しまむら「在庫調整で減収増益を実現した」
9月30日、しまむらは2020年2月期第2四半期(累計)の決算を発表した。業績は売上高2643億9300万円(△4.1%)、営業利益143億5500億円(0.3%)、経常利益145億9300万円(△1.0%)、当期純利益96億1300万円(1.1%)〈()内は昨年対比〉。
減収ながら増益の達成は、緻密な在庫調整によるところが大きい(図表①)。
痛い4月、7月の売上減、在庫調整で荒利改善
売上げ減については、「(客)単価の回復が、客数減をカバーし切れなかった」(北島常好社長)という解釈だ。特に低温だった4月、梅雨明けのずれ込んだ7月に落ち込んだ。もっともこれは衣料品を扱う他のチェーンでも見られた(図表②)。
※1 しまむら業態既存店 ※2 国内ユニクロ事業既存店 ※3 衣服・雑貨既存店
業態別に見ると、展開する5つの業態のうち、売上げの8割を占める「しまむら」の落ち込みが4月(既存店昨対88.9%)、7月(同82.5%)と特に大きかった。
部門別に見ると、紳士衣料(既存店昨対91.3%)、ベビー・子供(同91.9%)と2部門の減収が目を引く。これは、この2部門は衣料品ながら実需品の側面が強く、前述した気候変動の影響を大きく受けたことによる。
もっとも、荒利益率に注目すれば、全社で1.0ポイントの改善が見られた。減収率の著しかった紳士服、ベビー・子供服もそれぞれ、1.7ポイント(32.7%)、2.0ポイント(27.8%)と、この面では大幅に改善が見られた〈()は今期の荒利益率〉(図表③)。
図表③ しまむら業態の部門別売上高・荒利益
この荒利益率の改善が今期の大きな成果であると、北島常好社長は強調する。行き過ぎた価格訴求を改め、売価変更を減らした。
売価変更については、売上げの波が大きい季節商品の比率を下げる一方、発注量を柔軟に調整することで在庫量を圧縮したことが奏功した。「第2四半期に限れば、昨年より22%増の荒利益額を達成できた。7月の売上減を考えれば十分にカバーできたと思う」(北島社長)。在庫のコントロールについては、十分な手応えをつかんだようだ。
一方で、同社のお家芸ともいえる販管費については、実額で計画を下回る一方、売上高構成比では逆に昨年を0.8ポイント上回ってしまった。これは、売上げの減少額が販管費の抑制額を追い越してしまったことによる。
ECの目標は10億円、通期見通しは下方修正せず
なお、しまむらは昨年7月にオープンした「ZOZOTOWN」(ECモール)から、6月に撤退している。今後同社はECについては自社アプリ「しまコレ」に傾注するが、具体的な目標も明示した。
現在、「しまコレ」の1週間当たり平均売上げは約1000万円(多い週では4000万円)だが、これを早い段階で2000万円まで引き上げ、将来は年商10億円程度まで伸ばしたい考えだ。
将来的には現在約2000万人いる「しまコレ」会員に対し、端末を通して店頭での販促情報を送る、チラシ内容を流すなど、顧客との関係をより緊密化し、店舗とネットとの相乗効果を高めたいという。
決算発表に席上、北島社長は20年2月期通期見通しの下方修正について質されると、「ない」旨を簡素に返答した。消費増税、フォーエバー21の日本撤退など、市場の先行き不透明感は拭えない。今期、既存店の業績回復に取り組む一方、重複出店エリアの見直しなど中長期的な布石も打つ。会社として、“衣料品(供給)の社会インフラ”(北島社長)の役割は果たせるか、その答えは半年後に出る。
19年8月「しまむら」16カ月ぶりに持ち直し
異常低温続きの7月を脱した途端、猛暑日の連続。8月は末締め企業にとって、例年と比べて休日が2日多かったことも寄与し各社とも既存店売上高は伸長した。8月11日の「山の日」絡みの3連休とつないでお盆休みを9連休とした人も多かったのではないか。お盆休み期間中も台風10号の横断はあったものの、おおむね天気は良好だった。そしてこの台風一過から気温も落ち着き始め、順調に秋物商戦に移行できた印象だった。
東京都の平均最高気温は32.8℃、平均最低気温は25.2℃と、暑かった昨年と同レベル。後半に猛暑日を4日も記録した昨年と違って、秋の立ち上がりはスムーズに移行できたショップが多かったと推察する。
〈1位〉良品計画(既存店)売上高 126.1%*1、客数 116.7%、客単価 96.0%
【主要施策】夏物セール3(~8/15 期間限定価格)
