総務省が5年ごとに発表している全国消費実態調査(最新2014年)では、相対的貧困率を公表しており、それによると、相対的貧困率は50歳から64歳までの階級が9.5%であるのに対し、65歳以上では13.6%となっています。

生活保護者世帯の約半分は高齢者世帯

現在、一部の高齢者を取り巻く環境は、厳しい状況となっているようです。

総務省が5年ごとに発表している全国消費実態調査(最新2014年)では、相対的貧困率(※)を公表しています。それによると、相対的貧困率は50歳から64歳までの階級が9.5%であるのに対し、65歳以上では13.6%となっています。65歳以上の相対的貧困率は、50歳から64歳の階級に比べると「高い」ということがわかります。

また、厚生労働省が発表している生活保護を受給している世帯数を確認すると、2019年5月時点で全体では約162.7万世帯存在しています。その内の高齢者世帯が占める割合は55.0%(約89.5万世帯)にも及んでいます。つまり生活保護者世帯の約半分は高齢者世帯であるという状況なのです。

▼年齢階級別にみた被保護人員の年次推移さらに同調査では、年齢別生活保護者の調査を行っています。「年次推移」によると、他の年齢層に比べて、65歳以上高齢者の生活保護者数の伸びが圧倒的に大きくなっていることが確認できます。


貧困高齢者が増えている理由には、高齢者人口の増加が要因となっていることが1つ考えられます。さらに、今後も高齢者人口は増えていくと推測されており、貧困高齢者のさらなる増加が懸念されています。

このように厳しい現状の中、今すでに生活が困窮しつつある方、もしくは将来のお金に対して不安を抱えている方はどうしたらよいのでしょうか。

※相対的貧困率……貧困線(等価可処分所得の中央値の半分の額)に満たない世帯人員の割合

家計管理が大切な理由

老後に貧困状態に陥らないためには、現役時代からの備えが何より大切です。「貯金を増やすこと」「公的年金を満額もらえるために社会保険料をしっかり納めること」「確定拠出年金などの私的年金に加入すること」などの方法で備えていきましょう。

しかし、お金の管理が極端に苦手な方も少なからず存在します。

そのような方は、まず家計管理ができるようになることから目指しましょう。家計管理の基本は、家計の収支を把握することです。

そこではじめたいのが「家計簿をつけること」。筆者は日頃、セミナーやご相談などでは、「家計簿をつけるのは3カ月だけでOKです」とお伝えています。

なぜなら、お金の管理や数字が苦手な方は、家計簿をつけ続けることは苦痛以外の何ものでもなく、無理をすると家計管理から遠ざかるきっかけにもなってしまうからです。それを防ぐために、まずは3カ月だけつけてみて、お金の流れを把握することからはじめることを伝えています。

しかし、お金の管理が極端に苦手な方や、赤字家計が続いている方、すでに生活が困窮している方などは、家計簿を3カ月つけただけでは、お金を管理する習慣が身に付きません。長期的につけ続けることが重要です。

もっとも、家計簿は、ただつけているだけでは意味がありません。家計簿から毎月の無駄を見出し、改善し、さらに収入と支出のバランスも考えます。そして家計管理により余剰金が捻出できたら、それを貯蓄したり借入金の返済に充てたりして、家計の改善を図ることを目指しましょう。

家計管理を継続させるための秘策

とはいえ、高齢者やもともと極端にお金の管理が苦手な方は、家計管理はちろんのこと、家計簿を続けること自体かなり根気のいる作業です。1人だと続かないこともあるかもしれません。

そんな時は、家計管理に伴走者のような存在がいると心強いものです。家計管理の伴走者といえば、ファイナンシャルプランナーが考えられます。

できれば有料で相談を受けているファイナンシャルプランナーとともに、長期的な家計の見直しを行うことをおすすめしたいところですが、有料での相談が難しい方のために、無料で利用できる公的な相談窓口をご紹介したいと思います。

家計再建を長期的に手助けしてくれる窓口

各自治体では、生活困窮者に対して、自立できるようになるための支援窓口を設けています。自立相談支援機関窓口といい、窓口を設置している場所は、都道府県ごとに異なっています。

例えば、東京都では社会福祉法人などが主体となって運営していますが、神奈川県横浜市では、区に設置されている福祉保健センターの生活支援課に窓口が設けられています。

窓口では専門の支援員が、生活困窮者のための家計の立て直し支援や就労支援などを実施しており、必要な方には、相談者自らが家計を管理できるように、継続的な家計支援を行うこともあります。

一時的な資金の借り入れができる生活福祉資金貸付制度

病気・失業・災害などで、突発的にお金が必要となった場合にまず検討したいのが、生活福祉資金貸付制度です。

この貸付制度は、低所得者・障害者・高齢者世帯を対象に、それぞれの世帯の状況と必要に合わせた資金の貸し付けを行っている公的な制度です。

資金の種類は、総合支援資金・福祉資金・教育支援資金・不動産担保型生活資金の4つがあり、無利子もしくは低金利での借り入れが利用できます。

利用に関しては一定の条件を満たす必要がありますが、一時的な資金が必要となった場合は、すぐに銀行のカードローンやキャッシングなどを使うのではなく、まずは公的な貸付制度の利用を検討しましょう。

さいごに

冒頭でお伝えした通り、今後は高齢者の増加により、ますます困窮者も増えていくと予想できます。生活困窮から脱出する第一歩は、日々の家計管理をしっかり行えるようになることです。

でも、もし自分でできないようでしたら、1人で悩まず誰かに相談しましょう。貧困高齢者にならないためのあなたに合った対策は、きっと見つかるはずです。
(文:小澤 美奈子(マネーガイド))