60歳以上の2割ないし3割は「貯蓄がない世帯」である一方で、長寿化はますます進んでいます。老後破産を防ぐためにはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか?

貯金のない高齢者は2人以上世帯で60歳代が22.0%

近年、お金のない高齢者が増えているようです。

金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2018年の「金融資産非保有」世帯は、60歳代の単身世帯で26.7%となっています。また、2人以上世帯では60歳代が22.0%、70歳以上は28.6%。60代以降といえば、定年退職などを経て収入が徐々に減っていくのが一般的です。

ところがその世代の2割ないし3割は、「貯蓄がない」という状況です。

一方、2007年の同じ調査によると、「貯蓄のない人」の割合が、60歳代の単身世帯で22.8%、2人以上世帯では60歳代が16.5%、70歳以上は19.4%でした。2007年と2018年を比べてみると、いかに老後にお金のない人が増えているかということが分かりますよね。

長寿化が進んでいる今、長い老後を安心して暮らしていくためには、老後貧乏を避けるための対策を講じておく必要があります。そこで今回は、現役時代から準備できる、老後の赤字を防止するための3つのポイントをご紹介します。

その1:借金は定年退職までの完済を目標に!

住宅ローンや教育ローン、自動車ローンなどなど、暮らしの中には生活に密着した借金がたくさんあります。その借金、現役時代は収入があるので何とか返済できていたとしても、定年退職して年金生活になった途端、病気などを理由に返済ができなくなってしまうケースが多発しているようです。

そんな状況に陥らないためにも、借金はできる限り、定年退職までに完済しておくことが望ましいでしょう。

そうは分かっていたとしても、子どもがいる家庭などでは、生活費や教育費などの負担で、借金の繰り上げ返済をする余裕はないかもしれません。

しかし冷静に考えてみてください。

老後は、ただでさえ年金など限られた収入の中で暮らしていかなければなりません。そのような生活の中で、借金を返済していくことが、どれだけ大変なことか想像に難くはないはずです。

そうならないために、既に借入れがある人は、現役のうちに完済の目途を立てておきましょう。もし完済の目途が立たないようなら、家計全体の見直しを実施するなどで、完済までのプランを明確にしておきましょう。

その2:保険料の支払いは65歳までに終えておく

生命保険や医療保険、がん保険などの保険料支払い、これらが老後の家計を圧迫しているケースは多々見受けられます。貯蓄性や資産性のある保険ならまだしも、掛捨て型保険の保険料支払いで家計が赤字になるというのも、納得がいかない人もいるのではないでしょうか。

その問題を防ぐためにおすすめなのが、保険料の支払いを60歳や65歳までに払い終えられるように設定しておくことです。

生命保険など保険料の払い方には、「一括払」「半年払」「月払」などがあり、さらに保障が一生涯続く保険の場合は、保険料の支払いも一生涯続く「終身払込タイプ」と、保険料の支払いは○○歳までに満了するというような「有期払込タイプ」の2種類があります。

これから入る保険については、「有期払込タイプ」を選んでおくと、老後の保険料負担が少なくなり安心です。

「終身払込タイプ」の保険に加入している人の中には、老後の年金生活になってから保険料を支払えなくなり、保険を解約してしまう人も時々いますが、そうすると、病気になった場合に頼れるお金が限られてしまいます。

また、高齢者の場合は、解約してから新たに保険に入ろうと思っても、保険料が割高になったり、健康状態によっては加入できなかったりする場合もあります。

もちろん、その家庭の経済事情にもよるため一概にはいえませんが、保険を選ぶ際は、「有期払込タイプ」にしておきましょう。

その3:健康は最大の老後貧乏防止策

誰でも歳は取っていくものです。また、加齢とともに病気になるリスクも高まります。

高齢者が病気になってしまうと、医療費の支出がかさんでしまうのはもちろんのこと、仕事をしている人は辞めざるを得なくなることもあり、結果、年金以外の収入が途絶えてしまう可能性も否定できません。さらに、介護が必要になったとしたら、介護費用も考えなければなりません。

こう考えると、老後の貧乏を防止するために大切なのは「健康でいること」に尽きると思います。健康でいられるかどうかは、生活習慣が大きく影響するといわれています。

つまり、長年の積み重ねが大事なのです。老後も元気に過ごせるよう、現役のうちから適度に運動することや、食生活に気を配ることなどを、積極的に心がけたいものです。
(文:小澤 美奈子(マネーガイド))