人以上世帯では、子どもの教育費や住宅ローンのボーナス時返済など、ボーナスから出ていくお金も多く、なかなか貯蓄に回せないという事情もあるかもしれません。

今回、調査データから平均貯蓄額などを見てきましたが、金額そのものよりも、どれだけ貯蓄に回せているのかを示す「貯蓄割合」の数値は、どの世帯にとっても参考になるものと思います。

各家庭の状況で、貯蓄ができない時期もあるでしょう。でも、給与から、ボーナスから先取りで、無理のない範囲で、1万円でも、2万円でも貯蓄をすることが大事で、また継続していくことが大事です。

今は冬のボーナスのシーズンです。我が家は年間でどれだけ貯蓄できたのか、ボーナスからいくら貯蓄をするのか、このタイミングで確認するようにしておきましょう。
(文:伊藤 加奈子(マネーガイド))