昨今「下流老人」なる表現をよく聞くようになりました。これは、老後を迎えてお金がなくなり経済的に困窮した高齢者、あるいは生活保護を受けざるを得ないほど追い込まれた高齢者のことを指すようです。そこで今回は、下流老人にならないために、現役時代からできることを考察してみたいと思います。

金持ち老人を目指すならやっておくべき対策

「下流老人」という表現をよく聞くようになりました。これは、老後を迎えてお金がなくなり経済的に困窮した高齢者、あるいは生活保護を受けざるを得ないほど追い込まれた高齢者のことを指すようです。そこで今回は、下流老人にならないために、現役時代からできることを考察してみたいと思います。

社会保険に加入しておくこと

まずは基本中の基本といいますか、受け取れる年金の額を「ぜいたくしなければとりあえず生活には困らない」レベルにすることです。国民年金の未納問題が取り沙汰されていますが、金額はともかく「生涯もらえるお金」があることは、ひとつの安心材料となるはずなので。そこで、個人事業者は国民年金に、サラリーマンは会社の社会保険に加入しておきましょう(正社員ならば給与天引きなので問題ありません)。

サラリーマンは恵まれています。なぜなら社会保険は労使折半なので、自分の給料から徴収される金額と同じ額を会社が負担してくれるので、倍の恩恵に預かれるからです。夫婦ともに正社員を続ければ、支給額が減ったとしても、そう困らないレベルになるでしょう。

ただし、個人で仕事をしている人は国民年金だけなので、やはり心もとない。そこで、国民年金基金や付加年金、確定拠出年金、小規模企業共済などに別途加入し、老後に受け取れる年金を増やすのが順当な方法でしょう。なお、確定拠出年金は一般の会社員でも加入できるので(会社の企業年金制度の内容によって変わる)、余裕があれば検討に値します。

それでも不安な人で資金的な余力があれば、民間の保険(積立型の生命保険や個人年金保険)をプラスしてもよいでしょう。確定給付型の保険は将来インフレになれば目減りするのが欠点ですが、払い込み中は節税になり、確定金額が受け取れるのも安心です。

マイホームを買っておくこと

一生賃貸であれば、年金の中から家賃をねん出しなければならないので、都市部では苦しくなることが予想されます。田舎や地方であれば家賃は激安ですが、車が必要になりますし、運転できない年齢になったときに困る。

そこで現役のうちにマイホームを買っておくという方法が考えられます。定年退職と同時にローンの返済が終わるようにしておけば、老後の住居費はかなり抑えられます。お金がなくても、とりあえず住むところには困らないというのもまた、ひとつの安心材料です。住宅ローンは負債といわれることもありますが、老後の住居費の前払いと考えることもできますから、家計に無理のない金額で買っておくのも手です。

今は低金利ですし、ローンを組めば通常は団信(団体信用生命保険)に加入しますから、生命保険の代替にもなりえます。さらに利便性の良い場所であれば、売ることも貸すこともできるし、リバースモーゲージ(自宅を担保にお金を借り、自分が死んだら金融機関がそのマイホームを売却して資金回収する仕組み)も使える可能性が高まりますから、老後の選択肢は増えるでしょう。

ただしマンションの場合はそう簡単な話ではなく、修繕積立金は一般的に徐々に高くなりますから、ローンを完済しても、管理費+修繕積立金で結構な金額が毎月かかります。また、大規模修繕のために一時金を徴収されるケースもありますし、老朽化しても建て替え問題の協議が難航しているマンションもあり、注意が必要です。

ローン返済がきつそうだという場合は、「賃貸併用住宅」という方法もあります。これなら家賃である程度の住宅ローンを賄えるので、返済負担が軽減されます。

老後も働くこと

平均寿命の延びとともに健康寿命も延び、65歳はもはや高齢者ではなく、「まだ中年」といった状況になるでしょう。そこで、会社の制度に自分の人生を合わせるのではなく、会社が決めた定年なんて関係なく働くことです。「老後は働き口がない」と予想できるなら、今から「65歳になっても雇用される人材」になるよう鍛錬しておく。あるいは、起業できるよう副業に取り組んでおくことです。自分で事業をやれば生涯現役も可能です。

働くことで生活に緊張感があれば、病気になるリスクも低減されることがわかっていますので、老後の医療費負担を減らすことにつながります。それに何より「社会との接点がある」「誰かから必要とされている」「人の役に立っている」「自分でお金を稼いでいる」という自尊心は、充実した人生を送る上でも重要なことではないでしょうか。

副収入源を作っておくこと

これは資産運用全般も含まれますが、不動産投資による家賃収入や、投資信託の積立、外貨預金なども考えられるでしょう。ただし私個人としては、あまり金融商品に依存しすぎないほうがよいのではと考えています。確かに将来インフレになれば、株や投資信託などの有価証券の価格は上昇し、お金が増えるという期待はあります。

しかし老後を迎え、それらを売却・解約して現金化しなければならないタイミングが、たまたま大恐慌だったら、増えているどころか減っているかもしれません。もちろん反対に、お金が必要になったときが好景気なら、お金が増えているかもしれない。

というふうに、将来はわからない。景気も自分でコントロールできない。だからあまりそこに依存するのはリスクがあるなあ、というのが私の考えで、私が不動産を中心に資産運用をしているのもそこに理由があります。都心の駅近で魅力的な賃料を提示すれば入居者が見つからないという可能性は低いし、売却してもいいし自分が住んでもいい。いろんな出口があってそれが選べるからです。

お金のかからない生活スタイルを作ること

今でも地方に行けば、自給自足生活を送っている人は少なくありません。畑で野菜を育て、ニワトリを育て、地域の住民と物々交換をする。それに太陽光発電で電気を賄えば、スマホの充電もできるし、車も電気自動車なら生活にお金はほとんどかからない。少ない年金でもそう困らない可能性があります。

これが「ムリ」という人は、贅沢病にかかり、欲望が肥大しているだけかもしれません。だって、買うモノなんてそんなにありますか? 服や靴は良いものを選び大事に手入れすれば長く使えるし、スマホだって最新高性能なものを買っても収益にはならない。

私もそう考え、スーツはもう10年近く買っていないですし、スマホもSIMフリーで本体は9800円の海外製。それでも十分で、毎月の携帯料金は2000円台に下がりました。というふうに、現役時代から固定費をミニマムにしておき、それに慣れておく。でもそれはケチケチ生活をしようということではなく、「本当に重要なこと」「自分を変革・成長させてくれること」「家族の繁栄に貢献すること」に大胆にお金を使えるよう、可処分所得を高く保つという意味です。

と、いろいろな選択肢をご紹介しましたが、もちろんこれらがすべてではありません。自分のライフスタイルや志向に応じて、戦略的に方法論を考え選ぶ。それが老後の不安を和らげる一助になると思います。
(文:午堂 登紀雄(マネーガイド))