【話題の取り組み】着るほどに、知るほどに、気持ちいい。(オーガニックコットン特集)
【注目アイテム】〔レディス〕ムラ糸天竺編み五分袖Tシャツ(税込3493円)、〔レディス〕はかまパンツ(税込5990円)/〔メンズ〕超長綿洗いざらしブロードシャツ(税込2490円)
月の前半は、梅雨明け以降の気温上昇により、衣服・雑貨ではTシャツ、ポロシャツ、ショートパンツ、帽子など盛夏商品の売上げが大幅に上昇。月後半も晩夏商品のシャツやワンピースが人気となる。生活雑貨では堅調に推移するキッチン用品、掃除用品、ステーショナリーのファイルボックスに加え、タオルケットの売上げが大きく伸長した。
〈2位〉ユナイテッドアローズ(既存店*2)売上高 112.2%、客数 113.2%、客単価98.5%
【主要施策】 SUMMER SALE FINAL
【話題の取り組み】×チャンピオンコラボ チュニック企画
【注目アイテム】〔メンズ〕パタゴニアレトロジャケット(税込2万9160円)/〔レディス〕ウールポリ混紡ノーラペルJK(税込1万6200円)、〔レディス〕タックテーパードパンツ(税込1万620円)
セール需要が高まったことに加え、高額ダウンジャケットの売上げなどが好調だった。月末からの気温低下により、秋物商品の動きも徐々に拡大している。今月は前年同月に比べて休日が2日多く、「小売+ネット通販既存店売上高前期比」に対して+2.6%程度の影響があったと推測。先月に引き続き、消費増税前の駆け込み需要として人気アウトドアブランドのフリースジャケットなど高額アウターの動きが良かった。
〈3位〉ユニクロ(既存店*3)売上高 109.9%、客数 113.5%、客単価 96.8%
【主要施策】カーブパンツ新登場
【話題の取り組み】週刊少年マガジン60周年記念Tシャツ企画/カウズシリーズ再販/セーラームーンコラボTシャツ/
【注目アイテム】〔レディス〕ワッフルクルーネック7分袖ワンピース(税抜1990円)/〔メンズ〕ワッフルクルーネック7分袖T(税抜990円 期間限定価格)、〔メンズ〕:レギュラーフィットテーパードジーンズ(税抜3990円)
猛暑日が続き、夏物需要が活性化した。前年同月より気温が高く推移し、土日の集客も多かった。エアリズム、ブラトップ、ユニクロUのTシャツ、ポロシャツ、エアリズムUVカットメッシュパーカなど夏物が動くも中心はインナーで、秋物の動きはカーブパンツなど一部商品にとどまった。この結果、客単価は3・2%減となった。
〈4位〉アダストリア(既存店)売上高 105.5%、客数 105.4%、客単価 100.1%
【主要施策】グローバルワークの定番パンツ 美(うつく)シルエットシリーズ
【話題の取り組み】ディック・ブルーナ×コラボレーション企画(スあだタディオクリップ)、JリーグオフィシャルTシャツ企画(ニコアンド)
【注目アイテム】〔レディス〕羽織れるヌケカンCPOレーヨンシャツ(税込5292円)、〔レディス〕美シルエットチェック柄テーパードパンツ(税込4212円)/〔メンズ〕アーバンスラックス(税込5292円)
夏らしい気温となり、夏物商品の売れ行きが加速した。ブランド別ではグローバルワーク、ローリーズファーム、スタディオクリップ、ページボーイなどが好調。アイテム別ではワンピース、Tシャツ類、パンツ類、バッグなどが売上げの中心。なお、自社WEBストア「.st(ドットエスティ)」が、サイトメンテナンスに伴い8月8日より営業を休止しており(9月中の再開予定)、8月の既存店から除外した場合の既存店前年比は112.9%となる。
〈5位〉*しまむら(既存店)売上高 100.6%、客数 96.2%、客単価 105.4%
【主要施策】夏トク限定プライス300円/500円/700/円/900円
【話題の取り組み】フィッシャーズコラボ企画/ガールズ韓国ブランド初上陸(HOTPING.sis)/SUSHI RAMEN RIKUコラボ企画/BT21コラボ企画
【注目アイテム】〔レディス〕水陸両用デニムショートパンツ(税込1500円)、〔レディス〕ワッフルワイドパンツサイドスリット入(税込1200円)/〔メンズ〕衿消臭テープ付楊柳開襟半袖シャツ(税込1500円)
梅雨明け後に気温が上がり、吸水速乾シリーズ「FIBER DRY」の寝具や肌着など夏物実用商品の販売が好調。また、モデルやインフルエンサーとのコラボ商品を中心に婦人の秋物が動き出し、売上げは前年実績を上回った。既存店売上高が前年実績を上回ったのは昨年4月以来、実に16カ月ぶりのこと。
