県都の那覇市に接した豊見城市の埋め立て地にあるあしびなー。開放的なオープンモールで、一部は2階建てになっている。
 那覇空港から車で北へ15分というサンエー浦添西海岸パルコシティだが、逆に南へ15分の豊見城市(とみぐすくし)にあるのが沖縄アウトレットモール あしびなー。
 基本商圏は豊見城市を中心に北は浦添市と那覇市、南は糸満市。主力ターゲットは30代~40代のファミリー層で、来場客数は地元客が65%、国内観光客が10%、海外観光客(インバウンド)が25%。大和ハウス工業グループの大和情報サービスが運営する日本最南端のアウトレットモールだ。
沖縄らしいパネルが掲示され、南国リゾートの気分が味わえる。

インバウンド比率が44%に

 2002年の開業当初は国内観光客を狙っていたが、翌年から地元客重視へと戦略を転換。折からのインバウンド急増に伴って売上げを拡大した。
11年に増築したエリア。カジュアルブランドがそろっている。
 イオンモール沖縄ライカムが開業した15年度は地元客の来場に影響はあったが、インバウンドでカバー。施設売上高174億円(前期比24%増)と大きく売上げを伸ばした。
 16年度は中国の税制改正で「爆買い」がなくなり苦戦したものの、17年7月に「プーマ」棟を新設する小型増床などの施策を打ち、17年度は175億円(9%増)と復調。18年度は182億円(4%増)、来館客数350万人と順調な業績を上げている。

「プーマ」は17年に別棟を建て「プーマアウトレット あしびなー」として展開している。

 沖縄県の18年度の入域観光客数は999万9000人(前年度比4.4%増)と6年連続で過去最高を更新。うち外国人客は300万800人(11.5 %増)と初めて300万人台に達した。
 あしびなーでも海外の団体客は減少したが、タクシーやレンタカーで来場する中国や台湾の個人客の目的買いが増加。免税売上げは全体の44%に当たる約80億円(5%増)に膨らんだ。
 国別構成比は①中国38%、②台湾37%、③香港5%、④タイ3%、⑤シンガポール1%。中台で免税売上げの75%を占める。
エントランスから臨む。タクシーで乗り付ける中国人、レンタカーを運転してくる台湾の個人客が目立ってきた。
ネックレスやブレスレット、ピアスなどジュエリーを展開する「アガット」。
 ブランド別には「アディダス」を筆頭にスポーツ系が好調に推移。「ビラボン」「プーマ」「ザ・ノース・フェイス」「チャンピオン」もいい。
スポーツブランドが好調に推移している。特に「アディダス/リーボック ファクトリー アウトレット」の伸びは高い。
 強みとするラグジュアリーブランドも全部ではないが「グッチ」「マークジェイコブス」「ケイト・スペード ニューヨーク」などが伸びている。
 あしびなーではこの間、テナントの入れ替えを継続的に実施してきた。
 ラグジュアリーブランドでは昨年4月に「ジミー チュウ」と「ケイト・スペード ニューヨーク」を新規導入。地元客に向けて買いやすい価格帯も強化。昨年3月に「スケッチャーズ」、同4月に「サマンサタバサ ネクストページ」を導入。今年4月には「ラコステ」、ドイツの靴ブランドの「ビルケンシュトック」、米国のバックパックの「グレゴリー」、飲食の「カフェ・ド・クリエ プラス」を導入した。
2階のドラッグストア「サツドラ」は16年に、「カフェ・ド・クリエ プラス」は今春導入した。
 今年度の売上げ目標は185億円(2%増)と堅めに見積もる。「10連休となった大型連休を境に地元客の来場が減っている。さらにパルコシティの開業は商圏がかぶるだけに地元客が流れてしまう恐れがある」と國枝江里子支配人は不安を隠さない。
 このため会員数が30万人(うち地元客は20万人)に増えた会員カードを武器に、情報の発信や販売促進策を打っていく。
建設中の「沖縄豊崎タウンプロジェクト」。あしびなーから若干離れており、循環バスの運行も検討している。

國枝江里子支配人。

 来年4月には大和ハウス工業が徒歩7、8分の人工ビーチ前に店舗面積約4万3000㎡で水族館など約170店のテナントを集める大型複合商業施設「沖縄豊崎タウンプロジェクト」(仮)を開業する計画だ。運営はあしびなーを運営する大和情報サービスが任されるため、共同販促や相互送客など相乗効果を高める方法を探る。
 インバウンド対応としては決済サービスを追加する。昨年2月にアリペイとウィチャットペイを全店利用可能にしたが、まもなくペイペイも稼働させる。
沖縄アウトレットモール あしびなー 所在地/沖縄県豊見城市豊崎1-188 敷地面積/6万3197㎡ 総賃貸面積/2万1002㎡ 階層/平屋建て(一部2階建て) 店舗数/109店 駐車台数/1000台 営業時間/10時~20時 施設売上高/182億円(2019年3月期) 開店日/2002年12月14日 デベロッパー/大和情報サービス


※本記事は『販売革新』2019年8月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。
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