年代や年収によって、貯蓄の実態は変わってきます。細かくみていきましょう。

単身者世帯の平均貯蓄額は744万円だけど…

ここでいう平均貯蓄額は、同調査の「金融商品の保有額」のことです。金融商品の保有額とは、預貯金、貯蓄性のある生命保険、債券や株式、投資信託、その他の金融商品の総合計。

ただし、預貯金に関しては、日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分を除いた、「運用のため、または将来に備えて蓄えている部分」のみをカウントすることとしているため、金融口座などに保有している金額のすべてではないことを、前置きとして付記しておきます。

2018年の『家計の金融行動に関する世論調査』によると、単身者世帯の平均貯蓄額は744万円、中央値は50万円という結果になりました。そのうち金融資産を保有していると回答した人の平均貯蓄額は1234万円、中央値は350万円となっています。

こうした調査は、全年代を通しての平均となりますので、年代や年収によって、貯蓄の実態は変わってきます。この調査での平均年齢は、44歳、手取り年収は261万円(中央値は220万円)でした。

平均を超えるのは50歳代になってから!?

まず、年代別の実態をみていきましょう。

金融資産を保有していないと回答した人を含む全体の平均は744万円ですが、20歳代では128万円、中央値では5万円と、かなり厳しい結果になっています。

年代が上がるにつれ、貯蓄額は増えますが、それでも、30歳代で317万円、40歳で657万円、50歳代になってはじめて1000万円を超え、1043万円となります。60歳代で大幅に増加し1613万円となりますが、退職金のほか、住宅ローンの返済が終わるなどの要因もあるでしょう。

一方、金融資産を保有している世帯のみの集計では、平均が1234万円。年代が上がるにつれて貯蓄額が増えるのは同じで、20歳代で239万円、30歳代で533万円、40代で1000万円を超えて1177万円となります。

ただし、それでも平均には届かず、ようやく50歳代で1762万円という結果になります。

金融資産を保有していない人を含めた貯蓄額と、金融資産を保有している人の貯蓄額との差は、どの年代を通してもとても大きく、特に、中央値でみると、金融資産を保有している世帯のみであっても、1000万円を超えるのは、60歳代のみということに注目すべきでしょう。

平均貯蓄額ではわからない、多くの人が抱える老後資金への不安は、こうした実態からも見えてくるかもしれません。

年収300万~500万円未満で平均1025万円

では、年収別ではどうなっているでしょう。

シングルの集計数は2500人で、年収300万円未満が1328人と半数以上を占めており、750万円以上はわずか70人と偏りがあります。一覧には記載しましたが、参考程度にとどめ、ここでは750万円未満のデータをみていくことにします。

年収が高くなるほど、貯蓄額も増えていますが、問題は年収ではないという点に注目してみます。

年収300万円未満で金融資産を保有していない人も含めた平均は473万円(中央値10万円)であるのに対し、金融資産を保有している人だけの平均は870万円(中央値200万円)。平均で約400万円の差があります。

年収300万円以上500万円未満では、金融資産を保有していない人も含めた平均は738万円(中央値124万円)なのに対し、金融資産を保有している人のみの平均は1025万円(中央値363万円)と、その差は約300万円。

同じように、年収500万円以上750万円未満では、平均1919万円(中央値800万円)に対し、平均2305万円(中央値1205万円)で、差は約390万円。

年齢構成まではわからないので、勤労者世帯のみとなると、また異なった結果になるかもしれませんが、やはり年収の多寡によらず、きちんと貯蓄行動をしているかどうかは大切で、年収が低いから貯蓄できない、というのは、理由にはならないでしょう。

20歳代の貯蓄割合は15%と平均以上

若いうちから貯蓄グセを身につけることが大事で、毎月の給料やボーナスから、きちんと積み立てなどをする以外に、貯蓄の王道はないのです。

金融資産を保有している20歳代の貯蓄割合は年収の15%と平均の12%を上回っています。

これが30歳だと14%、40歳代だと13%、50歳だと11%と下がっていますが、一般的には年齢とともに年収も上がっていきますから、割合としては減っても、金額自体は、年齢とともに積み上がっているはずです。

平均貯蓄額といったデータの表面の数値にとらわれず、同じ年代、同じ年収レベルの人の貯蓄額などを参考に、もしも不足しているようであれば、まずは、自分の貯蓄行動を見直すことからはじめましょう。

また、平均より上回っていても、それで安心することなく、いつまでに、なんのために、いくら必要なのか、明確な目標を持って、貯蓄プランを考えてみてください。
(文:伊藤 加奈子(マネーガイド))