〈6位〉*ライトオン(既存店)売上高 89.6%、客数 91.3%、客単価 98.1%
【主要施策】トキメキ、きっと。CLEARANCE SALE
【話題の取り組み】高橋 愛が着こなす最旬アメカジスタイル(ファッション誌mini掲載)
【注目アイテム】〔レディス〕ビッグシルエットバックロゴロンT(税抜3490円)/〔メンズ〕RugbyW.CUNIONS COLLECTION(税抜3990円)、〔メンズ〕RugbyW.C神戸市御崎公園球技場ver.(税抜3990円)
気温の上昇とともに夏物商品の販売は回復したものの、晩夏初秋商品の展開が不十分であったため、全店(87.9%)、既存店とも売上げが前年割れ。商品動向としてはメンズ・レディースともにナショナルブランドのジーンズや新作の和紙デニムなどが好調に推移した。
〈8月のまとめ〉気温の上昇とともに夏物セールが活気付くも……
夏物セールで活気づいたが、「時すでに遅し」といった印象で終わった夏物商戦。その中でも店頭販売力に自信のあるユニクロは、8月でもバンバン新作の半袖Tシャツを登場させた。販売量は絞りつつ9月いっぱいまでの暑さを見込んだ計画なのだろうが、8月23日のセーラームーンコラボも、半袖Tシャツで登場。秋一色の売場の中で新作Tシャツの存在は、異彩を放ちつつ客単価を下げた要因にもなったのだろう。
実に16カ月ぶりに既存店売上高を持ち直したしまむらだが、集客プロモーション自体がヤングに傾斜し過ぎていることから、全体の客数の落ち込みが止まらない。次月以降の売上げに注意が必要だ。
アダストリアのオリジナルサイト休止は気になる。当初、7月30~31日の2日間のメンテナスが1日延びてサイトは立ち上がったものの、不具合が解消できずにサイトクローズ。8月15日におわびを発表し、再開を9月中(日にちは未定)としたが、自社ECの売上高に占める割合はまだ9.7%だが、ネット会員数は前期170万人増の約870万人と順調に伸ばしてきていただけに、これからの経過と影響に注視が必要だ。
(9月商戦のポイント)消費増税導入をにらんだ商品展開を
敬老の日絡みの3連休(14~16日)と秋分の日の3連休がある。早いところでは最初の3連休から秋物SALEが始まるが、今年は秋物商品の展開を例年以上に絞り込む企業が多いのではないか。
それは10月1日に施行される消費増税が影響している。9月30日まで店頭に在庫された商品は日をまたげば2%増の税率となってしまう。過去に値上げ、割高感による失速を経験した企業であれば、持ち越し商品が招く値上げ感はできるだけ避けておきたいところだろう。
今回は軽減税率の適用やポイント還元もあって、今までのように駆け込み需要は少ないという意見もある。アパレル全体で考えれば、増税前の消費者心理を突くなら肌着など購入頻度の高い商品やビジネスウエアなど高額品が狙い目。前回の5%から8%への引き上げ率と比べ影響は少ないと見る向きもあるようだが、10%の税率は税込み価格を計算しやすいだけに税負担を感じやすい面もある。
いずれにせよ、まとめ買いやセット販売など増税前に買いそろえておくとよさそうな商品を目玉に打ち出していくのが、常道といえる。
9月は台風シーズンでもある。過去の上陸数を見てもだいたい1、2個は上陸している。9月商戦のピークになると予想される2度の3連休にあたらないとことを願いたい。直近の3カ月予報によれば9月は平年に比べ気温は高く、降水量も平年並みか多めとの予想が出ている。軽く羽織れる軽アウターやベスト、雨対策商品の品揃えも欠かせない。
*印の企業=20日締め、*1=衣服・雑貨部門の数字、*2=小売既存+ネット通販既存の合算数字、*3=既存店+Eコマースの合算数字/文中の売れ筋動向はIR情報および筆者視察によるものです。
東証1部上場で衣料品販売チェーンの「しまむら」は、6月20日をもってファッション通販サイトの「ZOZOTOWN」から撤退したと発表
今後は、注文した商品を希望の店舗で受け取ることができる取り寄せアプリの「しまコレ」に注力する方針
2018年7月にZOZOTOWNに出店したものの、販売手数料が嵩んだことに加え、当初の目的だったネット通販のノウハウについても知ることができたと判断し、1年経たずに退店の決定
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